第7話 野良犬
食事の問題は差し当たって緊急な問題の一つのはずだった。この荒廃した世界に食糧というものが存在するかどうか怪しい。
しかし、そこで僕の中で矛盾が生じる。このまま食事を取らずにいたら、自分は空腹で死ぬのだろうか?そしたらもう一千万年も生きている必要はなくなる。
「お腹すいた。ご飯どうしよ。」
山田さんはその場にしゃがみ込んでお腹を抱えるようにして言った。
その瞬間、僕ははっとした。そうだ。僕は何が何だろうが一千万年生きなければならないのだ。それに僕は降り注ぐ隕石の中で生き残ったのだ。そんな簡単に死ねるとは到底思えない。
そこまで思考が行きついて、ようやく食糧の問題と本気で向き合う気が出てくる。
こういう時は川とか湖まで行って魚を取るのがセオリーなような気がする。いやいや、昨日も瓦礫の中から服が見つかったじゃあないか。もしかしたら、まだ民家に食糧だって残っているかもしれない。
「食料を探しに行ってくるよ。」
僕は立ち上がると、山田さんにそう言った。
「行かんといて。」
山田さんは言う。僕は彼女の方を見る。
「このままここに居てもご飯は出てこないよ?」
「またどっか行ってまうのいやや。」
山田さんは言った。僕はそう言われて戸惑った。内心僕もそう思っていた。帰ってきた時にまた山田さんが居なくなっていたらどうしよう、と。ただそんな風に思っていると思われたくなくて、僕はまた独りでいこうとしたのだ。
「じゃあ一緒に探しに行こう。」
僕達は2人で瓦礫の街を歩いた。遠くの方では、また眩いばかりの隕石が地上に向かって降り注いでいるのが見えた。一体いつまで隕石は降り続けるのだろうか。この地球が一片のチリも残さず粉々になるまで、この隕石は降り続けるのだろうか。
僕達は食べ物を求めて何時間と彷徨ったが、結局何も見つからなかった。衣服を見つけた家の瓦礫を探してみたが、食べられそうなものは何一つ残っていない。
魚が泳いでいないかと、学校近くの川へと足を運んでみたが、そこはすでに干上がってしまっていた。
僕はそうやって期待が外れるごとに、打ちのめされると共に今までの生活の有り難みを知った。何もせずとも食事はもちろんお菓子まで好きに食べれるのだ。そんな贅沢が出来ていた事が今ではすでに信じられない。
散々歩いて歩き疲れた頃、僕達は世界が変わってしまってから、初めて僕達以外の生き物と遭遇した。それは僕達と同じように泥まみれで食料を求める野良犬だった。
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