第17話 未知との遭遇
真夜中の出来事であった。その辺にあったボロ布で暖を取るようにして硬い床で眠っていた僕は急な尿意に襲われて目を覚ました。
隣では山田さんが微かに寝息を立てて眠っている。
僕は山田さんを起こさないようにそっと起き上がると、目が暗闇に慣れるのを待ってから近くの瓦礫の山まで行って小便をした。
用を足して戻ろうとした時だった。瓦礫の山の向こう側が僅かに光っていた。青白い、どちらかといえば人工的な光。
何だろうか?
僕はその光の正体を確かめたくて、目の前に聳える瓦礫の山に手を掛けて登りはじめた。一体どこから来たのかも分からないようなグランドピアノや、スコップやエレキギターや、ジープのラングラー、それらの残骸の山を僕は必死になって登った。何度も足を踏み外しそうになりながら、僕は息を切らして瓦礫の山の頂上にたどり着く。
そこから向こう側の景色を見た。僕は目を見張る。
巨大な銀色の球体がそこにはあった。金属で出来ているように見えるその球体は無機質な青白い光を放ち、その場所を不気味に照らし出していた。
なんだ、あれは‥?
僕は瓦礫の山頂から地面に佇むその球体を見下ろすように観ていた。その球体はよく見ると地面から数センチのところで浮遊している。やがて、球体にまっすぐな裂け目が入り、次の瞬間眩いばかりの青白い光と共に球体が割れ始める。
僕は球体の様子を呆けた顔で見ていたが、球体が割れはじめた瞬間に身の危険を感じ、咄嗟に球体側から死角になるように瓦礫の山の影へと身を隠し、球体の様子を覗き見た。自分の心臓の音がバクバクと鳴り響く。僕はその場からすぐに逃げ去りたいと思ったが、僕の目線は巨大な銀色の球体から張り付いて動かなかった。
やがて球体の中心部から、ゆっくりと回転しながら人のような影が姿を表す。青白い光の影になってよく見えなかったが、そいつは肘掛けのついた椅子に座っていた。
僕はじっと目をこらす。あれは‥‥!
僕は信じたくない気持ちでいっぱいだった。だけど自分の持ち得る知識を繋ぎ合わせると、答えは一つしか見つからなかった。でも、そんなこと‥あるはずがない!!
その人影が腰をかけている肘掛け椅子はよくよく見ると何かを操縦するための、言うなればコックピットのように見えた。肘を置く場所には明らかに球体を操縦するためのボタンが無数についている。やがて球体から放たれる青白い光が徐々に弱まっていく。僕は操縦室と思われるその椅子に座る人の姿を見た。
まるで子供が遊びで描いたかのような大きな瞳。その二つの瞳だけで、およそ顔の半分を占めていた。頭には髪の毛が一本も生えておらず、毛細血管のようなものが浮き出していた。肌の色は、気色の悪い青色をしていた。
間違いない。あれは、宇宙人だ。
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