第17話 呼ばせない
***
※お酒は二十歳になってから。
***
マナミさんは空いたグラスをゆらゆらさせながら、物足りなさそうな顔をしている。
「ねぇねぇハルカさーん、もうスパークリングは無い感じー?」
「はい、ウェルカムドリンクだったので、もうこれで終わりです。あとは、ワインセラーの中からご自由にお取りください」
「おっ、いいねぇ! じゃあリオちゃんには、白と赤、どちも飲んでもらいたいからウチが選んであげるね」
ヘラヘラとしながら、マナミさんは調理場に行き、調理台の下から高そうな白ワインと、よく見る深さのワイングラスを取り出した。
――ていうか、ワイン専用の冷蔵庫まであるのかよ! さすがERINA’S HOUSE、恐るべし……。
「リオちゃん、大丈夫? 嫌だったら断ってもぜんぜん良いんだよ?」
一気に飲んでいるリオの様子を見て心配になったのか、ミホちゃんが気にかけている。
「はい、大丈夫です。そんなことより、こんな奴に負ける方がイヤなので」
リオが俺の顔をじぃっと睨みつけてきた。
いや、だから何で俺と競ってるみたいになってるんだよ!
「そっかぁ、ならいいけど……。お兄ちゃんも、大丈夫? 無理してたら、アタシが飲んであげるからね?」
「う、うん、大丈夫! すごく美味しいし、無理して飲んでるわけじゃないよ」
「それなら良かった! さすがお兄ちゃんだねっ!」
ミホちゃんはニコッと微笑んだ。
ミホちゃん、優しいなぁ! 俺のことも心配してくれるなんて。あぁ、ミホちゃん、マジ天使!
優しさに感動していたその矢先――。
「もう! さっきから、お兄ちゃん、お兄ちゃんって!」
いきなりリオが、ドンッとテーブルを叩き、割って入ってきた。
「そんなことよりミホさん、あんまりお酒進んでないですが、良いんですか? こんな男にも負けてますし、ワタシにも負けてますよ?」
この女、正気か? 気遣ってくれた天使にまでケンカふっかけてきやがった! ていうか、何でここまで競いたがってるんだ?
「え? アタシはただ普通に飲んでるだけだけど――」
「だいたい、何でコイツが『お兄ちゃん』なんですか? いきなり会った人をお兄ちゃん扱いなんて、訳がわからないです」
あ、確かにそれは一理あるな。
「なので、ワタシに勝つまでは、お兄ちゃんとは呼ばせません。あと、ついでにコイツを潰さないと、お兄ちゃんとは呼ばせません!」
……はい? 何を言い出してるんだコイツは。
ていうか、俺、巻き込まれてね?
やるなら勝手にやってくれよ、俺を巻き込むなよ! 潰すとか怖すぎだろ!
「え~、それはヤダ! お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん! ……そんなこと言うなら、アタシだって本気出しちゃうよ?」
え!? ミホちゃん、乗り気なの? 待ってくれよ!
そもそも勝負なんかしたくないし、天使に酒で潰されたくなんかないんですけど!
「良いじゃん良いじゃん! さすがリオちゃん、良い提案してくれるねー! 勝負するなら、やっぱり白ワインは止めておこっか」
うわ、マナミさん、火に油を注ぐように割って入ってきやがった!。
マナミさんは白ワインをワインセラーにしまうと、パンパンに詰まったビニール袋を持地歩く。ダイニングテーブルをそのまま通り過ぎ、逆サイドにある大きな大理石のローテ―ブルにガラガラッと置いた。
「どうせ飲むなら、いつものこっちの卓で飲もーよ!」
「へぇー、なんだか楽しそうじゃん! ねぇねぇ、私も混ぜてよ」
「エリナさんがやるなら、私もやります」
まさかのエリナさんとハルカさんもノってきた!?
「はい、じゃあみんな! 冷蔵庫からジュース出すから、運ぶの手伝ってね」
エリナさんは号令をかけると、ハルカさんとミホちゃんはスッと立ち上がって冷蔵庫の方へ行き、テキパキとペットボトルや紙パックを運び出した。
お茶やスポーツドリンクなどのペットボトルに、オレンジジュース、りんごジュース、コーヒー牛乳のパック。
そんなにたくさん持ってくの!? あれ、お酒を飲むんじゃなかったっけ?
呆気にとられて、呆然と座っている俺とリオ。
エリナさんは「はい、じゃあ君たちは料理とお皿運んでねー」と指示してきた。
え? もうここで料理食べないの?
ていうか、最初からこうなる予定だったなら、ダイニングテーブルにみんなで席を囲んだ意味あった?
陽キャたちの考えることはよく分からん……。
言われたとおり、俺は料理が盛られた皿を持って運んでいくと、ローテーブルの上には何やら”すごろく”が置かれていた。
すごろくのタイトルを読んで見ると、『ワイワイパラダイス』と書かれている。
……ワイワイパラダイス、だと?
陽キャたちは、そんなぶっ飛んだ名前のすごろくをワイワイやって、楽園のような日々を過ごしているとでもいうのか!?
リビングの扉を入って右側、大きな大理石のローテーブルと、白い大きなコの字型ソファの方へ一同が集まると、コの字になぞらえて全員がソファへ着席した。
奥から、マナミさん、エリナさん、ハルカさん、ミホちゃん、リオ、俺。
その中心にあるローテーブルの上には、「ワイワイパラダイス」というすごろくと、料理や紙コップ、ジュースたち。
そして、缶や瓶が大量に入っているであろうが中身の分からない謎のビニール袋。
一体、これから何が始まるというのだろうか――。
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