中 ── …まで、もうそれ程時間がない
標的──先導のオーガーまでは、約80メートル。
人工筋繊維式アクチュエーターが増幅してくれるプロテクトギアの脚力を最大限に発揮させ、俺は80メートルを一気に詰める。
バイザーの先で、動きの止まったオーガーがまるで〝生き物のよう〟にたじろいだように見えた。HUDに情報が重ねられる。反対方向に伸びる連絡坑道の横の詰所
それはさておき、俺は
熱線による溶融破壊兵器である赤外線レーザーと違い、エキシマレーザーは照射対象を衝撃で粉砕するパルス発振レーザーだ。
オーガーの中枢部を護るセラミック装甲は一撃目で弾け飛んだ。剥き出しになった
「ウォーロード、先導の1体はケリをつけた」
俺は簡潔に報告をした。すかさずウォーロードの声が応えた。
『こちらウォーロード……よくやった、ローグ。……おいクレリック! まだ掛かりそうか?』
『──俺のガンじゃ、1発、2発じゃ無理だ……!』
俺はレシーバーが拾ったその声に、HUDの上に戦術マップを広げさせ状況を確認した。プロテクトギアのHUDは、
『──…ウォーロード、早く! そろそろオーガーが
いよいよレシーバーの拾うバードの声が上擦ってくる。
『──いま3発目! ええいクソっ、ダメだ……現在、チャージ中!』
クレリックの唸るような報告に、ウォーロードがレンジャーに叫ぶように指示を飛ばす。
『レンジャー、そっちで装甲を飛ばしてくれ!』
オーガーが
レンジャーが答えた。
『ダメです……ここからじゃ〝的〟が見えません…──射点を移動します』
レンジャーの応答を耳にしたときにはもう、俺は行動を起こしていた。
アンカーが主坑道の
自由落下に転じたギアのHUDがオーガーの赤いボディを捉えた。クレリックとウォーロードのギアの背も同じ視界の中にある。
通話を開いた。
「クレリック、
俺はこういうときに〝叫ぶ〟ようなことはしない。叫べば冷静さが失われる。冷静さが失われればあらゆる操作の精度が落ちる…──それは、
『…──解ったローグ……ここは任せた!』
派手な動きの割に揺れの少ない視界の中で、俺は照準のレーザーポインタの挙動を追った。同時に〝
このときの俺は、より接近しての必中を選択した……まだ〝その余裕はある〟と判断したのだ。
俺はオーガーから離れようするクレリックのギアの横に着地した。ここで床面をグリップしても勢いを減殺することは出来ないから、落下方向へのエネルギーだけ膝を使って逃がしてやる。進行方向への勢いはそれほど消えていないが、構わずに俺は正面のオーガーにレーザーガンを向けて引き金を引いた。撃った後、2、3歩足が出たが、それを助走にもう一度跳び上がる。
再び空中へと飛んだ俺の身体の下で、オーガーの中枢部を覆うセラミックの装甲は爆ぜ、飛んでいた。中から中枢機器の姿が覗いている。
と、オーガーの頭頂部──サボテンの
だが、パーティーにその動きに釣られる者は居なかった。
装甲を失い剥き出しになった内部を、すぐさまウォーロードが赤外線レーザーで灼いた。直後、レンジャーの放った対物ライフルの弾丸が、唸りを上げて炎を吹く内部構造を抉る。そうして最後に、チャージを終えたクレリックのレーザーが、燃え盛る内部基盤を粉微塵に吹き飛ばした。
リブートを終えたオーガーだったが、その直後に沈黙することになった。
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