代名詞

 小説では避けるべきと言われているもの……それが代名詞である。

 そう、が代名詞である。いちおうギャグのつもりだった。分からんでもしょうがないと思う。

 

 私は代名詞をよく使う。さりげに『私』も人称代名詞だったりするし、当然『あなた』や『彼』なんかも人称代名詞である。でもって、代名詞は削ったほうがいいと書いている書きかた本の作者名を見ると、英語圏の人だったりする。


 そうなのだ。英語と日本語だと代名詞の分からなさが全然ちがうのである。そこで混乱が生じるのである。だから、それから学んだ人は、特に考えずに代名詞を削ったほうがいいと言ってしまう場合があるのだ。端的に例を示そう。


「あー、アレかあ。じゃ、あれをアレしてあれ……あれなんだっけ、そう、それ」


 いや日本語でも訳わかんねぇが、英語で表現するのに比べればだいぶマシだったりする。分からん。会話文の形式にしちゃったのは失敗だったかも。実際、『彼はあのときそれをアレして例のアレはあそこにこうしたのだった』なんて文章はギャグでもない限り書かんからヨシ。ギャグでは書くのか。分からん。困る。

 

 分からんついでに言うと、日本語でファンタジーを書いていると、話している相手の呼称について悩むことがある。


「お前なあ……」


 現代の日本だと割と荒っぽい表現らしい。実は私、長いことそこらへんの機微に疎く、オラオラ系のヒトだと思われていた。とてつもない誤解だ。現代日本で『キミさあ』と言えというのか。難易度が高すぎる。なんだかしゅっとしたシャツに青黒いベスト(胴着)を合わせて蝶結びにした紐タイの片端でも弄りながら微苦笑とともに言うイメージしかない。


 そう。前に単位の話で問題にしたかもしれないが、アレに通じる。

 異世界の話し相手の呼称が『お前(You)』以外だとなんかムカつく。

 ちょっとである。それで読むのをやめるとかではなく、なんかモヤモヤしながら読むのである。


 で、ここらへんまで読んだら分かるでしょうが、けっこう凄まじい数の代名詞をすでに使用しています。私は、小説でもこれをやってしまうのだ。また出た。ワァオ! 


 まして私は三人称じみた謎視点で小説を書くことが圧倒的に多く、結果として彼や彼女も頻出する。そうでないと、人名の洪水に押し流されてしまうのだ。でも、いわゆる「こそあど」代名詞は使いすぎな気がする。


 適正な量というのがまったく分からず、なにせ書き慣れてしまっているから分かりにくさに気づきにくく、困ったもんなんである。悩みすぎて公募の際の備考欄に『指示代名詞が多すぎるでしょうか?』とか書いてしまって消した覚えすらある。深夜にしたためるラブレターか。


 でも、分からんのだ。指示代名詞が邪魔なのかどうかが。

 どこを見てもとは言わないが、傾向としては減らすべきに傾いている。このへんの話のやっかいなところは、例のアノ野郎との関係が深いところである。


 そう、文章力である。


 いよいよ、奴の分からなさについて、語らねばならないときが来たか。否定語を重ねすぎて書いた本人が混乱しているけれど、読んでる人は混乱してないだろうか。分からん。


 まあ、それはともかくとして。うん。もうしわけない。ぶん投げた。まだ早い。早い気がする。暇な人は自分の作品の指示代名詞をぜんぶなくしてみましょう。普通にただただ読みにくくなると思います。分かりませんけど。

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