独白

 いい加減この話題しつこい。分かっておる。分かっておるが、やらかした感があったので筆をとってしまったんである。何をやらかしたって偉そうに解説めいたことをしてやがる点です。お前(私だ)は何を分かった気になっているのかっていう。


 そもそも、私は自由間接話法が……が……よく分からん。


 なんとなく不得手な気がする。というか、私の小説というのは根本的に動作描写が中心で感情描写が下手くそである。しかも『思った』とかつけて直接話法で独白させる。さらに。


 いや私の長編、平均したら星五くらいじゃん。


 嘘を吐いた。計算したら星九であった。あんま変わらんなガハハ。

 まぁ物語の面白さと技術の巧拙は何の関係もないし、最近の私は技術力なんて無いほうがいい気がしておる。公募では自信のある作品ほど簡単に落ちるらしいが、それと同じだ。なんでらしいと間接話法したかといえば私に限っては自信ある時のほうが残ってきたからです。


 ――どうでもいい(エコー)。


 三人称で小説を書いているとき、どうやったら自然な形で独白に入れるのか。分からん。分かるわけない。自分の作品を見返しても上手くいってるのがない。確実なのは、視点人物の一人称つき独白は、最も内側にカメラがある状態ということだけだ。


 つまり、読者に主人公の感覚ないし感想を追体験してもらうイメージである。

 あるいは、相談に乗ってもらうイメージか。

 そのためには、主人公がどういう人物なのか知ってもらわなければならない。


 なんでって、よく分かんないやつに悩まれても何の感想も抱かんからです。たまにクソもといウンチバカなお人好し(私だ)がフラフラ近づきますが、オメーは呼んでねぇ扱いです。疲れるばかりである。たとえば、


 錦糸きんしまちは道端に嘔吐した。私なにやってんだろ。


 とあったとしても……いかん、ちょっと興味が湧く。しかし、この興味はおそらく先述のお人好しムーブだ。流されてはいけない。

 そう、たとえば、こうだ。


 錦糸きんしまちは道端に嘔吐した。朝まで飲んでいた。男に振られたとか、仕事で嫌なことがあったとか、逆にいいことがあったとか、そんな理由ではない。むしろ、そんなのであれば良かったのに。どうしていつもこうなんだろう。何でもなく、何にもなかったときほど量を飲んでしまう。何かあったことにしたいのだろうか。まちは手の甲で口元を拭い、涙で滲んだ街に歩み出る。

 私、なにやってんだろ。

 自分にも分からない。だから誰かに分かってほしい――。


 くらいやれば自然と……しつこい気がするから困ったもんじゃ。吐瀉。やってみるとマジ分からん。内的描写がしつこく見えるのは内容がまるでないようだからか。バカラか。もうちょっと複雑なことを考えれば……うーん。そうかぁ?(知らねぇよ)


 ただ、小説において、この手の前フリというのはとても大事だと……どうなんだろう。前にカクヨムで見たドンデン返しコンテストとか■■■■■■■■ばっかだった気がする。まぁよい。大事ということにして、先回も触れた太宰のメロスだ。


 一人称の独白は、ページ的に全体の五十パーセント前後から始まる。第一の危機である。川を越えたと思ったら山賊でこれも突破。そこで二度目の危機だ。マジ疲れたモード。ここからまた独白で、メロスと神(メロス)の天使と悪魔ごっこが始まる。で、独白の終わりは全体の八十パーセントを消化したくらいだ。なんと全体の約三割が独白である。あえて言わせてくれ。


 なんだよ、この小説。


 分からん。分からんのだ。ただ、ひとつだけ確信している。

 走れメロスは日本文学史上、最高峰のドライブ感をもつ小説である。それ以外はマジで何もわからん……。

 

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