ホラーの書き方①

 なんか知らんうちに、んげーことが起こっていたんである。つぶやき改め電網ペケ字拳の話である。この創作論めいた与太話の存在をご承知の方は思ったはずです。あ、これ、こいつきっと書くんだろうな――と。ええ。書きますとも!


 折しも私もカクコンにホラーで参戦中である。なんか、この間ふと見たら募集要項の内容的に雨穴(敬称略)とかのモキュメンタリーを求めてる気配を感じ、あこれ私のカテゴリーエラーかもしれんとぐんにょりしているが、参戦中である。もし時間があったら読んでみてくれると嬉しいなって意味である。


 で、冒頭のふんげー話とは、私は知らなかったが名の知れているらしい方が不用意にも言葉足らずのまま発してしまった『ホラーと小説は相性が悪い』という文言が強烈な呪文となりて、ホラー小説界のマエストロたちが大挙して押し寄せ窓に頬をびっちり張りつけたうえで「んんぅ……? 中から人の臭いがするぞぉ……?」みたいな状況になったことである。


 ホラーである。なにもそんな寄ってたかって……と思ったものの、どうやら事の発端はホラー小説を書きたいのだけどと相談されて相性悪いからやめたほうがいいと答えたゆえらしいのでもっと……いや、心まで闇に呑まれてはクウ。オデ人クウ。

 

 冗談はともかく、主張のどのへんが間違ってるとかどうとかいうのは、もうマエストロたちが骨の一片すら残さないどころか箒で塵を集めて水に混ぜて飲んだレベルにやられてるので、私のような木っ端も木っ端なアマ作家がやらんでもよかろう。アマ作家って尼サッカって書いてマサカーとかけて尼サカー(尼マサカー)つってホラーにしたら面白そうですね。


 閑話休題。


 実は件の主張、間違ってないところもあるんである。たとえば、怪物の描写を引き合いにだして、こんなの映像なら一コマで終わり、みたいな話である。これ部分的には間違ってはいないのだ。たぶん。わからんから今から考える。


 おそらくこれ、想定しているのはジャンプスケアと呼ばれる表現のことだ。一昔前の検索してはいけないジェフ・ザ・キラーさんとか、太古のインターネッツにおけるウォーリーを探さないでとか、そういう、画面に集中させといて急にバーン! ビビった! というやつです。


 なにやら悪意の混じった表現に見えるかもしれないが、ホラー文脈に乗っていないジャンプスケアはただのびっくり箱なのでホラーではない。と思う。ではホラー文脈とは何かというと、今から怖いもの見せますよ、怖いですよ、いいですか? びっくりしますよ? ドーン! である。なんてバカっぽい表現だろう。


 つまり、脈絡のないジャンプ・スケアをやるのなら小説という媒体は相性が悪いという意味であれば、かなり正しいと思うのだ。できなくはないが大変である。


 たとえば頭の悪い作家(私だ)がやりそうなことといえば、冒頭から見開き一発目で怪文書攻撃とか、それまで普通のページだったのが急に怪文書とか、挿絵とか、横書きになったりとか、ともかく純粋なジャンプスケアを文字だけでやるのは難しい。


 一方で、ホラー文脈によるジャンプスケアはわりと簡単にできる。それこそ、発言元で引用されていた怪物描写がそれである。SFホラーの古典にして学ぶべきところいっぱいある映画に『エイリアン』というのがあるが、それで考えてみるとよい。


 まぁエイリアン知らん方は知ってる怪物を思い浮かべて頂くとして、そいつが何の脈絡もなくバーン! とアップになったとして、怖いだろうか。いやまあ多少は怖いかもしれんが、大部分は何かよくわからないままびっくりしたって感想になるはずです。そう。ようしらんモンスターをいきなり出しても防御反応でびっくりするだけであり、怖くなるのは造形を理解してからなのである。分からんけど。


 ではどうするかというと文字数だけどキリよいとこまでやる。


 ジャンプスケアの前に、モンスターの描写は先に済ませておけばよいのである。そして、そのときは全体像を見せない。いや小説の場合は全体を一瞬で表現するのが難しいので、普通に描写すれば、モンスターさんのチャームポイントを順繰りにアップで撮る感じになる。


 で、お読みくださる怖いもの知り過ぎな方々に、怪物の姿と、なんか怖いらしいことを覚えてもらって、登場人物に逃げたりなんだりさせる。懸命に抗い、恐怖を吐露し、なんとかなった的なフラグを立ててから『――がいた』とかやればよい。あとは恐怖に叫ぶ描写を入れればベタながらアフターケアもばっちりである。


 実はコレ、よくできたホラー映画も同じだったりする。

 ①なんか凄惨な事件が起きる。

 ②どうやらモンスターがいるらしい。

 ③今のモンスターの手じゃね?

 ④まってヤバイ超怖い。

 ⑤ドーン!

 である。

 ――そうなのだ。ホラーはすごく丁寧にやらないとびっくりさせるだけで怖くならんのだ。たぶん、わからんけど。


 キリがいいので次回につづく。かもしれない。わからん。

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