第2話 世界の終わりとエロい妄想
僕が科学実験室を訪れたその次の週から、世界の崩壊は始まった。まるで僕達が一千万年生きる薬を飲むタイミングを知っていたかのようだ。
青い空を見上げた時、長く伸びた無数の流れ星が人類史の終わりを告げていた。
直視できないほどに眩い光を放った隕石は、綺麗な銀色の弧を残して地上へと降り注いだ。地面はミルククラウンのように弾け飛び、それから真っ赤に燃え盛った。
遠くから悠長にその様子を見ていると、後からくる衝撃波で学校の全ての窓が一斉にバリバリに割れた。
泣き叫ぶ生徒の声。大声で何かを言っている先生。
全て目の前で起きていることなのに、僕にはまるで物事が全く違う世界で起きているかのようにぼんやりと淡く感じた。
だって僕はこれから、一千万年の時を生きていかなければいけないんだから。
やがて僕達が住む街にも隕石が落ちた。ちょうど生徒全員が校庭に避難し終わった後のことだ。先生達も流石に落ちてくる隕石まではどうする事も出来ずに、その輝く星を呆けた顔で見ていた。
そう言えば校庭に1人だけ姿がない人物がいた。科学の先生だ。みんなが口を開けて空を見ている時、僕は独り先生の身体の事を考えた。
大人の身体、綺麗な首筋と大きな胸、彫刻で形作られたみたいに綺麗なボディライン。
この前の口付けは不意打ちだった。
僕だって人とキスするのは初めてだったのだから、あんなのなしだ。
今度は先生の腰に両手を回して、もっとディープにしたい。それから‥
気づいたらあたり一面焼け野原であった。
僕が妄想を膨らませている間にみんな死んでしまった。後に残ったのは焼け焦げたクレーターと全裸の僕だ。とてもさっきまでここに学校があった場所とは思えない。
周りを見渡しても黒いクレーターと、辛うじて生き残った建物の残害ぐらいしか見当たらなかった。
「ひどいもんだ。何がおめでとうだ。」
僕は吐き捨てるようにそう呟いてから、とりあえず着るものを探す事にした。布キレでもなんでもいいからないものか。そうやって地面に目をやる。
地面は真っ黒なのに、黒ずみ方には所々違いがあった。本当に目を凝らして注意深く見ないと分からないけれど、模様のようなものが出来ている。
しばらく見ているとそれが人の形をしている事が分かって、その時初めて僕の周りには先ほどまで人がいたのだと実感した。その人形紋様はよく見ると一つではなかった。何十も何百も僕の周りにあるのだ。
急に胸が苦しくなった。
僕はこんな世界であと一千万年生きていかなければならないのだ。
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