section10 VS南雲高校③

「よぉーし!初ヒットだぁー!」

「ポテンだけどよくやったー!」

「さすが四番だ!」


魚川ベンチは初ヒットで大いに盛り上がっていた


(いや〜打ったけどポテンヒットなんだよなー…ん?)


遠くにカメラを持った女子高生がいる。

あれは


(げっ…里綾だ。まさかこの試合もニュースにしようとして…まずい…ちゃんとヒット打たないと明日大見出しでポテンヒットをでかでかと書かれるかも…)


「さぁー!続けー!」


切り替わって魚川の五番原口。


「よーし…行け!」


「走ったー!」


目河のスタートはかなり良かった。

ズザァ

「セーフ!」


(ギリギリー…)


さすがは南雲のキャッチャー。1年生と言えども肩が強い。目河も特別速くもないが足はそこそこ。スタートによっては全然アウトだった


…さらに


「ファースト!」


原口のバントでワンアウトランナー3塁。一点を取るチャンス


「へっ…どっかの誰かがよ奇襲は2回するから奇襲だって言ってたからやってみたが、上手くいったな。今後も使えそうだ」

才田監督は不敵な笑みを浮かべながら言う


え…実験的なやつだったのか…

ベンチ一同は皆同じことを考えた


「さらに、ワンアウト3塁から得点する方法はざっと50通り以上…ほれ」


6番は久甫。左打席へ入る


「スクイズ!」


しかしこれは見せかけ。相手を揺さぶることを目的としたものだった


(チッ…こいつら…さっきから…)


南雲高校のキャッチャー飯代正樹(いいしろまさき)は魚川の揺さぶりに若干頭にきていた…しかしリードは別問題。相手打者に的を絞られないようしっかり配球を組み立てる


(…飯代、落ち着けよ、まだなんかあるかもしれない。とりあえず様子見だ)


その点那由多はあくまでも冷静に状況を把握していた


ズバァン


アウトコースに外れるストレートやはり1年生とは思えないピッチャーだ


(さて…引っ張りを警戒されてる感じだな…)


試合前は一番緊張していたが5回ともなると緊張もとけいつもの冷静さを取り戻していた


1打席目はライト正面に強いライナー、ストレートを完璧に捉えていた


…ストレート!


カキィン

打球は一塁側にファウル


(若干ボール球だった…)


しかしストライクゾーンに入っていればライト線に抜けていたかもしれない


南雲の守備はさらに引っ張り警戒になった


(やべ…俺流し打ち苦手なんだよ…まあ…しょうがない…よし…)


(…よっ!)


カキィン


(…いけっ!)

外に逃げるカーブを強引に引っ張った


打球はライト線ギリギリフェア!

引っ張り警戒のシフトを引っ張った打球で強引に破った


「よーし!回れー!」


久甫は3塁へ走る


しかし南雲の外野陣は1年生といえど全員肩が

強い。矢のように鋭い送球が中継される


「……セーフ!」


しかし結果的には3塁打となった


「よーし!よくやったー!」


魚川はこの試合初の得点で

3-1と2点差に追い詰めなおもワンアウト3塁


打席には7番橘


「いけー!フルスイングだー!」


魚川は、勢いづいている


ブンッ!

橘のスイングは空振りはしたが当たれば外野を超えるようなスイングだった


(ふん…そんな大振りじゃ那由多のボールには当たんねぇよ)


(…って思ったろう。へへ崩れてもらうぜ那由多…いや南雲高校)

監督が不気味な笑みを浮かべる

この大振りは監督の指示だった


「…!スクイズ?!」


「くっ…!」

しっかり決めてきた。

「ホームは無理だ!」

那由多はボールを一塁に送るが


「…?!」


送球が逸れてしまった


これによって橘は2塁へ


ワンアウト2塁スコアは3-2と1点差


「…ていうか平川高校の時もこのぐらい指示出してくれれば負けかけなかったんじゃ?」


「…天理、ありゃ俺が何もしなくても勝てるよ。須田が来た時点でな…しかしスクイズ無警戒とは相手もやっぱ一年だな」


監督もそれほど須田を信用しているのだろう、やはり須田はすごい選手だということに変わりはない



(くっ…やられた…このチーム………あっ?!)


那由多の投げたストレートはど真ん中へ

これを8番の高城は逃さずセンター前へワンアウト1、3塁とチャンスを広げ9番はピッチャーの佐々木


「さーて佐々木仕事しろよー」


監督のことだ、また何かあるかもしれない


カキィン!

ストレートを綺麗に打ち返した次の瞬間


バシィ


なんとライナーをピッチャーの那由多がダイビングキャッチで取るという衝撃のプレイを見せた

さすがに抜けると思ったランナー2人は飛び出してしまい急いで戻る…しかし


「アウトー!」


ゲッツーでスリーアウトとしまった


to be continued

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