ミステリの書き方⑫

 ようやくどういうことなのか分かってきた気がしたのである。いや、無論なにも分かっていないんだろうけど、わかった気だけはしてきたのである。なにがってミステリの書き方です。ずっとそう題してきておったはずである。たぶん。


 ミステリを書き慣れている人にとっては当たり前の話であろうということは念頭に置きつつ、ようするに、動機と方法と人物を追っかければいいのである。当たり前だのクラップ音。藤田まことの十三回忌は去年でてなもんや三度笠の六十周年だ。残念ながら私は一本見たことがあるだけである。


 閑話休題。


 いくらかミステリを読んできて、ようやく話の構造が見えてきたのである。当たり前の話だが、事件が起きて、容疑者が浮かび、調査によって犯人を当てる。これが基本構造である。いや調査って簡単に言うけどそこが難しいんじゃってなりそうだが実はそうでもないかもしれないんである。分からんけど。


 ミステリは、論理的に可能か、ということだけを見るのだ。たぶん。


 だからまぁ、毒薬はどこにあったんだよとか、めっちゃ急いだらできたとか、そういう描写になると途端に説得力は薄れてしまう――ものの。そう、ものの。毒薬があればできたでも、めっちゃ急いだらできたでも、論理的に可能であればオーケーっぽいのである。面白くはないかも知れないけど。ダメじゃん。いやいいのだ。初めて挑戦するものが面白いのは天才か偶然の所業で継続性が担保できないから。難しい言葉を使って分かったないし分からせた気になる作戦である。


 とにかくまず、物理的に可能な人をあぶり出す。これがマストである。不可能犯罪はないんだから極めて当たり前である。でも私はこれが苦手なんだなー! なぜなら大味なアクションばっかり摂取して育ってきたから! あと社会派! 社会派も摂取してるのになんでってなりそうですが、これミステリ特有……というかミステリ系に強く出る思考パターンだから社会派にはあんまりないんである。


 なぜなら、社会派はわりと早い段階で犯人がわかる、ミステリで言うところの倒叙ミステリ型になるからである。これ実はバカアクション映画も同じです。それこそ伝統的な勇者魔王モノも同じ。なんでかといえば、魔王という悪役がいるのはハッキリしているので、なにがどう悪くて、どう倒すかを追っかけるミステリ構文なのだ。


 あいかわらず無茶な飛躍をと思われそうだが、話型は同じである。言い換えれば私が愛してきてこれからも愛するだろう頭空っぽエンタメは基本的に倒叙ミステリと同じ話型となっているのである。


 他方、ミステリはどうか。


 こいつ、悪役を探してやがるぞ……!?


 そう、これが私がミステリが書けないでいる理由である。たぶん。まだ分からんけど。というか自分のクリティカルにダメなとこココだったのかと知ってショックではあるんだけど、続ける。


 伝統的な(いわゆる本格とされる)ミステリの思考方法は、エンタメ界では実はわりと特殊な気がする。結果から道筋を逆算する帰納法と見せかけて、道中は数学的帰納法――すなわち演繹法なのだ! わからん。簡単にいおう。


 私は、悪役はこいつ以外にありえない、という状況を設定するのが下手なのだ。


 もうこれは訓練的な話で、書いてみないことには始まらない。始まらないのだが、ものっそい不安がヤバくて脳みそぱーぷりんである。登場人物の行動と設定が全て逆算になってしまう。クソもというんち! 話が長くなったので次回、説明を試みることで整理したいと思う。

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