ミステリの書き方⑬

 どんだけ悩むねん。いやそれぐらい私にとってミステリって特別なものなんだと思ってください。だって、登場人物の行動が異常になるんだもの。何度か引き合いに出していうが、TRICKにおける山田奈緒子の名台詞『なんて面倒くさいことを!』である。

 

 そう、まずそこに私のミステリ不得手がある。


 私は脳筋バーンドカーンアイラビュー人かつ、コラか本当かしらないジョンウィックのインタビュー受けてるキアヌ思考なので、殺したいなら後先を考えてないで殺せばいいじゃんヒューマノイドである。なんなら現代社会では殺人衝動の完遂ってそれだけでタフな仕事だから燃え尽きない? ってなっちゃう人間なのだ。これが弱点である。


 となれば、殺人(に限らずナゾ)には特殊な動機がいる。


 言い換えれば、その特殊な動機を叶えるための状況設定がいる。そして、それらを途中まで物理的に可能とする人材が複数人必要となる。容疑者である。容疑者のうち無実の者には、動機あるいは手段で不可能性を用意しなくてはならない。


 悪役だけが完遂する手段と動機を供えていなければならず、これはまさしくパズルのような創作で、私のようなガチモンのバカには半ば神の手付きといえます。不本意ながら。無論、犯人がわからないパターンのミステリの話である。犯人が分かってたりするのはいける。たぶん。やばい、またごっちゃになりかけてる。


 今話しているのは、話型の話である。酷い文章だ。マジで。


 私はミステリの、それも犯人当てを主眼としたミステリの書き方について考えていて、ひとまず構成について気付いたのである。事件が起きて、検分して、聞き込みをする。実はこれだけなのだ。そのあとはどうやって事を成したのかを解説する。実はここはパズルではない。最後に動機という最も難解なものを披露する。こっちがパズルである。


 それと気付いたのも、今日まで読んでいた古い海外ミステリのおかげだ。そのミステリは主人公がやんごとなき立場であるという設定もあって、容疑者たちにもそれぞれ難儀な思惑があるのです。

 

 たとえば、将来的な権力争いの相手を脱落させつつ時期が来たらそれがミスリードだとバラすことで本来の競争相手の権威を失墜せしめ自分の恋人をトップに祭り上げる(予定)だとか。なっげー、けどなるほどですねと怒られてみる。


 要するに、殺すのは手段でしかなく、殺したことによって起きる事象が目的だったり、殺し方に目的を設定する必要がありそうである。


 たとえば、殺したいけど刑務所に行きたくないというだけなら、人目を忍んでどっかで殺して解体バラして捨てるとなるはずだから。そうしなかったからには、それをするための理由があるということである。よし、だいぶミステリ思考できてきてる気がする。自画自賛は自己肯定感の栄養分となる。


 で、それらは蓄積された情報から演繹的推論をおこない決定(推理)される。


 小難しい書き方をしたが、気づきました! 私、これやったことある! どれでと言われると『裁くのはおれじゃない』です。あれは巨悪が相手だし、物語の中盤をすぎるまで真の犯人が出てこないし、なにも解決しないで終わるんであるが、主人公の記者がやっているのは演繹的推論である。


 考えてみれば当たり前だ。ハードボイルドの『裁くのはおれだ』とかを捻ろうと思って書いたのだから。


 私、ミステリー書いてたー! (開いた傘を縦に振りながら)


 暴論である。暴論であるが、それっぽいもの書いたことがあると分かれば、なんか書けそうな気がしてこなくもない。残る問題は膨大な数の人名を創出し、それぞれに動機になりそうなわけわからん事情を設定し、それらのなかで犯人に繋がりうるトリックをでっちあげ……あ、不安になってきた……。


 分からん……書けるのか、本当に……。

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