第7話「ヘーイ!焼き鯖定食お待ちど」

 相波が食事を取りに行く後ろ姿を見ながら、大黒おおぐろ大地だいちは「で、どうよ?」と他の3人に問いかけた。


「相波をグループに入れるかってこと?」松景まつかげあきらが言うと、


「ふっ、入れるかって上からすぎ」と須藤すどう陽斗はるとがなだめる。「僕はいいと思うよ。なんか珍しいタイプだし。ねえテルマ」


「そうだぞアキラー、仲間はずれはよくない。」


「別に上から目線じゃないって。ノリが合わなかったらお互いに苦しいでしょってこと。つるみたいならつるみたい、嫌なら嫌って言ってくれる人じゃないとさ――あ、青山さん」


 須藤と新田から口々に突っ込まれて口をとがらせた松景は、視線をそらした先に件の青山あおやまかえでを見つけた。青山も名前を呼ばれて松景に気づいて切れ長の目を見開いた。


「あれ、松景……というか8組バド選択か。」


「よっす青山さん!」

「おっす。ねえテルマ、よっす誰にでも使うの?」

「ちなみに青山さん、こいつは大黒大地、ソフト選択の野球バカ。」

「松景コラ!」


「あは、キミら仲良すぎじゃん。知ってる知ってる。あたしらの野球バカがお世話になったみたいでごめんね~」


「ぜんぜんぜんほんと大丈夫!てか俺よりも――」

「ダイチがバグったー!」

「ダイチ一旦ストップ。その話もう聞いたから。」

「青山さんは席探し中?」


 松景が聞くと青山は肩をすくめて手に持ったお盆を見せた。


「そうそう。久しぶりに食堂使ったけど昼休み始まってすぐじゃないと混むの忘れてた。キミらは来るの早すぎじゃない?」


「着替える前に来たからな!」


「えーくっさー」


「おい!」

「もしよかったらここ使う?」


 松景がお茶だけ置かれた正面の空いている席を指し示す。


「まじかこいつ、友達売りやがった。」

「アキラ、それは流石に引く。」


「だいじょうぶ、あたしらあっちで決起会みたいなのやっててさ。」


「あー陸上部か」


「そそ。椅子が足りなかったから料理取りに行くついでに椅子も取りに来たの。奥の机の椅子もらってっていい?」


「もちろんです!おいダイチ、お嬢様が椅子をご所望だ!」

「へいへい」


 青山は礼を言って渡された椅子を受け取った


「キミらのもうひとりの友達かー。だれなんだろ?」


「ちょうど今歓迎会をしてたところ。」

「アキラがしてたのは歓迎会じゃなくて面接でしょ」

「これで5人揃ったんだ!」


「へー、今日加入したんだ。アガるね。」


「そうなんだよ!お、ちょうど来た!」


 大黒が手を挙げると、そこに現れた5人目が景気よく返事をした。


「ヘーイ!焼き鯖定食お待ちど――……」


 振り向いた青山と相波の目が合う。なぜか、残りの8組男子4人は空気が凍りついたように感じた。

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