2 貝殻少女

 何人たりとも侵入できない海の底で声がする。モクメダマ貝とバイ貝の二人が静かに深海喫茶で話している。

 純白のテーブルに並んだ二つのコーヒーカップをゆるりと眺めている。

「いい雰囲気のカフェね」

 モクメダマはにこりと笑いながら店内を見渡す。

「でも、コーヒーがいまいちなんだよなー」

 大声でバイは言った。

「こ~ら、声が大きいよ」

 バイの大声はカフェの雑踏に巻き込まれて、調理場には聞こえなかった。

「モクメはさー、最近彼氏とうまく行ってんの?」

「別れたー」

 モクメダマは何の気なしにそう言った。

「えー、まじ!?真面目で浮気もしなさそうでいい人だったのに」

 バイは相変わらず大声で言った。

「束縛あってめんどくさかったの」

「じゃ、今フリーなんだ」

「ううん、付き合ってる人いるよ」

「はや!さすが肉食…」

 バイは掌で顔を覆った。

「バイは作んないの?」

「作んないし、できたことない」

「うそ!可愛いのに」

 モクメダマは立ち上がって言った。

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