section6 新聞部の女

…試合後


「君だよね。ホームラン打った1年生」

相手チームの1年生ピッチャー杉並照史が目河に話しかけてきた


「…ん?はい、まぁ」

「中学どこ?」

「えーと天栄です」

「…クラブチームだったとか?」

「いや」

「…そうなんだ…俺、シニアとかでもあんまり打たれたこと無かったからさ…君はすごいよいいバッターだ」

「そうなんすね、たしか中学時代全国準優勝したとか」

「まぁ…ね…次は打たれないよ。二度とね」

杉並はものすごい熱の篭った目で目河を見てバスへ向かっていった


………

「なぁ天理」

「あぁ、めちゃくちゃライバル視されてるなお前」

「大丈夫かな…おれ」


……後日

「……ん?」

「どうした?天理」

「見ろよ…これ…」

大聖は青ざめた顔で壁を指さした

「新聞?」


『1年生 目河 スーパー1年生杉並から本塁打を打つ!

チームは15-3の圧勝!』


と、でかでかと書かれた新聞が壁1面に貼られていた。いやそれどころか廊下にもたくさん貼られている


「な、なんじゃこりゃ」

だんだん玄関が騒がしくなり始めた

「な、なんか人が集まってきたぞ」

大聖と目河の周りにたくさんの人だかりができていく


「もしかして君かい?」


「すごーい」


男女とも目河に賞賛の嵐を送る


「おお目河、大人気じゃないか」

「まてまてなんでこうなった?」


「……新聞部じゃないか?」

人ゴミをかき分けて久甫がなんとか大聖たちのところへたどり着いた

「新聞部?そんなのあったのか?」

「…あぁ入学式の日に配られたパンフレットに書いてあった」

「そ、そうなのか」


全然知らなかった、てか読んでなかった

「おお!なんだこの騒ぎは!」

人混みの中でもその身長のおかげで一瞬で居場所がわかるやつが来た。やはり頭1つ飛び抜けている身長だ


「おぉ藤村、実はな…」

「そうなのか!すごいじゃないか!…で新聞部なんてあったのか?この学校」

「お前も知らないのか…ん?どうした?目河」

久甫は藤村をスルーしてあまりの人だかりに頭を悩ませている目河に話をした

「いやな…」

(このままじゃ目立ちすぎだ…てか練習試合なのにこの注目度…そうだ今日は休みだし放課後新聞部に行ってみよう)


……ここからは目河メインの視点となります



「ここか」

目河は新聞部とかかれた表札のある部屋をノックした


「すみませーん」

「はい」

資料やら紙やらがたくさん積んだり散らばったりしているこの部屋が新聞部の部室。裏校舎の3階に位置している


言っていいかわからないけど三つ編みに眼鏡をかけた典型的な新聞部の人が1人いた

「今朝の新聞の事なんですけど」

「あぁはい…あ、もしかして目河さんですか?」

「そうですけど」

「何か御用ですか?」

「今朝みたいな記事ってよく貼られるんですか?」

「あぁウチの新聞は基本玄関の机に置いとくだけなんですけど、今年来た1年生の子が壁に貼って注目を集めましょう!…って…迷惑でしたか?」

「いや、そんなことはないんすけど…やっぱり注目されすぎて…」

なんだその1年生は…とんでもない奴だな…


「すみません…注意しときます」


とりあえず言いたいことは言ったので目河は立ち去ることにした



「なんか悪い気もするけど、朝からあれじゃあな…」


そんなことを廊下でぶつぶつ言っていると、突然角から何か飛び出してきた

「うおっ?!」

「わっ?!」

2人がぶつかった瞬間紙が散らばってしまった

「ああごめん」

「いえいえこちらこそー」

肩ぐらいまである長さの青髪の女子生徒。少し大人っぽい見た目だが制服のリボンが青なため1年生だろう


※3年生 緑 2年生 赤 1年生 青 となる


「あれれー?もしかして目河くんじゃないですかー?」

「ん?知ってるのか?」

「ええもちろんこの里綾ちゃんはなんでも知っています」


…大人っぽいのは見た目だけかもしれない。目河が思った最初のイメージはすぐ崩れて消えた


「…もしかして君か?今朝の記事を書いたのは」

「ざんねーん」

笑顔で答えてきた。なんかイラつく

「なんだ違うのか」

「嘘です」

「へ?」

なんだこいつやっぱりイラつく。今日はもうさっさと帰ろう…いやまて

「あのさ、あの新聞なにも壁1面に貼らなくてもいいんじゃないの?」

「なぜです?」


なんでそんなに驚いた表情をしてるんだ…


「いや、朝からあんなに騒がれると面倒なんだ。」


…注目されるのはいいんだが試合のたびにあれだと困るんだよな…


「えーでも私学校中にニュースを届けないといけませんし」

新聞部の女子生徒はムスッとした顔で言ってきた


「わかった。ならせめて1枚にしてくれ。あんな何十枚も貼られるのはちょっと」

しかし目河も引き下がれない

「はーい」

なんか一瞬悪いことを考えたような顔をした気がするが触れないべきだろうか?

「じゃあ頼んだぞ」

「それでは!」

女子生徒は敬礼しながら去っていった

…大丈夫なんだろうか。たしか名前は里綾(りあ)…だったな








…次からはまた天理メインの視点へ

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