第2話 俺だけ!?
俺の前に現れた美人。身長は結構高く、180cmの「ノッポさん」である俺の顎くらいまである。
ロングヘアーに前髪パッツンで、髪をポニーテールにくくっている。腕や首、脚も細く、モデルみたいだ。
目や眉は優しそうな顔立ちだが、鼻が高くあごもシャープなので、外人のようにも見える。
スーツ姿がより大人の女性感を彷彿とさせている。
「うわぁ、めっちゃきれい……」
思わず声に出てしまうくらい、カッコよくてキレイな女性。
その人は、俺に気づくと近づいて声を掛けてきた。
「えっと……日笠ヨウさんですか?」
近くで見ると、背筋がビッと伸びていて、余計にカッコいいオーラが溢れている。
20代か30代か分からないが、大人の色気がムンムンと漂っている。
「は、はい! そそそ、そうでし!」
俺は出会い頭早々、陰キャモードに突入し、思いっきり緊張して噛んでしまった。
やべぇ、女子と話すのなんて久々すぎる。心臓バクバクしてきた。
「初めまして。私、千代田ハルカと申します」
そう言うと、千代田さんはスッと懐から名刺入れを取り出し、俺に名刺を渡してきた。
「あ、ああ、ありがとうございます」
差し出された名刺を、震える手で丁重に受け取る。
名刺には、『株式会社EOコーポレーション 秘書』という肩書が書かれていた。
「あ、あの、管理人さんって……」
「あぁ……、私がこの物件を管理しております」
ってことは、俺がネットの情報を見て電話を掛けたときの相手も、千代田さんだったのか。
「あ、ああ、なるほど、そうだったんですね。秘書をやりながら、管理人もされていると。すごい……」
「いえいえ、こちらも業務範囲内なので」
秘書の仕事も大変なんだなぁ。
そういえば、この淡々と話す感じが、なんとなく電話の受け手側だった人と一致している気がする。
思い返していると、確認しておきたかったことを思い出した。
「あ、あの、そういえば、お電話したあとから聞きそびれてたんですけど……、この物件って、お電話で伺ったとき、確か満室でしたよね? 今って何人住んでるんですか?」
「あぁ、そういえばそうでしたね。今年は退去された方が多く、現在は日笠さんを含めると4名しか入居しておりません。私も仕事上、1室借りているのと、オーナーも住んでいるので、正確には合計6名ですが」
「あ、そうだったんですね。6人か……」
あれ、思ったより少ないな。
――って、千代田さんも一緒に住んでるのかよ!
こんなキレイな人と同じ屋根の下、一緒に暮らせるなんて。大学受験、頑張って良かった!
6人ということは……、肝心なこと、聞きそびれてた。
「ち、ちなみに、今の男女比って――」
「1対5です」
「……へ?」
「正確には、男性1対、女性5です」
「え。てことは、もしかして――」
「男性は、日笠さんお一人のみです」
「……え、ぇえええええええええ!!!!!!!!!」
女子とほとんど関わってこなかった18年間。
どうやら、そんな俺にも春(もしくは修羅?)が訪れたらしい。
「あの、男子って、……俺一人だけですか!?」
「そんなに驚くところでしたか? ……とりあえず立ち話も何なので、中へ入りましょうか」
門は両開きの扉になっている。
「門を開けるときは、後ほどお渡しする鍵でこちらから解錠してください」
千代田さんは、驚く俺のことは一切気にせず、インターホンと0~9の番号が描かれた押しボタン付きオートトックの下にある鍵穴に、鍵を差し込んでひねる。
すると、門の扉がガチャンと音を立て、モーター音とともに自動で開きだした。
千代田さんはスタスタと、門の中へ入っていく。
案内されるがまま、中に入っちゃってるけど。
ちょっと待て、俺、ここに住んで大丈夫なのか!?
俺以外、住人は全員、女子だと?
満室の物件って聞いてたし、せめて男子1人くらいは住んでると思ってた。
俺、何かあったとき、誰に相談すれば良いんだ?
俺が入居するって聞いたとき、住人の皆さん、どんな顔してたんだ?
イケメンが入ってくるとか想像していたとしたら、本当にごめんなさい。
ノッポさんって呼ばれるくらいのモブ陰キャ野郎が入居します。
全然女の子と喋らず通ってきた人生で、女慣れを全くしていない俺が、こんなところに入居しても大丈夫か?
住人の女の子たちにいじめられて、ますます女嫌いな陰キャになる気がしてきたんだが?
もしかして、俺のこと即座に追い出す算段組まれてるんじゃ……。
陽キャになれるかもって思い、住もうと決意したシェアハウス。
女性に対してネガティブ思考な俺は、悪いことばかりが思い浮かんだ。
これから陽キャになれる可能性、皆無……?
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