section7 休日

…5月ゴールデンウィーク。1年に1度ある大型連休だ


「連休だー!」

藤村が両手を上げて歓喜している

「藤村、連休に喜ぶのはいいけど課題もやれよ」

大聖がそう言った瞬間今度は両肩を落とし明らかに落胆した



「…課題燃やしたい…」

久甫がダルそうに課題を見つめながら言った


「燃やすなよ、絶対」


まぁ燃やしてしまいたい気持ちは大いにわかるけど


「なあ目河そういや新聞部はどうだったんだ?」


「あぁメガネの人はいい人だった。多分2年生だ」

「その人が壁に貼りまくってたのか?」

「いや違う。もう1人のなんかイラつく1年生だ」

その日のことを思い出した目河の表情が険しくなった

…どんなやつだったんだそいつ

「どうもー☆」

「でやがった!」

なんか変な女子生徒が突如現れた


「でやがったってなんですか。私は幽霊じゃないですよ」


「目河、もしかして」

「そうだ、こいつだ」

「こいつじゃあありません。梁島里綾(やなしま りあ)です」


…変なやつ。


「で、何の用だ?」

「ああそうそう、これからゴールデンウィークを迎えるにあたっての感想を」

「そんなもん記事にしてどうすんだ」


目河が半分呆れながら言う


「すでにサッカー部の榎本くんやテニス部の矢島くんにも聞きました」


すでに聞いてるのか…で今度は目河のところにきたと

「で、どうだったんだ?」

「目河君と同じ反応をされました!」


里綾はすごく自信満々に堂々と言った


「そこ堂々と言うところではないぞ…」


目河はもう完全に呆れている。まぁたしかに変なやつではある


「おーい!梁島!この前の数学の課題はどうしたー!」

「まずい!それでは!」

向こうから先生がやってきたと同時に里綾は逃走した



「あんなやつだ」

「なんか大変な奴と知り合いになったな」

「行かなきゃよかったよ…新聞部なんて」


大聖は少し目河に同情した


「面白いやつじゃないか!」

藤村…たしかにお前と世界観が同じそうだ…


「そうだ、ゴールデンウィークに何かしないか?」


ゴールデンウィークにウッキウキの藤村の提案だった


「そうだな、あ、でもたしか3日目と最終日に試合が入ってるはずだ」


「んーじゃあ4日目の火曜とかどうだ?」


「うんいいんじゃないか?」


…ゴールデンウィーク4日目


ちなみに3日目の練習試合では坂山高校に8-4で勝利。5回から2年の須田が投げて無安打無失点、打ってはスリーランと5回からは須田の独り舞台となっていた


「しかし昨日の須田さんは凄かったよな!」


「あぁ投打ともに別格だよあの人。ちなみに最終日の南雲(なぐも)高校戦お互い1年生中心でやるらしいぞ。ちなみにお前が先発らしい」


「まじかよ!」


藤村は驚いた様子だが目は輝いていた


「南雲高校っていえば8年ぐらい前に甲子園行ったことがあるよな」


「…ああたしかあの年はプロ行ったピッチャーがいたからな…」


南雲高校は創立から120年たっているが校舎は改修工事が施されていてかなり綺麗で古いボロボロな学校っていう感じではない。


そして今日来たのはスーパー銭湯。数年前からオープンしたまだ新しめの銭湯だ。


「たしかこの銭湯の薬湯ってあの天塚製薬(あまつかせいやく)の物が使われてるらしいぜ」


天塚製薬とは数年前から力をつけ一気に大企業となった製薬会社である。さらに近年天塚薬科大学やその付属高校など企業で学校まで建ててしまうほどの財力を手に入れている


「すごいよなあの会社、今じゃもう製薬会社のトップだろ?…俺もそんなとこに就職したいわ」


「目河の頭でもキツイだろ…」


実際付属学校の偏差値は73と高く、そこから企業に就職することが多いためそこらの人間では入社するための面接すら許されないことが多い



「ん?」


大聖は向こうの方に見たことある人物を見つけた


「…どうした?」


「いや、あそこにいるのって雪菜じゃないか?」


「…雪菜?」


久甫には聞いた事のない名前だった


「ああほら入学式の時に電車で見ただろ」

「…あぁ懐かしいな…冤罪かけられてたな…」

「まぁそうなんだけど」

「…二重人格なんだとか言ってたっけ」

「そうなんだよ。ユキナとセツナがいてさ」

「……なに言ってるかわからん…」


それもそうだ。いきなりそんなこと言われて理解するやつはいないだろう


「なぁ!早く行こうぜ!」


藤村は待ちきれない様子だった


「おう行くか」


大聖は少し雪菜にむけて手を振ってみた…どうやら気づいたようだ…ただ目を逸らしてなにも返してくれなかったからセツナのほうなんだろう


……………2時間後


「…遅かったな…」


久甫と目河はすでに食券で食事を開始していた


「いやぁ…大聖と…サウナ…長時間対決…してたらさ…のぼせたかも…」


「あぁ…頭がクラクラ…するよ…」


フラフラとしながらこちらへむかってきた2人を見て久甫はアホだなと嘲笑うような表情で見つめていた


「まさか…1時間も…入ることに…なる…とは…」


「おさまったら飯でも食べたらどうだ?」

目河もまた久甫と同じことを思いながら言った

「あぁ…そうするよ…」





………銭湯で英気を養った4人はゴールデンウィーク最終日の南雲高校戦に挑む

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