ラノベ作法

 ラノベもといライトノベルには、文法的にある種の作法めいた何かがあると言わざるをえない。いわざるをえないのだが、それがどのようなものなのかいまいちわからないでいるのだ。凄まじい平仮名推しだが、もちろんこれは違う。


 ラノベでは、同じことを言い換えがちである。


 実は前回の最後あたりにチョロっと出している。頭が痛い。頭痛だ。の二文。

 実際はここまで露骨じゃない。しかし同じことを言い換えたり補足したりするのは特徴かもしれない。だから良い悪いではないので注意である。


 ライトノベルというのは基本的に十代から二十代の文章を読み慣れていない人々を対象にしていて、結果としてベタなネタも(ある程度)許される分野なのだ。だから好きなんです。私は。


 ラノベには独特な難しさがある。どんなことか。分からない(かもしれない)人に分からないこと説明しながら秒で読ませようとしているのだ。分かるか、この苦悩。


 たとえば、銃。


 私はとても浅くて薄いミリタリ好きなので、銃について雑に描写しがちである。リボルバーという形式の銃がどんな形をしているのか書いたりしない。読む人はそんなこと分かっているだろうという想定だ。


 しかし、ラノベなら雑に置き去りにしてはならない場合があるのだ。


 場合と書いた。知ってる人は知ってるからだ。ここら辺から一気に難易度がましていく。銃を知っている人からすると、リボルバーの形状なんてものは常識なので読むのもダルい。しかし、知らない人からすると形状を説明してもらわないと鉄の塊でしかない。これを伏線にすると困る。


 かつて私は『ハンテッドハンターハンティングハント』というSF西部劇を書いた。SFと強弁しているがSFかは怪しい。それはいい。それはいいが、主人公の一人がパーカッションリボルバーを使用しているのだ。ほら、分からないじゃろ?


 まあ銃の形状のひとつなのだが、ちょっと古くて特殊で、それを伏線に使っているから説明せざるを得なかった。個人的には、とても上手くこなしていると思う。すっと分かりつつ伏線と機能するように書けたと思う。けれど分からなかった場合の情報は上がってこない。


 これが現代高校生の話となってくると難易度は爆上がりする。コロナによる特殊状況がもう三年に差し掛かっている。高校の既卒者にとって、これほど理解しがたい学生生活もない。


 もちろん、既知の学生生活を書いても良い。けれど、この場合、若い読者は置いてきぼりになる。銃についても同じだ。若い読者はアクション映画の基本はアベンジャーズであろうと思われるので、銃の知識を期待するのは酷となる。


 同じように、語彙の知識もない。四字熟語とか要注意である。二字でも地味に危うかったりするのだ。一字ですら『穿った目で見ると』とか書いてから頭を抱える。正しい意味で書くべきか間違った意味で書くべきか。読者はどっちだ。


 そこで想定読者がうんぬんなのだが私は常に中高生を意識してるつもりなんじゃよこれでも。


 グロテスクな描写を多用しがちな私だが、実はこの辺もややこしい。私自身はグロだと思っていないのがグロだったりする。作者に常識が足らない最悪のパターンというか、B級ホラー映画好きという特性が常識を歪めちまってるんである。


 だから最近のラノベを研究しようと読むと、これがまたレーベルやら作者やらによってまったく違う。基準点が見いだせない。雰囲気で察せばよかろうなのだが、これがまた分からん。


 分からん。こんなことばっかり考えてないで、さっさと新作を書け。

 なぜ書かないのか。

 これが一番、分からない。

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