会話
タイトルが分からん。いや、小説のタイトルでなく、この話のタイトルである。前回は台詞にしたから会話にした。特に意味があるわけではない、わけでもない。分からん。あるかもしれない。
台詞の適切な長さとか語尾とか技術的な話はどうとでもなりますが、雰囲気的な話はめっちゃムズない? 分からんよ、私は。
会話の雰囲気は、甘い、辛い、苦い、しょっぱいの四つくらいに大別できると思う。もうひとつ重要な味があるが、それはひとまず置くとして、ここで、分からなさがあふれる。
青春やら恋やらは甘酸っぱいというが、あの表現が正直よく分からない。酸っぱいというのがナゾだ。ナゾすぎる。甘くて苦いとか、甘くて辛いとか、甘くてしょっぱいなら分からんでもない。でも酸っぱいってなにさ。
順に考えてみると、まあ、甘いは恋とか愛とかそんなんだ。口調が変わったり、地の文に対して柔らかな雰囲気にすればいい。いいったってやり方が分からんが、『好き』だの『愛してる』だの直接的な台詞は避けるべきだと思う。なぜなら、
「好き。好き! 好き!! 大好き!! 愛してる!」
雑に書いてみたけれど、これを読んで甘さを感じる感性が私にはないからだ。むしろ苦さとか辛さとかしょっぱさを感じる。シチュエーションによるといえばそれまでだが、甘さのポイントは不安感のなさにある気がする。
安心感のある会話ではない。不安感が希薄なのだ。どうでもいいことを言い合いやりあうのが甘さなのだ。たぶん。分からんけど。
分からんくせになぜ言えるのかというと、逆パターンを知っているからである。苦い会話を書こうとして「嫌い」と言わせてしまうと、失敗する。たとえば、
「嫌いだよ、お前なんて」
白状すると、ちょっとズルをした。倒置法だ。情感が増すので言葉の裏の感情に目が向く。もちろん、そんな機微は分からんという方も多い。困る。地の文で補強するしかないが、会話の妙はキャラクターが決める。
ええい。話がそれる。これというのも甘いだの辛いだの抽象的な表現をしたからである。抽象的でないと分からない人が稀にいるからそうしたが、すげえ困っておる。
あたり前田のクラッカー、抽象的な会話が苦手な人(私だ)にも分かるように、ちょっと固い文字列に置き直してみる。すると、甘い、辛い、苦い、しょっぱい、はそれぞれ、
親愛、敵対、離別、他人に分けられる。
しょっぱいはつまらない試合=塩試合にかけた表現だ。小説とは、これら四つの成分を混ぜあわせた会話を繰り返し、少しずつ関係が変化していくのを楽しむものなのである。特に、キャラクター小説は――ああああああああ!!
「なんだこれは! なんだこれは! こんなどこにでも転がってるつまんねえ創作論をつらつら、つらつら、つらつらとよぉ! 俺は、こんなもんを――」
というのが、実は最初の方で書いておいた、上の四つにあてはまらない唯一無二の会話形式、爆発である。エンタメの場合は、カタルシスに突入しますよという宣言になる。分からん。そうでない場合もあるかもしれん。
会話というからには二者関係でなされる。これは爆発も同じだ。独白を使うにせよ他人との会話にせよ、過去の話者と今の話者で、関係が変わりましたとアピールするのだ。これで小説の目的はほぼ終わりましたという意味になる。
いや、だから、なんだ。
なんかちょっと調子が悪いのは、本当にただの創作論じみてるからかもしれん。わからん。まったく分からん。
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