第2話 出会い

「大好きな佐藤へ。これを読んでいる頃には、私はもう死んじゃってるのかな。佐藤なら死んでも大丈夫なんだけど、私はダメみたい。もう、これを書くのも限界になってきちゃった。最後に、佐藤にプレゼントを残したよ。きっと佐藤のことだから、今も泣いてるんでしょ? 涙を拭いて、私のプレゼントを探しに行ってね。あなたの愛するシャロールより」


「……」


 シャロールには、なんでもお見通しなんだな。

 僕が泣いてることも……。


 それにしても、プレゼントって……?


「父さん、もう読んだかな?」


「読んだぞ」


「母さんはね、ギルドに最初のプレゼントがあるって言ってた」


「そうか!」


 早速探しに行こう。


「ブレサル、ありがとな」

「これ、預かっててくれ」


 僕は足早に家を飛び出した。


――――――――――――――――――――


「父さんは、やっぱり母さんを愛してたんだなぁ」


 さっきまで暗い顔だったのに、家を出るときには明るい顔になっていた。


 けど……。


 最初のプレゼントってなんだ?


「ま、父さんが元気になったんだからいっか」


――――――――――――――――――――


「どこにあるんだろう……」


 ギルドに入っていく。


「あ、おはようございます!」


 同僚に声をかけられる。


「おはよう」


「今日は、お休みでは?」


 遠慮しながら、尋ねられた。

 同僚も気を使っているんだ。

 シャロールのことで、僕の気が滅入っていることは誰の目にも明らかだったから。


「いや、ちょっと探しものを」


「探しもの?」


「シャロールが残した……」


「あっ!」


「え?」


 なにか知ってるのかな?


「これですね!」


 ブレサルが持ってきた手紙と同じものを手渡された。

 まさか、シャロールはここまで手紙を預けに行ったのかな?


「ちょっと……そこで読んでいいかな?」


 家に帰るまで、待ちきれなかった。


「ええ、どうぞ」


 椅子に腰掛けて、開く。


「愛する佐藤へ。まずは最初のプレゼントだよ。ここは……言わなくてもわかるよね。私達が、最初に出会った場所。あのとき、私は偶然佐藤に声をかけたの。もし、少しでも時間がずれて佐藤に出会わなかったら、今この手紙を書くこともなかったんだろうな。私、この場所で佐藤と出会えて本当によかった。神様……いや、管理人さんかな? 素晴らしい出会いをありがとう。いつもあなたを見守っているシャロールより。追伸。次のヒントはリンゴだよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る