新本格ファンタジー

 久しぶりである。前回は久しぶりすぎて文体の一部が別で書いてるお料理エッセイと被ってしまっており、そのこと自体に気付けずにいて、大変申し訳なく思ったのであった。そんななか、いい加減こんな何だかよく分からないものはやめちまおうと思っていたところに、またわけわからん概念が飛んできたのだ。


 本格ファンタジーとは、なんぞや。


 知らんし興味もないという方のために補足しておくと、なんか新しい出版社がやっているコラムにて、ファンタジーに造詣の深いとされる方が、ゲームファンタジーではなく本格ファンタジーを読みたいのだと、ゲームの世界観を引き合いに本格性を語っておられたのである。実はあんま良く分かっておらん。二度ほど読んだのだが全体像が見えなかったのである。(私の読解力が)残念である。


 コラムの執筆者様はカクヨムにてファンタジー小説を公開されていたので、そちらもちらっと見た。やっぱり本格ファンタジーの本格感は分からなかった。ただ、私もカクヨムで小説を発表している身であるため、無駄に喧嘩腰にやりたくない。創作者はみな友か敵なのだ。敵はまずいか。好敵手である。


 とりあえずコラムを読んだ私が理解したのは、執筆者様はエルデンリングとかウィッチャーとかが大好きらしいということだ。けしからん。その筋で語るならTESすなわちエルダースクロールズも出さないといかんではないか。違うか。


 骨子としては、ファンタジーないし幻想文学とは、神話なり伝承なりを介し、身の回りの狭い世界に終止するものではない……といいたそう、な気がする。よくわからんが本格ファンタジーの元祖と言ったらグスタフ・マイリンクの『ゴーレム』ではないのか。そういうことではなさそうである。


 本格ファンタジーがなんたるかはわからんが、私にだって分かることもある。


 日本の陰陽師や妖怪は本格じゃないファンタジーではないということだ。本格かはわからないがファンタジーではあるしだいぶ本格的に感じる。だって陰陽師やら妖怪やらは記録にあるが実在や実態とは異なるから。私が紀伊国屋で見かけた着物に指ぬきグローブを合わせた銀髪のおじさんはだいぶ本格的なファンタジーである。実在しない。たぶん。だっていたらびっくりするし。


 話が脱線したので戻す。


 私は執筆者の思想を斜め読みして揚げ足を取りケラケラ笑うような悪趣味は(ちょっとしか)持ち合わせていない。ただ、一つだけ、執筆者さまに物申したいというと言い過ぎだから、思うことがある。


 いまさら古いもん引っ張り出して本格ファンタジーはダサくないか。


 好きなのは分かる。が、これから新しいものを書こうというのに、未だに本格ファンタジーでは困るというか、綾辻の君が悲しそうにモルカーを撫でそうである。どうせなら回顧するのでなしに現代を取り入れて、新本格ファンタジーにしてみたらいかがかと思うのだ。たとえば、


 それはというべきなのか――。

 まだ二足の獣が人と言う名を同胞に授ける前のこと。まだ神が地を流離さすらい、神ならざる魔と称するより他にない者共と争っていた頃。

 神は自らの尖兵となりうるように、二足の獣に言の葉を与え給うた。

 ――ステータス・オープン。

 その詠みは二足の獣の喉でなければ唱い通せなかった。唱い通せば現るる金樹の型枠に、自らの能が示されていた。二足の獣は己の能を知ることができるという一点を持って他の獣に勝り、人という名を手にした。そして遅れることいかばかりか、人の唱えたステータス・オープンと、其処に示された能と、彼らの振る舞いを了解し、獣たちのなかから己を知る者が現れた。そを人に次ぐ者――亜人と言った。


 とかすればええんちゃいますのんである。

 ちゃんと神話ベースにそれっぽい理屈をつけて現代的なステータスオープンをぶち込めておる。本格ゲームファンタジーである。エルデンリングにもステータスあるんだしおっけーちゃんだものです。

 

 無論、これは試論として書いてみた新本格ファンタジーであるので、本格ファンタジーでないから許せんというのなら、それはそれで正しいのでおっけーちゃんである。


 ……わからん。おっけーちゃんなのかどうなのか、というか、私の書いた例文は本当に新本格ファンタジーなのか、分からん。

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