第30話 何があった?
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※お酒は二十歳になってから。
※お酒はおいしく適度に飲み方を考えて楽しみましょう。
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ミホちゃん、「ふわぁ……」とあくびをしながらアラーム音を止めようと目をパチリと開ける。
「って、あれ? お兄ちゃん? どこ行ってたの? ……って、どこ触ってんの!?」
やべぇ! タイミングが最悪すぎるーーー!
俺は慌ててミホちゃんのふにふにから手を離した。
「ご、ごごごご、ごめんミホちゃん! これはその、なんというか、暗かったからというか、なんというか――」
「も、もしかして、暗い部屋でアタシを襲おうとしてたわけ!?」
「ちちち、ちちちちち違うよ! 二日酔いがひどいから寝たくて、でもなぜか違う部屋にいて、部屋に戻ったけど照明のスイッチがどこだか分からなくて、手探りにベッドを探してて、はしごを登ろうとしたらたまたま――」
「んー、そっかー、二日酔いって言い訳つけて、手探りにアタシの胸を触ったんだー。で、次はどこを手探りで触るつもりだったのかな?」
「だから違うってば!」
だめだ、何を言っても誤解される!
「……そっか、そういえばお兄ちゃんの読んでる本、血のつながってない妹に手を出しちゃう本だったもんね。なるほど、そういうことか~」
「なんでそのこと知ってるんだよ! ――じゃなくて! 本当にたまたま登ろうとしたら触っちゃっただけなんだって! 偶然なんだって!」
「ふーん? そっかー、偶然なんだもんね。じゃあ、アタシになんか興味ないってことだよね……はぁ、なんか悲しいな……」
「いやいやいやいや! そういうことじゃないから! むしろ興味アリアリだから! アリよりのアリだから!」
しどろもどろに言い訳をする俺を見て、くすっと笑うミホちゃん。
わざと勘違いしてるよな? 俺が慌てる様子を見て楽しんでやがる。
「……ふふっ。このことは後でリオちゃんにも報告しておこーっと」
「それだけは絶対に勘弁してください!!!」
朝から弄ばれているが、そもそもなんでミホちゃんが俺のベッドで寝てるんだ?
「ていうかさ、なんでミホちゃん、ここで寝てたの?」
「えっ? 覚えてないの? 昨日一緒に寝てくれるって約束してくれたからじゃん!」
……はい? 一緒に寝る!? 俺、なんてこと約束してるんだ!?
「あー、その様子じゃ覚えてないの無理ないか。お兄ちゃん相当酔ってたもんねぇ」
ミホちゃんはハァ、とタメ息をつくと、俺が記憶を無くしてからのことを話してくれた。
――トイレからなかなか帰ってこない俺を心配して見に来てくれたミホちゃん。トイレのドアをノックすると、「今行きまーす」と行って俺が出てきたそうな。
かなりフラついてて、リビングに戻ってくると「まだパラダイスは終わってないですよ! 続きやりましょう!」って叫んだらしい。
何だよ、「パラダイスは終わってない」ってクソださいセリフ。
その後もゲームし続けたんだけど、「ウイスキー注ぐのは俺がやります!」ってマナミさんから無理矢理ウイスキーを奪って、みんながマスに止まるたびにショットグラス並々にウイスキーを注ぎだしたらしい。
見事に暴れてるな……全然覚えてない……。
マナミさん、ウイスキー注ぐ係を奪われて、俺から瓶を奪い返そうとしても返してもらえないから「後で覚えてな!」って怒ると、俺も「上等ですよ!」って言い返して。
俺が無理矢理飲ませるもんだから、ミホちゃんも慌てて「もうやめようよ」って言うと「はぁ? 仕方ないなぁ、交換条件で許してやるよ」って俺が煽ってきたらしく。
ミホちゃんが「じゃあ、一緒に寝てあげるから許して?」って冗談半分でいうと、俺は「ほう?悪くなあだろう」って言いながらにんまりしてたらしい。
そういうことだったのか!
だからさっきリオの部屋で、マナミさんから無理矢理ウイスキーを飲まされそうになったのか。
マナミさんからは、俺が「飲み物がほしいほしい」って言ってたなんて聞いたけど、あれ、嘘だよな? 俺が記憶ないって分かったから適当に言った嘘だよな? 俺は復讐されかけたってことだよな?
ていうか、恥ずかしい! ミホちゃんにしたこと、恥ずかしすぎる! 誰か俺をぶん殴ってくれ、穴があったら入りたい……。
で、まだ瓶にウイスキーが残ってたからマナミさんは「もっと遊ぼうよ~」って誘ったけど、ミホちゃんが明日朝早くからバイトがあるから厳しいって言ったら無事にお開きになったと。
そんで、リビングから出ようとしたら、マナミさんが「リオちゃん部屋に送り届けたいから担ぐの手伝って」って俺に言い出して。
俺はミホちゃんに「後で部屋に戻るから先言ってて」って言い残して、リオを肩に担いで部屋まで送り届けたと。
なるほど。そこで俺はリオの部屋に拉致されたわけか……。
記憶ない間にどんだけやらかしてるんだよ。恥ずかしすぎるわ!
ミホちゃんはひとしきり説明し終わると、テヘッと笑顔になった。
「だからね、お兄ちゃん。また今度、アタシと一緒に……おねんねしよ?」
――ズキュゥゥゥゥゥン!!!
俺のハートが撃ち抜かれる音がした。
本心なのか冗談なのか、天使の誘惑なのか悪魔の囁きなのかも分からない。
ただただ、めちゃくちゃ可愛かった。
「え? あ、ハイ!」
俺は照れすぎて裏声で返事をすると、ミホちゃんはまたクスッと笑った。
ミホちゃんはバイトがあるらしく、準備をするために自分の部屋に戻るらしい。
俺ははしごから降りるとミホちゃんはそそくさとはしごを続けて降り、「じゃあまたねお兄ちゃん! あ、電気ココだから!」と照明のスイッチを押して俺の部屋を後にした。
こうして俺はやっと自分のベッドに戻ることができた。ふぅ、やっと寝れる……。
枕から、ミホちゃんの残り香がする……。やばい、甘くてめちゃくちゃいい匂い……。
なんだかとてもムラっとした気持ちになったが、それよりも頭痛と気だるさが勝り、気づいたら眠ってしまっていた――。
――そして、次に目が覚めたときには、時刻は14時を指していた。
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