第24話 覚醒
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※お酒は二十歳になってから。
※お酒はおいしく適度に飲み方を考えて楽しみましょう。
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降り注ぐ『バップ』コール。手渡された茶色い液体こと、ウイスキー。
なんでコールしてくる人はこんなに嬉しそうな顔をしてるんだろう。
ショットグラスに注がれたウイスキーのニオイをかぐ。
ウッ。なんだろう、ぜったいに美味しくないニオイがする。ニオイでアルコールを感じる気がする。
とはいえ、グラスの半分しか入ってないし、そこまで量は多くない……よな?
ショットグラスには、優しいのか容量が見て分かるように線が入っていて、半分の量で30ccが入っているようだった。
まぁ、さっきまでストゼロを紙コップいっぱいに注いで飲んでたし?
実際たいしたことないって思うけど? うーん……。
みんなからのバップコールを浴びながらも、飲むのを躊躇していると。
「おっそい! 早くしてよ!」
隣でリオが、俺が持っているグラスをぐいっと口につけ、無理矢理飲ませてきた。
おい、やめろ! まだ心の準備が――。
割っても冷やしてもいない、原液のウイスキーが一気に口の中へ入ってきた。
――な、なんだこの味!!!
ガソリンみたいなガツンと来る感じと、木とか舐めてるようなニオイと味! 渋い!!!
そしてなにより! アルコールがキッツイ!!!
舌と口内がビリビリする! 痛い!!!
飲み込もうとすると、喉が焼けるように熱い! もっと痛い!!!
これがウイスキーってやつなのか!?
ていうか、こんな一気にウイスキーって飲むものなのか!?
こんな飲み方、絶対間違ってる!!!
ニオイも味もアルコールも、まさに罰!!!
なんとか飲み込んだが、顔がシワシワになってしまうくらいマズイ。
思わず「ウエェェェ!」と叫んでしまった。
周りを見渡すと、みんながニコニコして俺のことを拍手している。
なんちゅー奴らだ! 俺が苦しむ様子を見て楽しみやがって!
最初から俺がこういうリアクションすることを知ってたのか!
今はとにかく口直しがしたい! ずっとこの味が残って消えないし、舌がずっとビリビリし続けてる。 何か濃い味の飲み物で、この味をかき消さなくては!
――周りを見渡すと、近くに紙パックのコーヒー牛乳が。
もうなんでも良いから飲まなきゃヤバイ!
俺は急いで近くの紙コップにコーヒー牛乳をドバっと注ぐと、一気に口に含んでビリビリしている舌と口内に触れさせ、ゴクリと飲み込んだ。
すると、コーヒー牛乳のミルクの口当たり、コーヒーの香り、甘ったるい味が俺の口の中の害を全てを中和してくれた。
ウイスキーの後味もほとんどない。
神! コーヒー牛乳、神すぎる!
ふぅ、と一息付くと。
流石に俺は虫の居所が収まらず、マナミさんに抗議した。
「ちょっと、マナミさん! なんちゅーもん飲ませてるんですか!」
「だからー、罰ゲームだって言ったじゃーん。 『チェイサー』も用意しないで飲んじゃうんだもん、びっくりしちゃったー」
チェイサー? もしかして、ウイスキーを飲むときに一緒に飲む飲み物のことか?
そんなの初めて飲むんだし、言ってくれなきゃ分かんね―よ!!!
ていうか、本来美味しい飲み物なんだろこれ? ちゃんとした飲み方教えてくれよ! ウイスキーがトラウマになるわ!
ワイワイパラダイスが始まったときから与えられる情報が少なすぎるし、理不尽に飲まされ続けるし、陽キャになるのってこんなに大変なのかよ……。
だが、ウイスキーのアルコールが回ってきたのか、なんだか気分が明るくなってきた。
頭と胃がポカポカする。けど、不思議とイヤじゃない。
なんだか、元気になってきた気がする……!
渋い顔をしていた俺を見たエリナさんは、ケラケラと笑いながら「あれー? バディ制って終わったんだっけー?」とマナミさんに問いかけた。
「あ、そういえばまだ終わってないんだった! リオちゃーん? はい、お酒!」
無防備だったリオ。呼びかけられて、目を丸くしている。
「え? ワ、ワタシも飲むんですか? ……いや、無理! 無理無理無理無理無理無理!」
まさかこの流れで飲まされると思っていなかったのであろう。
無理無理言いながら、手をものすごい速さで横に振って無理アピールをしている。
俺のリアクションを見ていたからか、リオは怯えてマナミさんからショットグラスを頑なに受け取ろうとしない。
「なんでよー、ルールなんだから飲んでよー」
「イヤです! 無理無理無理無理!」
……なんだよ、この押し問答。
見てるとなんだか無性にイラついてきた。
俺には飲ませといて自分は飲まないとか、いい度胸してんな!!
「おい、リオ……。全部お前のせいでこうなったんだからな? バディ、責任とってもらうぞ!」
俺はマナミさんからグラスを受け取ると。
リオの口にぐいっと当てて、無理矢理流し込ませた。
「んー! んー!」
「早く飲み込めって!」
鼻をつまんで口の中に含み、飲み込もうとしないリオを一蹴すると、ようやく飲み込んだ。
「……ウエェェェエエエ!!!」
初めて飲んだのであろう、リオも同じようなリアクションをして、そばにあるコーヒー牛乳をゴクゴクと飲みだした。
よし! ざまぁみろ! 散々俺のことバカにしやがって、いい気味だ!
……あれ、待てよ? 飲ませ合いする勝負、まだ続いてるよな?
俺はミホちゃんの方をバッと向くと。
まったく目を合わせようとせず、ピーピーと口笛を拭いていた。
「あれ? ミホちゃん、俺にさっき何て言ったか、覚えてるよね?」
「ぇえ? な、何のことかなー? 覚えてないなー? お兄ちゃん、なんだか怖いなー?」
「そっか、覚えてないんだ? 残念だなぁ、思い出させてあげないとだね」
ミホちゃんのショットグラスに、ウイスキーを並々と注ぐと。
「はい、ミホちゃん。勝負、続けるんだよね?」
「えーっと、お兄ちゃん。ウイスキーなんて、たくさん飲んだら危ないよ? 本当に続けるの?」
頑なに飲もうとしないミホちゃん。
どいつもこいつも……!
「質問を質問で返すなあーーーっ!!」
俺はミホちゃんの口にグラスをビタッと付け、無理矢理口の中にウイスキーを入れ込んだ。
俺、アルコールにより、覚醒。
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