section8 VS南雲高校

ゴールデンウィーク最終日の今日は練習試合。相手は南雲高校そして今日は1年生主体の試合となる



「いいか、今年の南雲の1年は強ぇぞ」


監督はベンチでタバコを吸いながら1年生達に言う…いいんだろうか高校野球の監督がベンチでタバコって…


「ほれオーダーでも確認しろ」



1二 中条大志

2遊 天理大聖

3中 仲林昴

4一 目河点

5左 原口雄大

6右 久甫陽平

7三 橘勝己

8捕 高城潤

9投 藤村晋次郎


「よぉし!先発だ!」


藤村はとても気合いが入っている。緊張もなく大丈夫そうだ


「……フー」


意外と1番緊張しているのは久甫。これは中学の時から、いや小学校のときから変わらない


「大丈夫だ。どうせ散々な試合になるんだからよ」


…いや監督。ツッコミそうだったがさすがに監督なのでツッコムのはやめておいた


南雲で警戒すべき相手は四番の浅霧勇治(あさぎり ゆうじ)五番の沖田壮太(おきた そうた)

そしてピッチャーの那由多泰示(なゆた たいし)の3人。そのほかも中学でそこそこ名のある選手が多く、なかには聞いたことのある人もいると白川先輩から聞いている


「俺、中学のとき那由多と試合した事あるんだけどさ」


仲林がそう言うと皆仲林の話を聞き出した。


「とにかく縦にキレのあるスライダーを投げてくるんだ、それに変化も大きい。だからスライダーは絶対振らないようにしたい。あとカーブで緩急も使ってくるから厄介だ」


仲林からの情報を頼りにバッターボックスに立つ時は工夫が必要そうだ


「しかし精鋭が揃ったな南雲は…よしお前ら試合開始だ行ってこい。あとこの試合のキャプテンは仲林に任せるぞ」


「はい!」


どうやらこのゲームは仲林がキャプテンのようだ…まぁ仲林なら大丈夫だろう


……1回表


魚川は今日は後攻だ


「よぉし初マウンド第一球!」

ズバァァン

藤村の球はアウトコースギリギリに決まった


「132km/h…なかなかいいじゃないか」

監督はいつの間にか持っていたスピードガンで球速を測っていた

続く2球目、3球目もストレートで相手打者をねじ伏せ三球三振でとったあと2番は初球セカンドゴロで打ち取った


「角度があるな、阿部そこも考えて打席に行けよ」

南雲高校の四番浅霧が3番飯代(いいしろ)に助言をした。藤村のストレートは190cmの長身から繰り出されるため通常の投手よりも角度のある球となり球威のある球を投げることができる。これに至っては藤村の才能であると言える。


1球目…インローに力のあるストレートが決まる

そして2球目はアウトコースにチェンジアップ、これをなんとか当てるがファウル


「よぉし!いくぜ」

藤村の気合いの入った球が相手打者の内角をエグって入ってきた。見逃し三振でスリーアウトとなる。


「…くそっなんだ今のは」

「どんな球だ?」

「多分カットボールだ。すげぇ鋭く曲がってきた…まじでストレートかと思ったよ」


カットボールとはストレートとほぼ変わらない球速でボール1つ分ほどの変化だが鋭く曲がるのが特徴。今回は見逃し三振をとったが主には

打者の芯を外す球となる。


「いいじゃないか藤村」


「よーし!このまま9回まで行くぞ!」


「あー、藤村今回は練習試合だから他にも投げさせるからな。残念だがそれは無理だ」


「ガーン」


まぁ監督の言うことも当然っちゃあ当然だ。今日のところは勝ち負けより俺たち1年生がどれくらいできるかを見る試合なんだろう


そして魚川の攻撃では1番の中条が打席へ立つ


初球アウトローに球威のあるストレートが投げ込まれた


「…かなり速くないか?」


ネクストの大聖がピッチャーの球をよく観察する


「ほおやるな、134km/h。いいピッチャーじゃねぇか。だがこの前の杉並の方が速さはあるぞ」


たしかに監督の言う通り杉並の方が球速がある…しかし


バッターアウト!空振り三振で中条が抑えられた


「…なんだ最後のは」

「多分噂の縦スラだ」

「消えたみたいに変化したよ」

「さすがだな…」


集中力を高めながら大聖がバッターボックスへ向かう

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