5.〈 05 〉
今のアタシは夜も時間があくので「せっかくだからパワーショベルでもやりましょうぞ!」ということに決まった。アタシがそういったのだ。
当面の目標は、連載形式の〈なるわ作品〉をテキストファイルで全話まとめてダウンロードするプログラムね。
で、そのためには〈クエリ情報〉という技術を理解する必要がある。以前ビーナピターさんのブログ記事で少しお勉強させてもらったんだけど、HTTPS通信をする際に、URLのお尻に追加情報をつけることで、こちらが望む対象を指定できる仕組みがあるの。
例えば〈なるわ作品〉の小説ファイルをゲットしたい場合、ファイル番号とエンコーディングと改行方法を指定すればいい。
具体的にはだなあ、小説URLのお尻に〈?〉をつけて、その後に〈No=1〉と〈Encoding=UTF-8〉と〈NewLine=CRLF〉を〈&〉で連結してつけてやれば、「1番目のファイルを〈UTF-8〉形式、改行コード〈CRLF〉つきでダウンロードさせてください」という意味になるってこと。
で、
ここでのポイントは、繰り返し〈foreachループ〉を使うことと、変数の中に別の変数を埋め込むというテクニックだね。
$a = "https://novels.naruwa.com/dl/XYZ1234/"
foreach ( $b in (1..9) )
{
$c = "?No=$b&Encoding=UTF-8&NewLine=CRLF"
$d = "C:/Users/Masako/XYZ1234-$b.txt"
InvokeWebRequest $a$c OutFile:$d
}
今の場合、変数〈$b〉を1から9まで変化させるのだけど、それに連動して変数〈$c〉と〈$d〉に埋め込んだ〈$b〉も1から9までの値を取るのよ。
このプログラムを実行すれば、アタシのノートPCなら待つこと数秒で、作品ID〈XYZ1234〉の小説ファイル全9話分〈XYZ1234-1.txt〉~〈XYZ1234-9.txt〉を楽々ゲットできちゃう。
本来なら「名前をつけて保存」を手作業で9回繰り返さないといけないわけだから、その労力を省けるのが嬉しい。いうまでもなく、数100話あるような作品だったら、さらに効果絶大。
こんなプログラムを作れちゃうパワーショベル、ていうかアタシやるじゃん!
よっし、取りあえずブログに載せておこう。具体的な作品IDだと支障があるかもしれないし、〈***1234〉とでもしておけばいいか?
それと〈C:/Users/Masako〉も〈C:/Users/M〉とかに代えておかなきゃだ。WEB上に公開するのって、結構気を使う必要があるね。
でもここまでくると、さらなる野心が湧いてくるよ。
お気に入りの作品を登録しておいて、初回は全話ダウンロード、それで定期的に新しいお話が追加されているかチェックして自動ダウンロードするようなプログラムを作ってみたくなる。あと修正されているかどうか、新旧で比較したりとかね。
つまり、以前トンコから聞いた〈ウルトラ読み専アプリ〉だよ。AIを駆使してとかはさすがにムリにしても、それの基本機能だけを備えた限定版みたいなものをだね、アタシでも作れるんじゃないかってことよ。
まあゆっくりやりましょうぜ。どうせアタシ、少なくとも今月末まではニート生活が続くんだからね。こういう毎日も悪くないなあ。でへへ。
3月9日金曜。午前中に美容院に行って髪を少し切ってもらった。
午後、就活メイクと就活スーツと就活スマイルで面談に臨んだ。
塾長の桜木花枝さんは、見た目30代後半で結婚指輪をしている。とはいえ、主婦臭くもなくキャリアウーマン風味でもない、その中点を取ったような人。
履歴書を渡して見てもらいながら問答する。ちょっと気になった質問は「高校生の授業を受け持ったことはないのですね?」で、素直に「ありません」と答えるしかなかった。やろうと思えばやれますよ、アタシだってね。
結果は採否どちらにしましても、1週間以内に郵送してくれるとのこと。
そういうわけでアルバイトの面接みたいな軽い感じであっさり終わる。所要時間およそ15分。たぶん1時半から次の人なんだろうね。その証拠に建物を出てすぐ、いかにもな女とすれ違う。相手だって同じこと考えてるだろうね。
あと別にどうでもいいことだけど、お茶も交通費も出てきませんでした。経費削減ですかねえ、セチガライなー。
帰りに中原総合病院へ寄り、それからスーパーでお買い物。
今日のティーブレイクはアッサム。買ってきたエクレアと一緒に楽しもう。
写真を撮ってみようと思って、ハンドバッグからスマホを取り出す。面談前に切ってそのままにしてた。
電源を入れると、すぐメール1件を受信!
《大森さん、お久しぶりです。完結版『人気だす草なぎ君!』の心のこもったご感想をどうもありがとうございました。お読みさせて頂いて、とても元気になれました。実は僕は――》
「おおっ!! 猪野さんからだよ! そうか、WEBメールを出せるほど回復してるんだね。えっと、なん日が過ぎてるんだっけ?」
火曜のことだったから、丸3日経ったんだわ。
メール本文は結構長い文を書いてくれている。続きが気になるのだけど、はやる気持ちを抑えて、じっくり丁寧に読ませてもらいましょう。
《実は僕はNY市で爆弾テロに巻き込まれて両足とも骨折してしまったため、今は入院生活を送っているのです。命も両足も失わずにすみましたし、ありがたいことに両手は無傷でした。その点は大いに感謝しております。ですがとても残念なことに、僕の妻となる予定だった大切な女性を失いました。僕は彼女を守ってあげることができずに――》
実際、とても長い文章でした。
婚約者を失った悲しみの気持ちは素直に表しているけれど、泣き言や恨み言なんか1つも書いていない。つくづく徳の高い人だなあって思います。同じ男でも、あの雅彦とは大違いだよ。
これの返信内容は慎重に考えなきゃだ。
とはいえ、婚約者さんのことを触れないわけにもいかないから、ただストレートに「おくやみ申しあげます」と書くしかなかった。
あと、アタシがやってるブログのことも伝えた。パワーショベルの達人さんに見てもらうのはオコガマシイけれど、猪野さんは当分ベッドの上にいないといけないみたいだから、ちょっとした気分転換くらいにはなると思うし。
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