単位

 なんのこっちゃと思われるだろうが、これが分からん。これはいわゆる、創作世界における、架空単位のことである。ファンタジーやSFを書いたり読んだりしないなら伝わりにくいかもしれないが、架空単位の呼称で世界観が決まるという読者もおられるのだ。めんどくせー。もとい繊細である。


 ただまあ、めんどくせーと言っておきつつ、私にも似た忌避感があったりする。他人ひとは他人、自分は自分の強権を発動です。


 私が嫌いなのは、既存の単位をチョロっともじった単位である。


 ライトノベルに限らず、わりと観測される、メートルをメルトルとかしておくタイプだ。素人ファンタジー書きの三十パーセントくらいが一度は使う。嘘。統計とってないので詳しくは分からん。


 ともあれ、私はメルトル型の単位を蛇蝎と比べ物にならんくらい嫌っている。蛇蝎は可愛い。蛇はつぶらな目をしてるし、蠍は荒野をさささーっと歩いているときなど心が安らぐ。平和な時代である。


 メルトル型のなにが嫌いかというと、これは遭遇したのが子供の頃だったからだろう、子供だまし過ぎてブチ切れたのであった。ナメてんじゃねーぞと小説に凄む小学生(短気)である。可愛らしい。


 とはいえ知能は小学生なので、ある小説でなんちゃらかんちゃら(地球でいえばキュービックインチの七割ほど)というのを見たときは、メルトルでいいかなあ、となった。リッター換算までが遠すぎた。これが大人になるということなのだろうか。分からん。少なくとも私は大人になりきれなかった。だから、未だにメルトル型の単位が嫌いだし、もじればいいよとか無思考に言われると――


 はてなき怒りが漏れたのを、ここに謝罪します。ごめんなさい。


 じゃあそんな私が単位を決めるときはどうするか。まあ、だいたい書かない。人の倍とか、大木のようなとか、二階の屋根より高くとかである。あとは、キャラの反応でサイズ感を伝えるというのもある。手はいくらでもあるのだ。ファンタジーだし。


 これが現代ファンタジーや、そう取られても違和感がない作品では、メートルなど現代の単位を普通に使う。つい最近ファンタジーでメートル系の単位を普通に使ったりベーコンやらサンドイッチやら語源のややこしい単語だして冷めると評されたりしたばかりだが、まあ、その意見も分かるくらいには大人になれていた。分からん。まだちょっと悔しくもある。


 だいたい、固有名詞ごときで世界観に嫌気がさすならそれ以前に別世界の話が日本語で書かれていることに――また漏れかけた。危ない。

 実は、これが一番やっかいな問題である。単位は世界を作る――否、


 単位が、世界を作るのだ。分からんが。


 さっきの作品(まだこっちには下ろしてない)はハードボイルド探偵小説めいたものを異世界でやる、というコンセプトだったので、その空気感を維持するために単位はメートルでなければいけないと思っていた。失敗だったと分かれば、それだけでも価値がある。失敗したこと以外は成功だといえよう。


 で、単位に戻しますと、(ナイショだけど凝るのはやめたほうがいいよ……)


 伝わらなきゃ意味ないので、歯を噛み割りながらメルトル型を採用するか、めんどくせーと叫びながらぼんやり書くしかない。あとはメートル系を使いつつ単位名だけ変えるとかか。分からん。


 世界観はまたしても例のアノ野郎と関係をニオワセするから、分かっとかないとまずいんだけどなあ……。

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