第14話 歓迎会

***

※お酒は二十歳になってから。

※登場人物が多くなってきたので、各メンバーの登場話を再掲します。

・ハルカ:2話

・リオ:4話

・ミホ:6話

・エリナ:9話

***



 リビングのドアを開けると。


 正面にある大きな窓に、大きな弾幕が貼り付けられ、そのまわりには風船がたくさんデコレーションされていた。

 

読んでみると『リオちゃん、ヨウくん、ようこそERINA’S HOUSEへ!』と書かれている。


 そういえばここの館、『ERINA’S HOUSE』っていうんだった。ここに来るために住所検索したときに打ち込んだけど、エリナさんの所有する家っていう意味だったのか。


 俺が自宅の住所書くときにも『ERINA’S HOUSE 202』って書くのか……。

 ほんのちょっとだけ、恥ずかしいかも……。



 そんなことを思っていると、ミホちゃんもリビングに入るやいなや「隊長!主役、連れてきました!」と声を張り、右側に向かって敬礼しはじめた。


「おっ! ミホ軍曹、よくやった!」


 ダイニングテーブルに座るエリナさん、前髪をガバっと上にかきあげると、ミホちゃんに敬礼を仕返した。

 きっとミホちゃんの扱いに慣れてるんだろうなぁ。


 ハルカさんは調理場に立ち、無表情でこちらをちらっと見ると、引き続き調理に戻った。

 そしてあの忌々しき女・リオは、席について呆れたと言わんばかりの表情で俺を睨んでいる。



「す、すみません! 遅くなりました!」


 俺は急いでダイニングテーブルに駆け寄り着席した。



「遅いどころじゃないんですけど。アンタ、正気? ていうか、ウチの横の席に座んないで、キモいから」


 リオが俺をジロジロと見てくる。


「し、仕方ないだろ。ここが俺の席みたいなんだから」

「ふんっ。……ていうか、アンタも主役の会なのに、30分も遅刻するとかありえなくない? 時間にルーズとか、マジで無理なですけど」



 くっ……。これについては、弁解の余地がねぇ……。



 やり取りを見ていたエリナさん、苦笑いして「まぁまぁ」といなしてくれた。懐が広いお方だ……!


「ていうか、もう2人は面識あるんだ? もうすっかり仲良しみたいだね」



「「ぜんぜん仲良くない!!!」」



 同じセリフが、ずれもなくリオと重なってしまった。

 うわ、ハモった! ハモってしまった! 絶対またコイツにキモがられる!



「ハハ、そうなんだ。んーまぁ、これから仲良くなっていくと思うし、今日は2人がどんな子なのか、たくさん聞かせてよ!」


 エリナさんは苦笑いすると、スーツにエプロン姿で調理しているハルカさんを「おいでー」と呼んで手招きした。



 無表情だったハルカさん、エリナに呼ばれるやいなや、とてつもなく笑顔になって、小走りでエリナさんの横に座ってべったりくっついた。


 おいおいハルカさん、他の人の前でもそんな感じなのかよ。




 テーブルには、向かって右からミホちゃん、エリナさん、ハルカさん。

 そして反対側にはミホちゃんの正面に俺、そして隣にリオ。そしてその隣には食器とワイングラスが置かれている。


 あれ、そういえば住人って全部で4人だよな。エリナさん、ハルカさんを覗くと、もう一人はまだ来てないのか、それとも参加しないのか――。


 まさか、亡くなったドルオタ教祖兄貴の席、とかは言わないよな? もしそうだったとしたら、リオ発狂するぞ?




 テーブルの上には、美味しそうな食材ずらり。


 色鮮やかな野菜がたくさん入ったサラダ、バジルソースのかかった白身魚のカルパッチョ、バラのかたちに整えられた生ハム、大きくて分厚いローストビーフ、カキの貝殻の中に詰まったグラタン、……などなど、オシャレな料理が並んでいる。

 ハルカさんも今まで調理場で作業していたから、まだ料理が出てくるのだろうか。


 田舎でザ・家庭料理しか食べてこなかった俺からすると、とても豪華なラインナップ。めちゃくちゃ美味しそう!!!


 そして目の前には細長いワイングラス。……あれ、そういえば飲み物は? ジュースとかもらえるのかな?




 ――そう思った瞬間。



 ポンッ!!!



 大きな気持ちのいい音がした。

 驚いて音がした方を見ると、ハルカさんがスパークリングワインのフタを開けた音だった。



 おお、これがスパークリングワインか! いい音するなぁ!


 そしてハルカさんは立ち上がると、俺たちが座っている方まで周りこんで、目の前の細いワイングラスにジョボジョボと注いできた。




 ……あれ? これってお酒だよね? ジュースは? もしかして、これ今から飲むの?



 そわそわしている俺とは対照的に、リオは平然と受け入れている。


 えええ? 良いの? 俺ら、飲んじゃっていいの?




 全員分が注ぎ終わると、エリナさんはニコっとして口を開いた。


「よし、じゃあ全員分の飲み物も入ったし! 2人とも、ERINA’S HOUSEへようこそ! これからいっぱいたくさん思い出つくりましょう! かんぱーい!!!」



「「「「かんぱーい!!!」」」」



 みんなが一斉にグラスを斜めにして、スパークリングワインを口に流し込んでいく。



 え、まって、みんな平然と飲んでますけど。

 

 ボク、飲んで良いんですか? お酒、初なんですけど!?




 ――でも、俺だけ飲まないのも場の雰囲気が冷たくなること間違いない。



 その場の流れに身を任せ、俺は初めてのお酒、しかもスパークリングワインに口を付けたのであった。

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