第25話 MIX

***

※お酒は二十歳になってから。

※お酒はおいしく適度に飲み方を考えて楽しみましょう。

***


 ミホちゃんに無理矢理飲ませたことにより、バディのハルカさんもウイスキーを飲むことに。


 流石にハルカさんも、ウイスキーをストレートで飲むことには抵抗があったか。


「私はそろそろ明日も仕事なので……」


 と、うまいこと避けようとしてきたが、エリナさんが無理矢理飲ませることで無事(?)飲んでもらうことができた。



 もう、こんなアルコール度数の強いお酒をこれ以上飲むのはきつすぎる。やっぱりストゼロがいいわ……。


 と、思った矢先。マナミさんから衝撃の発言が。




「ストゼロ全部無くなっちゃったから、ゲームに負けた人はこれから全部ウイスキーね!」



 は!? 今からずっとウイスキーだと!? 


 周りを見渡すと、みんな嫌そうな顔をしている。


 そうだよな、やっぱりみんな相当飲みたくないんだよな……。




 ――ワイワイパラダイスが再開。


 不本意ながらみんなの体にウイスキーが注入され続け。


 気づいたらボトルも数瓶空いていた。

 

 って、どんだけ飲んでるんだよ俺たち!



 パラダイスは気づいたら終盤戦に差し掛かっており、みんなの駒もゴールに近づいている。




 そんななか、エリナさんの番。

 サイコロを振ると、何やら他のマスとは違う金色のマスに止まった。

 さすが陽キャのすごろく。色もウェイウェイしてやがる。



「あっちゃー! 出たーーー! パーティーマス止まっちゃったー!」


 エリナさんは、ケラケラと笑いながら、紙コップを手元に手繰り寄せると、ウイスキーをドバドバと注ぎだした。

 それも、コップ並々全部……?



 え!? どんだけ注いでるんですか!? 表面張力でもはや溢れそうなんですんですけど! 



「はい! じゃあ、みんなで回し飲みねー! 私が最後に飲むから、ハルカから飲んでってー!」



 ……回し飲み? ショットグラスは使わないの?


 ってことは、今からこの1つの紙コップを、全員が回し飲みするってこと!?




 ちょっと待てよ。……それ、間接キスってやつじゃないか?


 いいのか? こんな美人な人たちがこぞって口を付けたものを、俺が飲んでも良いのか?


 え? え? いいんですか、いんですか?

 人生において女の子とまともに口を利いてこなかった俺が、紙コップ越しに口を利かせてしまってもいいんですか?


 

 ドギマギしている俺のことなどお構いなしに、ゆらゆらしながらエリナさんはハルカさんへ「はいっ、ハルカ飲んでー!」と紙コップを差し出した。



 あーあー、並々注いだから、紙コップからウイスキーポタポタこぼれてますよー!

 

 ハルカさん、流石に飲むのを躊躇っているようだだけど……。



 そんな様子を見たエリナさん、ぐいっとハルカさんの肩を抱き寄せた。


「飲んでくれたらぁー。……ご褒美、あげちゃうよ?」



 エリナさんのその発言がハルカさんの火を付けたのか。


「本当ですか!? 絶対ですからね!?」


 ハルカさん、半分涙目で、紙コップの半分くらいの量をぐいっと飲み込んだ。



 うわー! かなり飲んだなー! 見てるこっちまで気持ち悪くなってくるわ……。



 ハルカさんはミホちゃん残された紙コップを手渡すと、「あとは頼みました……」と言ってソファに寝っ転がり、目を閉じてしまった。




 え!? ハルカさん、もしかして寝ちゃったんですか!?


 でもまぁ、さっきからずっと眠そうにしてたし、あんな量を飲まされちゃ寝てもしょうがないよな……。




 次はミホちゃんの飲む番。


 手渡されると間髪入れず、すぐに紙コップに口をつけた。



 え、ミホちゃん? そんなテンポで飲むお酒じゃなくない!? 大丈夫か!?



 

 ――と思ったら。

 全く紙コップの中身が減ってない。


 減ってないにも関わらず、隣のリオへ紙コップをすぐに渡してきた。



 あれ? 全然飲んでなくない? 


 みなさん、この人全然飲んでないですよー? エリナさん、これで良いんですかー?



 その様子を見ていたエリナさんが口を開いた。

 苦言を呈するのかと思ったら。


「えー? ミホちゃん、もっと飲んでくれてもいいのにー! アーッハッハッハッハ!」


 むしろ笑ってる。なんで?

 


 あれ、待てよ?

 最後にエリナさんが飲む。

 ハルカさんがエリナさんに無理矢理飲まされる。

 次に渡されたミホちゃんは全然飲まない――。


 

 ……分かったぞ!?

 もしかして、これは全員が飲むっていう建前だけど、本当はエリナさんが一番飲まされる罰ゲームなんだ!

 エリナさんは最後に順番が回ってくるから、それまでに少しでも量を減らさないといけないんだ!



 なるほど。ようやく趣旨が見えてきたぞ。

 ということは、今回は俺も理不尽に飲まされなくて済むな!



 次は、リオの番。こいつ、赤い顔でポーっとしていて、かなり酔っている。


 ミホちゃんが口だけ付けていた様子を見ていなかったのか、紙コップを手渡されると「こんな量飲めないよ―! 無理ー!」と怯えている。



 ……だめだこいつ、ゼッタイ頭が回ってない。

 こんなの無理して飲む必要ないぞー。やめとけなー。



 教えてやりたいけど、エリナさんが監視している手前、下手に動くと俺が巻き添えをくらう可能性が高いから、流石に動けない。



 怯えて飲めずにいるリオ。

 それを見かねたミホちゃんは、俺に聞こえるようにリオに耳打ちした。



「リオちゃん、やっぱりもう飲めないんだー? じゃあ、ずっとお兄ちゃんのこと『お兄ちゃん』って呼び続けるの、決定ね?」



 おいおいミホちゃん! このタイミングでその発言はパンチ力が強すぎるだろ!



「……無理っ! それだけは、ぜったいダメー!」


 リオは挑発にまんまと乗ってしまい、そそのかされるがまま、紙コップの中のウイスキーをぐいっと一気に口に含んでしまった。




 そして口に含んだまま、ピタッと動きが止まっている。



 ――え? お前、それ全部飲むの? さすがにやばくない?



「お、おい! 大丈夫か!? 無理して飲まなくても――」



 そう言いかけた瞬間。



「ううううううう、やっぱ無理ぃ……」



 リオは今にも泣き出しそうな顔をして、口をぱかっと開くと。

 ドュバァッと唇から滴らせてらせてウイスキーを紙コップの中に戻し。


 そのまま俺に紙コップを渡してきた。





 ――って、こんなの飲めるかぁーーーーー!!!!!!

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