13話

 しばらくお互いに無言になって、気まずくなってきたので一旦この事は忘れる事にして、今は一緒に赤い果実を食べている。


 お腹は満たされないけど、味は本当に美味しい。見た目は艶があり、一つ口の中に放り込み、噛んだ瞬間はちきれんばかりの果肉が飛び出してくる。甘さと酸っぱさの調和が取れた見事な味をしていて、病みつきになりそう。


 それなりの数を食べたところで自重して一応やめておく。


 今からは力加減ができるようになるための特訓だ。一応、力を封印する魔法もあるにはあるけど、いざと言うときに、そのせいで対応できなくて死んでしまった、という事がないようにするために使わないようにすると決めた。


「んんん〜〜……」


 そーっと石の塊に刃物を通し、削っていく。


「……」


 チラリと真夜の方を見てみると、私の唸り声も気にならないほど集中しているようだ。現に、私がじっと見てても気づいてないようだ。


 ……なんかイタズラしたくなってきた。


 いや、流石に刃物を持ってる時は危ないから、やめておこう。


 自分の作業に戻るけど、全然集中できなくなってしまい、どこを削るか迷ってしまう。


「んんんーーっ!!」


 そんなことをしてたら、真夜が刃物を机の上に置き、伸びをしながら木の椅子に体重をかけて、休憩を始めていた。


 今だ!!


「ふうぅーー』


「ひゃあっ!?」


 こっそり後ろから近づいて耳に息を吹きかけたら、真夜が椅子から飛び上がった。


「お姉ちゃんっ!!」


「ごめんごめん」






 あれから、私も真夜と休憩した後、いい時間だったので昼ごはんを食べた。昼ごはんといってもまた肉だけだといつか飽きてしまいそうなので、焼いた肉に朝残った果実を潰してソースにしてかけて食べた。


 果物を肉にかけて食べたことはなかったけど、肉の甘味が引き立てられ、そして肉がもっと柔らかくなってて普通に美味しかった。


 作業に戻って、再び石を削り始め、体感的に4時くらいになった時に、私も真夜も作業が終わった。


「真夜、どんなのができた?」


「こんな感じ!」


 私が聞くと、真夜は手のひらに石を乗せてこちらに差し出すように見せてくる。そこには、ツノの生えたウサギの見た目をした石が乗っていた。


「すごいカッコいい!私はこんな感じ」


 私も同じように真夜に自分が削ってた石を見せる。


「お姉ちゃんのは可愛らしいね!」


「でしょ?」


 私たちは最初に会ったウサギの彫刻を作っていた。技神の力のおかげもあるだろうけど、なかなかいい出来栄えだと思う。

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