第23話 罰符
***
※お酒は二十歳になってから。
※お酒はおいしく適度に楽しみましょう。
※登場人物が多くなってきたので、各メンバーの登場話を再掲します。思い出していただけると幸いです。
・ハルカ:2話
・リオ:4話
・ミホ:6話
・エリナ:9話
・マナミ:15話
***
……痛い。リオの鉄拳パンチ、痛すぎる。
酒も入っているせいで、頭が余計にグワングワンする。
俺、何も悪いことしてないのに!
俺のことを倒してきたのはリオだったのに!
ていうか、俺が殴られている状況なんて見られたりしたら、余計に怪しくなるんじゃ……。
この光景を全て見ていたマナミさん。
呆気に取られていた様子だったが、何かを悟ったらしい。
殴られて吹っ飛んだ俺のそばに来て、笑顔で囁いた。
「ヨウくーん? ウチのリオちゃんに手出すなんて、良い度胸してるじゃないの。これ、タダで済むと思ってるのかなー?」
「イテテ……ち、違うんです! だからコレは俺のせいじゃないんですって、事情聞いてくださいよ!」
「ふーん、この期に及んで言い訳? まぁ、後で詳しく聞いてあげなくもないけどぉ……」
「ほ、ホントですか? ありがとうございま――」
俺の言葉を遮るように、マナミさんは俺の口を鼻を手で塞いできた。
え!? イキナリ!? く、苦しい!!!
「でもー、飲み会中なのに戻ってくるのは遅いわ、ウチのリオちゃんを相手取って色々と見せつけてくるわ、もう完全に
ひいぃ! こ、殺される!!! このまま窒息死させられるぅ!
申し訳ございませんでした! マナミさんのお気に入りのリオに絡んだりなんか、もうしません! 俺、何も悪いことしてませんけど、申し訳ございませんでした!
――口を塞がれているので、モゴモゴと叫びながら必死に謝っていると。
マナミさんは俺の口からパッと手を離し「はい、2人とも行くよー」と声をかけ、そのまま俺とリオの腕を引っ張ってズルズルとリビングへ引っ張っていった。
痛い痛い痛い! 扱いが雑すぎませんか!?
ていうか、大事にしているリオのことも、そんな雑に引っ張って大丈夫なんですか!? リオもかなり痛そうにしてますよ!?
こうして俺たちはリビングに戻されると。
マナミさんは、リビングにいるみんなに呼びかけた。
「はい! じゃあそろそろストゼロもだんだん無くなってきたことだし、次のお酒いっちゃおー! ミホちゃん、そこのビニール袋から瓶を出して」
……へ? 次のお酒? まだあるんですか?
ミホちゃんが言われたとおりに瓶を取り出すと。
何やら茶色い液体が入っている、透明な瓶が出てきた。
引きずられてリビングにやってきた俺たちは立ち上がってローテーブルに近づく。
描かれたラベルを見てみると、そこには帽子を被ったヒゲのおじさんのイラストが。
「えーっと、マナミさん? コレって、何のお酒ですか?」
「あれ? このお酒知らないの!? これはね、ウイスキー」
「う、ウイスキーっすか!?」
――ウイスキー。
後で調べたんだが、大麦、ライ麦、トウモロコシなどの穀物を、麦芽の酵素で糖化し、アルコール発酵させて蒸留したものらしい。
種類にもよるが、アルコール度数はだいたい40%ほどのものが多い。さっきのストゼロは9%だったから、その4~5倍はある。
少量のウイスキーを炭酸水とかコーラとかジンジャエールとかで割って飲む「ハイボール」っていう飲み方なら、よくテレビのCMとかで見かけるけど……。
「マナミさん、まさかウイスキーを罰ゲームにしないですよね?」
「ん? するよ?」
「えーっと、これ、もちろんコーラとかで割って飲むんですよね?」
「え? 何言ってるの? 割らないで飲むに決まってるじゃん」
……直接飲む、だと!?
直接ってことは、割らないで飲むってことですか!?
アルコール度数、40%くらいありますよ!?
飲んだこと無いから分からないけど、それって飲んで良いんですか!?
いや、待てよ?
大きな氷を入れたグラスに、少量のウイスキーを入れて飲む「ロック」っていう飲み方で、ちびちび飲んでる様子はドラマとかでも見たことある。
もしかしてそういう飲み方するのか? それなら、まだ飲める気が……。
「あ! そしたら、ロックで飲む感じですか!?」
「いやいや、氷なんてどこにあるの? ストレートで飲むに決まってるじゃん」
……はい!? ストレートって、正気ですか!?
さすがERINA'S HOUSE、飲み方も恐るべし。
とはいえ飲んだことが無いから、どれだけヤバい飲み方なのかはよくわからないけど。
一つだけ言えるのは、瓶を取り出したミホちゃんが、瓶を見て「うわぁ……」とドン引きした顔をしていたから、きっとこれはヤバい。
このお酒、ストレートで飲んだらアカンやつや。
罰を受けるのがますます怖くなってきた……。
恐る恐る席につくと、マナミさんは俺を指さして意気揚々と声をあげた。
「はい! みんな聞いてー! さっきね、2人のことを迎えに行こうとしてリビングを出たら、廊下でヨウくんがリオちゃんのことを床に押し倒して襲おうとしてましたー! みんな、ヨウくんのその行動、罰符だよねー!?」
えええええ!? このタイミングでまさかの暴露!? 公開処刑すぎるんだが!
……てか、事実と違うし!!!
「ち、違うんです! そんなことしてません! 弁解させてくだ――」
誤解とを解こうと話し出したのも束の間、一斉にヤジが飛んできた。
「ヨウくん? いくら私の家がイケてるからって、そういうのは部屋で致してよねー? はい、罰符ーっ!」
「ヨウさん、私はずっと我慢してるのに、流石にそれはお見苦しいです。 罰符です」
「お兄ちゃん! アタシを差し置いて、そんなことするなんてひどいよ! 罰符ーっ!」
ダメだ、完全に信じ込まれてる!!
「ち、違うんですって! あれは事故で! リオの相談に乗ってたときに、リオに肩をグワングワン揺さぶられて! リオに思いっきり引っ張られて、たまたま転んじゃったんですって! なぁ、お前からも言ってやってくれよ!」
俺はちらっとリオの方を見ると。
リオは腕を交差させ両手で掴み、怯えた表情をしながら「ヘンタイ」とつぶやいた。
うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
ふざけんなああああああああああ!!!!!!!
マナミさん、いつの間に持ってきたのだろうか。透明なショットグラスを6つ分テーブルに置き、ウイスキーを半分ほど注ぐと、俺に差し出してきた。
そして。
「バップー、バップー、ビー・バップ♪ バップバップバップバップビーバップ♪」
マナミさん、エリナさん、ハルカさん、ミホちゃんが、手拍子をしながら何やら揃って歌い始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます