省略

 もう分からんこともそうそうあるまいと鷹を括っていたら(後で放しました)、割と早々に分からんことに気付いてしまった。タイトルを見れば秒以下で察してもらえるだろうが、小説で頻繁に用いる省略がよく分からんのだ。


 一口に省略と言われてもよく分からんと思われるので、いつものように説明しておくと、ここでいう省略とは描写できるものをすっ飛ばす技法のことである。ちょっと極端にいえば空行で時間を空けたり、記号などで場面を変えたりするのも省略の一種である。移動とかを省いたという意味で。


 んで、今回、私が気付いたのは、その省略のなかでもよりマニアックな、当然あるべきことを書かずに飛ばすという技法である。誰でも自然に使ってそうだがマニアックなのかそれは。まあよい。


 小説というのは自由なので、書こうと思えば全てを描写することができる。たとえばラノベ公募に出したら一発一次落ち確定などとまことしやかに言われているのが、通学シーンの羅列である。

 

 朝おきて、顔あらって、歯ぁ磨いて、着替えて、メシ食って、靴はいて、行ってきますと言って家をでて……という具合だ。順はだいたい不同である。さすがに家を出てから起きてメシを食うのは……転校生にぶつかる前触れじゃん。すげえ。


 ――話が脱線する前に戻そう。

 ようするに、普通ならやっているであろうことを特に意味もないのにダラダラ書いてたら一次も通らんよ、ということである。分からん。そんなふうに断ずると、なるほど通学シーンはカットすればOKとか理解する粗忽者(私だ)を生みかねない気がする。なので念のため補足しておくと、違いの分かる通学ならOKだと思います。


 いったいどれだけの脱線を正せばいいのかまだ僕たちはしらない。

 

 さて、学校に行かないといけないが通学は書けないとして、どうしたらいいか。


 教室に入ると、


 こう書き出せばよい。話題にしたい省略である。通学せずに教室へは入れぬという前提を利用しておる。いや教室の鋭角から飛び出てきても構わぬが、それなら省略しないほうが面白いと思うでござるよ。にんにん。


 この文中(文章?)の省略が、よく分からんのである。

 

 実は最近、三~五千字くらいで笑えるホラーを書くつもりが笑いのネタにしたら失礼ではと思い直し(息継ぎ)気づけば真面目かつ一万字を超えちゃったホラーを書いているのだが、そこで妙なテクニックを使っているのに気付いたのだ。なかなか長いのだが代わりの例文がうまくできないので、申し訳ないが引用させていただく。


――

 タクミは鼻で息をつき、スマホを取った。

 犯歴の代わりに出てきたのは、近隣のスーパーの名だった。万引の常習者を確保した際、通報者として烏丸凛子の名前が残っていた。

 パートタイマーではなく、裏方の正社員。勤務態度はマジメそのもの。温厚で、多少、人付き合いが悪いことを除けば問題らしい問題は何もない。

「……人付き合いが悪いというのは?」

 ミサキが尋ねると、スーパーの店長は腕組みをして気遣わしげに辺りを見回し、声を低めた。

――


 ほんと長ぇくてすまぬ。でも、推敲のために読み直してたら、この省略レベル高いくね? と我ながらビビったのである。


 文中にあるタクミとミサキは、まあ警察だと思ってくれてよい。タクミがスマホで話題の人物の照会をし、出てきた情報を説明しつつスーパーで聞き込みしているシーンにつながっていく。


 なんでこれスゲー上手くいってるのか自分でも――いかん紙幅が。

 次回に続くが、番外なので、ご容赦いただきたい。

 

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