第2話 パーティーは危険がいっぱい
元妻から交際の申し込みが来たぞ!
俺は スマホが汗ばんできているのを感じながら メッセージを確認する。
アニメで 主人公がのど元を「ごっくん」と鳴らしたり体が震えたりするのは
本当に俺の体で起こっていることだった。
「もしかして やり直せるのかな・・」
ピッピッピっと
アプリ「ショートメッセージが届いています。」
トモちゃん(元妻)「交際を申し込んでくるなんてどういうつもり? それより、あなたもリタイヤするのね。意外だったわ。人生100年時代だからって、働きながら学生みたいに勉強してたじゃない?でも 頑張ってね。ホントはメッセージ入れるのちょっと 怖かったけど、あなたに申し込まれてちょっと嬉しかったのよ。あなたならきっとできるわ。幸せになってね バイバイ」
そうだった。初めに申し込んだのは俺の方だったんだ。
一票でも 申込件数が多くなればそれだけ目に留まるようになるからって応援する気持ちで申し込みをしたんだった。
返事は着たけど これってどうなんだ?
「なあ アプリ。バイバイって書いてあるけどこれってイケるのか?俺は高揚してしまって冷静に判断できないんだ。」
アプリ「解析します・・・・」
・・・
・・
・
アプリ「イケます\(^o^)/」
やっぱりそうか。冷静さを失っているだけかと思ったけど俺の勘違いだな。
アプリ! 俺決めたよ。
どうすれば 交際をスタートできるのかな?
アプリ「検索します・・・」
・・
・
アプリ「私こと アプリを完全購入していただければ交際をスタートできます。500万円ご用意いただくか。または毎日2時間、某検索サイトの配信する広告を死ぬまで見ていただければ 次のステップへ進めます」
500万か。。入会金と合わせて600万か。
でも昔の若い頃の俺だったらどう考えていたのだろう?そんなことが頭をよぎった。
妻と一緒だったときに 突然、600万必要だと言われたら 払っただろうか?
いいや 払わなかっただろうな。
でも 今は 今は胸の高鳴りが抑えられないんだ!
60歳なのに、年を取ってからというもの 涙もろくなったり洪水のように感情が溢れようとしたり
なんだか 心と体の年齢が逆なんだよな
老いぼれの暴挙をどうか・・許してほしい。
決めたぞ。NISAの一部を また解約してくることにした。
NISAを始めたばかりの時は運用とか株とかわからなかった。
でも 実際に始めてみると世界中の8,000社の会社の株式に数十円ずつ投資をしたりできる金融商品もあったりして 思った以上に安全だった。
そして税金がかからないから 複利運用という力が働くようだ。
これは 逆バーションのヤクザ映画の様な力で 例えば
1万円を全世界に投資して40年間 ほったらかしにしていたら4倍くらいに増えてたらしい。
俺は15年しか運用できなかったけどね。
でも NISAをやっていなかったら、そもそも この決断すらできなかったよ。
アプリ「おめでとうございます。アプリはあなた専属のアプリになりました。それでは処理を始めます」
・・・。
・・。
・
アプリ「〇月×日にパーティーが開かれますのでそちらへ参加していただきます」
それってまさか。パーティーにトモちゃん(元妻)が参加するのか?
ピッピッピッピ!!
トモちゃん「突然だけど 〇月×日にパーティーが開かれるらしいわ。あなたはメールとかチェックしなさそうだから連絡したの。絶対 参加するのよ!私はこれから パーティーのお誘いのメッセージに返信しなくちゃいけないの。はぁ・・件数が多すぎて心が折れそうよ。頑張ってね。私も頑張るわ バイバイ」
トモちゃんに会えるのか。。。つづく
パーティーの参加が決まってからの数日間は 俺、専属アプリとなったアプリは性格が変わった。
鬼コーチのように厳しくなって俺を指導してくれた。
スーツやネクタイの選び方や 清潔感を出すために美容院にいったり、
脱毛をしたり、なかなか 厳しかったけど ある日 コンパクトに小さく片付けることが得意になった。
アプリ「よくここまで、できました。これでパーティーに参加できます」
ピョンタ「いやいや 逆にこぎれいにする習慣が身について生活がスッキリした感じだよ。
でも 脱毛とかお金が結構かかっちゃったな。そしてお金を使う事ってこんなに辛いとは思わなかったよ。
」
そろそろ 貯金が少なくなってきた。
アーリーリタイヤするためにはこれ以上はお金を減らすことはできないな。
・・・パーティー当日・・・
会場はホテルのフロアで開催された。
丸いテーブルがいくつもあって その上に料理が置かれている。
きっと そのテーブルでお話しをするのだろう。
そして 飲み物を専門に置かれているテーブルがあって 中にはカクテルを自分で作れるように道具までそろえられている。
男性が女性へ カクテルを作ってあげたらモテるだろうな。
それにしても 男性の参加者が多いな。
黒っぽいスーツの男性たちの中に 赤やブルーの花がぽつらぽつらと咲いていた。
アプリ「確りしてください。トモちゃんを探しましょう」
おっとそうだった。トモちゃんは来てるのか??
見渡すけれど どこにもいない。
暫く探しているうちに 気が付いたけど男性の黒い塊の中心には女性がいるようだ。
ペンギンのコロニーみたいになってるな。
「あ! いた」
ひときわ大きなコロニーがあって 覗き込むと 笑っている彼女と一生懸命に自己アピールをする男性たちがいた。
顔を真っ赤にして・・息を吸うことも忘れて自己紹介し続ける男性たち・・。
パーティーが始まる前から 戦いは もう始まっていたんだ。
俺も声をかけなくちゃ! でもどうやって? 順番に並んでたらパーティーなんて終わっちゃいそうだ。
・・「やあ こんにちは、すごい行列の塊ですよね。笑っちゃいますよ! ああ 俺 ヒロヤっていいます。よろしく」
トモちゃんに何とか近寄ろうとコロニーをうかがっていると 後ろから話しかけられた。
急いでいるのに めんどくさいな。
後ろを振り向くと薄ら笑いのヒロヤってヤツがいた。 30代だろうか?
見た目がかなり若く見える。
ヒロヤ「ここだけの話・・ あなたも俺と同じ同業者の方ですよね? 身なりを見ればわかります。その清潔感のある顔。さらにスーツもビジネス用のカチカチ硬そうなスーツじゃない。だけど それなのにあなたの立ち居振る舞いは素人のパーティー参加者 そのものだ。だから わかったんです。ベテランの方ですよね?そうなんでしょ?」
同業者? もしかして アパレル関係の仕事だと思っているのか???
いいや 違うな。コイツのバラの花と犬を足したような顔は 結婚詐欺的な。そっちの臭いがする。
コイツ 危ないな。
離れようと思ったけど 薄ら笑いのヒロヤは俺の側から離れようとしなかった。
お酒を飲みながら参加者の男性をバカにするようなことばかり 話しながら上機嫌になっていくけど
俺の方は焦りしかない。
こうしている間にも トモちゃんがほかの男と付き合ってしまうかもしれない。
どうしたらいい?・・。
アプリ「お困りのようですね。お助けしましょうか?50万でお助けできます」
50万か・・50万ならまだ 「アレ」と「コレ」を我慢すれば まだ リタイヤできる金額だ。
ピョンタ「頼む」
アプリ「実行中・・・完了」
なんだ? 完了って? ってっきり アプリ機能を使ってトモちゃんを呼び出してくれるのかと思ったのに。
いいや 呼び出してくれたけど トモちゃんが返事できないのかもしれない。。。なんだよ。なあ アプリ、状況を教えてくれ。
アプリ「実行完了・・・司会書を変更することに成功しました」
ん? どういう事だ?
司会者「えー ええ おほん! 開催を前に盛り上がっているところ・・・ え!えええ!っと 黙れ!お前ら!! おっと失礼。ですが見てください。考えてください。あなた方が話しかけている女性の疲労困憊の顔を。秩序がないのはよろしくないかと思われますがいかかでしょうか?
ですが 男性の人数が多すぎるのはこちらの落ち度でもありますので 今回は特別に女性たちを募集してきました。それでは 女性たち!入りなさい」
ドアが開き きらびやかなパーティードレスを着た女性たちが入ってきた。
みんなハイヒールを履いていて 胸は凄まじいくらいに寄せてあげられている。
前から見れば 巨乳の谷間が拝めるが 横から見たらオッパイの下半分が崖のように無くなっている。
そして 会場からは淡い声が聞こえてきたし ガッツポーズしている男性もいる。
きらびやかな女性たちは 年齢なんて気にしないかのように気さくに話しかけて
あっという間に 半分くらいの男性たちをパーティー会場から連れ出して、どこかへ行ってしまった。
でも あれれ? 俺や ヒロヤには誰も声をかけてこないな。
近くまで来ても透明人間になったかのようにガン無視されていくぞ。
まあ あんな若い女性に声をかけられても、今回の目標とは違うからお断りするけどね。
だけど 男性のみんなもそれなりに会費を払っているはずなんだ。どうしてそんな選択ができる?
ヒロヤ「だいぶ 減りましたね。これで仕事がやりやすくなりますよ」
いいや 仕事はしないでくれ。
司会者「ええ。どうしようもない・・・連中は。っごほん! ええ 会場に残られました本物の紳士・淑女のみなさま。これより本当のパーティーを始めたいと思います。では挨拶を・・・・」
G男「ちょっとまて さっきの女はホステスだろ?銀座で見たことがあるぞ!お前たちパーティー主催者はサクラを使って恥ずかしくないのか?」
司会者「それが 何か?何か問題がありますか?」
参加者の中から不振がる様にざわざわとした声が漏れだし始めた。
司会者「資格のない者に退場してもらったまでの話です。ご理解いただく必要はありません。ですが結婚がどういうものなのかを考えてみてください。
熱い情熱に溢れて一緒になった20代。明るい未来が待っていると思ったら子供が出来て予想と違って忙しくなる毎日。
30代になって。ようやく子供の手はかからなくなり、やっと家族の時間とは別に夫婦の時間が持てると思っていたら住宅やマイカーローン。それに 子供が将来は私立高校や大学・今なら海外留学まで行きたいと言い出すかもしれません。親としての責任を果たすため、精一杯働き、奥さんは開いている時間にパートで働いて 晩御飯をブログにアップして副収入を稼ごうとする。当然二人の時間なんてものはない。
40代は 子供が家を離れて一人暮らしを始める。
だけど 現状は30代と変わらない。ローンという物は時間の前借に過ぎないのだから!
30代の頃に40代の人生を銀行へ売ってしまったことの代償は大きい。
会計の知識がない者なら 人生を売ってしまったことにすら気づかずに「二人きりになれたのに、どうして旦那は?妻は?冷たいのだろう??」と自問自答を繰り返す。「それでも 旦那と一緒にいる価値はあるのか?」と。
そうして ようやく50代。
子供が仕事に付き。また 結婚もする。20代前半に子供が出来て入れば孫の顔を見せてくれるかもしれない。
こうして本当の意味で二人の時間を過ごせるようになった時に 頑張ってくれた妻を想いやろう。旦那を想いやろうという絆が作られている事に気が付くのです。
それを・・それを・・ 奇麗な女性と一緒になれたなら人生が好転するのではないかと、自分の人生を他人任せにする行為。それは もはや病気なのです。
スティーブン・R・コヴィーの七つの習慣にも書かれていますが 変わらなければいけないのは自分の方なのです。
少しは ご理解いただけましたか? それでは パーティーのルールについて説明いたしましょう。
司会者の挨拶は長かった。
でも ルールは簡単で 女性たちは一人10枚のチケットを持っている。
A子「そうなん ふふふ」
B男「あはは でしょでしょ? 君には勝てないけどさ」
そして お話をしてこの男性が楽しいと思ったら女性は男性にチケットを渡す。
B男「え! A子ちゃんマジでこんなに チケットを貰ってもいいの?」
女性が何枚渡すかは自由。だから 意中の男性に10枚渡すっていうのもアリ。
A子「うん 待ってるから ふふふ」
でも 最終的にチケットの一番多い男性から女性に告白をする権利が得られるので・・・。
B男「やぁ C子ちゃん! 見てよ。このチケットの数。もうさぁ~ 話したいって女性が多くて困ったよ。オレ本当はC子ちゃんが本命なんだ。」
C子「こんなにチケットを貰える男性が 私なんかに声をかけてくれるなんて 嬉しいわ!はい 私もお話ししたいです。」
A子「。。。 B男さんに私のすべてをあげたのに・・」
男性にチケットを渡し過ぎると 裏切られてほかの女性に行かれてしまう可能性もあるので注意が必要だ。
そして パーティーが始まった。
トモちゃん「やっと見つけたわ!あなた やっぱり来たわね。ふふふ。お互い様だけどあなた老けたわね。でもその身だしなみは素敵よ! はい これあげるわ」
チケットだ。
目の前のテーブルに赤い切符のチケットを2枚置いてくれた。
トモちゃん「じゃぁ 私行くね 絶対勝つのよ!」
ピョンタ「 ちょっと まってくれ。お話をしないか?」
トモちゃん「その話ってパーティーが終わってからじゃダメなの?」
ピョンタ「それじゃ 意味がないんだ。君と 真剣な話がしたい」
トモちゃん「ふーん そうなんだぁ。ねえ あなたは私の気持ちわかっている??」
ピョンタ「 どういうことだい?」
トモちゃん「こういう事よ!」
トモちゃんは カードを3枚ずつ手に持つと一つはヒロヤのポケットに入れ、もう一つは通りすがりの男のポケットに入れた。(トモちゃん残りカード2枚)
どういうことだ? よりによってヒロヤは結婚詐欺し見たいな奴だぞ。
トモちゃん「わかったでしょ?? 私はあなたのことが 大 大 大っ嫌いなのよ!!あはははは あなたのそのポカンってした顔さ 久しぶりに拝めたわ! 愉快だわぁ。でも・・そうね。私とお話ししたかったらチケットを10枚集めてみたら? お勧めしないけど ふふふ」
そう言い残すと ひるがえすようにドレスのスカートをぴしゃっとさせて 歩いて行ってしまった。
どういう事なんだ?トモちゃんの真意が全く分からない。理由が知りたいと思った。
ヒロヤ「すごい! すごいですよ。ピョンタさん いいえ ピョンタ師匠。あの女は今日一番の高根の花ですよ。そんな女から チケットを合計で5枚も手に入れてしまうなんて 勉強になりましたわぁ~ そうだ! ピョンタさんの2枚のチケットも俺が売りさばいてきますよ。売るのは得意なんです!任せてください」
売るだって? このチケットは売れるのか?
売れるってことは 買えるってことなのか?
でも いいのかそんなことをして??
売れるのか。売れると言うことはチケットを10枚買ったらトモちゃんと話すことが出来るのか?
今までアーリーリタイヤ(ゆうゆうと早期引退)をするために、積立NISAを積み立ててきたけど今はお金の使いどころなのだろうか?人生ってこんなところにお金をかけなきゃいけないものなのか?
もちろん パーティーの趣旨から考えてお金でチケットを買ったことがバレればパーティーから追い出されてしまうかもしれない。だから 買うのは一番最後の手段だ。
「なあ ヒロヤ。。チケットはいくらで売れるんだ?」
「20万が相場ですかねぇ オレなら師匠のためにもっと高く売って見せますよ。」
なんかヒロヤが嬉しそうだな。俺の役に立ちたいのだろうか?まさかな。
俺は 「仕事に行ってくる」と言ってヒロヤからはなれた。 あ~ モヤモヤするな。
ピョンタ「へぃ~ 彼女ぉ~ 元気??」
最初に声をかけた女性は チケットをセンスのように片手に持って首筋から胸の方へ
仰いで風を送っている女性だった。
パーティードレスが熱いというのもあるかもしれないが 血管に唐辛子を注射されてしまったかのような
言いようのない熱気がパーティーにはある。しかし 俺と話すなり女性は寝起きのような顔になった。
センスの女性「あら ごめんなさい。私は チケットを使い切っちゃったから、お話ししても無駄よ」
いえいえ 沢山チケット持ってるじゃないですか?
いいや そういう問題じゃないのか?
会話をする前から俺は嫌われていた。
「でも あなたが持っているチケットって 私のとちょっと違うみたい。ちょっと見せてくださらない??」
トモちゃんからもらったチケットとこの女性が持っているチケットは違うのか?
ナンバーが降られているわけでもないし 同じにしか見えないけど・・。
俺は センスの彼女にチケットを2枚渡した。
「ふふふ ありがと!」
俺のチケットを受け取ると彼女は 胸元の割れ目にチケットを差し込んでしまった。
そのまま立ち去ろうとしたので 慌てて声をかけた
「チケット返してくれ!」
「何言ってるのこの人? これは最初から私のチケットよ」
俺たちは少し、、もめた。すると彼女のヒーローになりたい男たちが彼女の周りに集まってきた。
「ええっと ちょっと いいですか?私は弁護士をしております。××という者ですが・・」
弁護士だって?弁護士が結婚できなくてパーティーに参加するなんてありえないだろ。
しかし 法律がどうのって話はなかったが口のうまいヤツで 彼女がチケットを盗んだと言うならそれを証明する義務が最低限、俺にあるのではないか?という感じの話の流れになった。
ギュ!!!!
センスの女性が 弁護士の腕に抱き着き、ゆっくりと柔らかい胸元が押し付けられた。
「おっほほぉ。。おっほん! ピョンタ君、つまりだね。 議論するも何も、根拠がない。これ以上続けるなら名誉棄損で争う事になるがいいかな??」
ピピピピ ピピピピィ
なんだ?なんだ? こんな時に俺のスマホがなり出したぞ。
マナーモードにしていたはずなのに どうしてだ? そうだぁ 急用ができたことにしてこの場を逃げようか。
分が悪いといっても、まさか 追いかけてまでは来ないだろう。
俺は スマホの画面を見た。。。
・・・。
・・。
ああ 神様・・スマホ様
俺の顔はホホが痛いくらいにつり上がった。笑いが止まらない。
アプリ「彼のプロフィールを検索しました。名前×× 職業:飲食店店主・・・」
ヤツは弁護士ではなかった。
ピョンタ「名誉棄損ですか?面白い! 争ってもいいのですがその前にこれを見ろ」
スマホを見せつけた。
スマホが インロウになった。
水戸黄門ってこんな気分なんだろうな。。
目を見開く偽弁護士に チケットで口元を隠すセンスの女性・・。どうだ! 俺の勝だ!
「ひどい! ひどいわ! みんなで私を騙すなんて!こんなチケット要らないわよ!!」
ビリ ビリ
センスの女性は 泣きまねをして、さらに胸に刺してあったチケットをビリビリに破いた。
そして被害者に見える彼女は ほかの男性たちに慰められながら消えてしまった。
ポカーンと残ったのは 俺と偽弁護士だ。
センスの女は演劇部にでも入っていた経験があるのだろうか?すごい迫力があったな。
偽弁護士「そのぉ~ あの~・・ 女性が困っているところをほっとけなくて。。」
ピョンタ「腹は立ちますけど、でもいいですよ。俺たち ある意味同じです。仲間みたいなものですよ」
結局 チケットを盗むでも 何でもよかったのだろう。
彼女は 恋人を欲しがっている男性たちを自分の周りに集められれば、
それで十分に成功していたようだ。
それに俺は急がなくちゃいけない。
壁の隅にはイスが置いてあって 休んでいる女性たちが増えてきた。
彼女たちがテーブルから離れる理由は すでにチケットを渡し終えたからだ。
テーブルの周りにいると男性から声をかけられてしまうから壁のイスに座っているのだろう。
もう 時間がない・・ あんな女と口論なんてするんじゃなかった。過ぎた時間は戻らないけど どうしたらいいだろう。。
アプリ「検索中・・ ピョンタさんでも大丈夫そうな女性をピックアップしました」
ポケットのスマホからアプリの声がした。
画面を見ると 女性のプロフィールと顔写真が乗っていた。なるほど ありがとうアプリ。
しかし 美人ばっかりというか、、美人というか飲食街のビルの壁に貼ってありそうな写真ばっかりだ。
声をかけて大丈夫なのか?
「師匠!何すか?それ??」
突然現れたヒロヤは 心配そうな顔で俺の顔を覗き込んできた。
「アプリだよ。ほら お前も持ってるだろ?」
俺は アプリのことを話したがしかし。
「オレのスマホにもアプリは 入ってますけど。そんなメイドのような機能はついていませんよ」と言っていた。
どうやら俺のアプリは普通とは違うようだ。「シニア用っすかね?(笑)」とも笑っていた。
「それより 見てくださいよ。師匠の様に素人っぽく声をかけたらこんなにチケットが集まりましたよ。これも師匠のおかげです」と言って
ヒロヤは 天才なのか3枚もチケットを集めていた。合計で6枚も持っているのか。
ヒロヤの弟子になりたいよ。。
チケットは まだ売っていないのかを確認すると最後に売った方が高くなるから持っているという話をしていた。
最後にコイツから買おうと思う。
本当は 自分の力で10枚のチケットを集めたかったけど、みんながアニメの様にカッコよくなれるわけじゃない。カッコよくなれないからこそ 積立NISAをコツコツと積み上げてきたんだと思う。
さて あと3枚集めなくちゃな。
そして トモちゃんに会えたらまずは チケットをお金で買ってしまったことを謝ろう。
それでも トモちゃんが話をしてくれると言ってくれたら・・素直な気持ちとキャンピングカーを購入して日本一周の旅をしたいって、誘ってみようと思う。
ピピッ ビビッピピ
パーティーで電話がけたたましく鳴るなんて最悪だぁ!
また マナーモードにしていたはずの携帯が鳴り出した。
俺は急いでその場を離れてポケットからスマホを取り出した。
アプリ「検索しました・・・ 〇月×日の記事。今話題の女性のための会社、トモちゃん社長にインタビュー!!」
なんと トモちゃんは会社の社長さんだった。
今は元社長さんのようだけど、どおりでヒロヤが「今日一番の高根の花だ」と言っていたわけか。
そして記事には 離婚してバツイチになった女性が個人事業を起こし、男性社会の荒波にもまれながらも、なんとなく始めたYoutubeがきっかけで仲間を作り、女性のための商品を扱う会社として成功したのだと言う記事が書かれていた。
すでに離婚をしていたけれど。申し訳ない。。申し訳ない・・。
涙が止まらなかった・・。でも 成功してくれてありがとう。。。
仲間と一緒に楽しく 起業して成功したのかもしれないし、裏の話はわからないけど
そんな気持ちになってしまった。
「仲間か・・」
パーティー会場を見渡した。
するとさっき アプリがピックアップしてくれた女性たちが突っ立っている。
不思議だ。 顔が可愛い女性たちなのに、どうして突っ立っているのだろう??
チケットも全然渡せていないようだった。彼女たちはそのままで、納得しているのだろうか?
女性の会費はわからないけど パーティードレスにエステに・・色々とお金もかけただろうに。
何となく 彼女たちが苦労しているような気がしたので声をかけてみた。
もちろん声をかけても即座に断られたが 「そうじゃないんだ。パーティーでもあるんだし、楽しみませんか?」と話を続けて彼女の緊張がほぐれだしたところで 彼女の話に合いそうな男性のところへ連れて行ってグループで話始めた。
すると・・・ 数分も立たないうちに男性や女性がグループ内に出入りするようになってきた。
一人一人に声をかけるよりも効率が 段違いになったぞ!
そのうち俺が声をかけた女性も意中の男性と出会えたようで 二人きりになるためにグループから去っていった。
「あのぉ ピョンタさん、ありがとう(*^-^*) 元奥さんとお話しできるといいですね」
彼女は俺にチケットを1枚渡してくれた。
こんな事もあるんだな・・。チケットは暖かかった。
ピピッ ビビッピピ
また マナーモードのスマホが鳴り出した。
でも 今度は動じないぞ!
俺は 素早くポケットからスマホを取り出してタップした。
アプリ「危険です。危険です。その場から逃げてください」
なんだって?!
グループ内では楽しそうに優雅な会話がなされている。
すでに俺がいなくてもこのグループが消えることはないだろう。
じゃぁ 何が危険なんだ?
地震とか そういうのじゃなさそうだし、俺は周囲を見渡した。
すると 顔面蒼白な女性が小走りでこちらに駆け寄ってくる。
あれは A子じゃないか!!
パーティーが始まった直後に 意中の男性に10枚のチケットを渡して自分の想いを伝えたが、
伝わらなかったんだよな。。何やってるんだ?
A子の両手は腰のあたりで前に組まれており。。手には光るものがある・・・フォークだ!!
フォークを両手に持ったB子がこちらへ駆けてくる。
ってことは・・ グループ内にあの男がいた。もう 時間がないぞ。
グサ・・
鈍い音と硬い皮のブドウにフォークを突き刺したかのような感触が俺に伝わってきた。
「痛たたぁ・・・」
A子の肩を掴んで制止しようと思ったが 肩を掴んだくらいじゃ勢いは止まらずに、そのまま俺が刺されてしまった。こんなはずじゃなかったのに。
A子「あ・・あの どうして?」
A子は始めこそ自分の想いを邪魔されて絶望した顔だったが すぐに人としての良心に芽生えたのか目元が震えだし怯えているようだった。 止められると思ったのにつかみどころが悪くて そのまま刺さるとは予想外だった。
そして このフォーク、すっぽり刺さってるぞ。。
ピョンタ「ねえ ちょっと お話ししたいので廊下に行きませんか?」
フォークが刺さったままなので、いきなり抜いて流血しても困る。
俺とA子は気づかれないように 寄り添うように 歩いた。A子からいい匂いがしてくる。
寄り添うようにゆっくりと廊下の方へ歩いていくと、みんなが俺を羨ましそうな目で見送ってくれた。
言葉こそ発しないが クラッカーやグラスを軽く持ち上げて「お幸せに」と言わんばかりだ。
そうだろう そうだろう。だって こんな若い子と・・って、イヤイヤ ちょっと待て!フォーク刺さってるだけですからねぇ。 奇麗に見えますか?血のお花しか咲かせられませんけどね。
結局廊下で フォークを抜く訳にもいかないと言うことになってトイレットペーパーと水のあるトイレでフォークを抜いてみた。
俺がフォークを両手で握り、A子はティッシュペーパーを両手いっぱいに掴んで出血時にすぐに抑えられるように構えていた
「いくぞ」
「うん!」
スパッ!
意外だったけど 腫れあがっている割に血はほとんど出なかった。
とんでもない目に合ったが これならパーティーに戻っても問題ないだろう。
いきなり手持ちのすべてのチケットを渡してしまうような、A子にも問題はあると思うけど、素敵な人に出会えたのならきっとこの子はいい奥さんになるだろう。
年のせいなのか、彼女の幸せそうな未来が目に浮かんだ、もう責めようとは思わなかった。
「じゃぁ 俺 行くから。 ロビーでお茶でも飲んで落ち着きなさい」
俺にはやらなければいけない事がある。
もう チケットを10枚集めることは時間的に無理だろうけど、でも諦めちゃいけない気がする。
NISAに積み立て続けた人生は 未来のために今を諦める人生だった。
いいや 違うか。NISAを理由に人生を逃げてきたのは俺なんだ。自分にけじめをつけなくちゃいけない!!
A子「うわぁぁぁぁぁぁぁん どうして。どうして私の人生っていつもこうなの?やっぱり、占い師の言う通りだぁわ。私がお守りを無くしたのが悪かったのね。うわぁぁぁぁぁぁぁん」
A子は 泣きじゃくった。でも A子の言っていることは違うと思った。
ピョンタ「そうかな? 本当に (いつもこんな人生)だったのかな?A子さん。君の人生を話してごらん」
A子は疑うこともなく 素直に自分の人生を語り出した。
ちょっと せっかちな性格だけれどこの子はやっぱり
つまり与えることが好きな人。神様のような性格だ。
でも それだけに付き合う人間関係には気をつけなくちゃいけないし
占い師と出会ってからの人生は 地獄じゃないか。
ピョンタ「見えてないのか?」
A子「何がですか・・?」
ピョンタ「人にすべてをあげてしまうことは簡単な事なんだ。気分もいいよね?でも それじゃ 一方通行のままじゃないか?人間関係と作るということは。相手を幸せにしつつ、なおかつ自分も幸せにならなくちゃいけない。そういう難しい事なんだ」
老後の資金だけじゃ 生活できないから婚活を始めたような俺とは思えないセリフだ。
A子「そんな計算高い生き方は。。苦手です。。それに チケットも失って。誰も私とお話しをしてくれないの!! 結局チケットがなかったら 私なんて何の価値もないの!お守りを無くした時に占い師にお守りがなくなったように、、あなたは自分の価値を無くしていきますと言われたわ。色々やったけど。もう ダメなのよ」
それは 占い師の言う通りに色々やった結果だろ。っと口から言葉が出てきそうになったけど
それで伝われば 人生は苦労しない。
ピョンタ「お話ししたい人がいたのに相手にされなかったんだね。でもそれはパーティーのルールだから仕方がない事だよ。だけど もう大丈夫。ほらぁ、チケットならあるよ。これを受け取って・・・だから自信をもって話すんだよ。」
チケットをギュっと 握らせた。
A子の手は冷たかったけど 確りとチケットを掴んでくれた。
これで うまくいくかはA子しだいだけど チャンスの数が増えればきっといいこともあるだろう。
さあ ヒロヤを探してチケットを売ってもらうかぁ!
俺はトイレのドアを開けた。
ヒロヤ「あ! いた! 師匠、どこに行ってたんですか?そろそろ戻らなくちゃ 告白タイムが始まっちゃいますよ。」
ガチャン!!!!
俺が出た後にトイレからA子が出てきた。
ヒロヤ「あははは ピョンタ師匠ぉ~ もうぉ~ どんだけ好きなんですか!ちゃんと仕事してくださいよ!」
若造に「ちゃんと仕事をしてください」と言われるとなんだかムッとするな。
それより チケットを売ってくれとヒロヤに交渉してみた。
ヒロヤ「あれれ? 欲しかったんっすか? もう売っちゃいましたよ」
ピョンタ「誰に売ったんだ?」
聞く意味がないかもしれない。
ヒロヤ「ああ 結婚詐欺やってるヤツっす。オレ あいつは大っ嫌いなんすけど!でも大金を出すっていうからつい・・」
結婚詐欺師が 大金を出してでもチケットを手に入れたい理由は・・トモちゃんしかないだろう。
急がなくちゃいけない。。知らせなくちゃいけない。。
トイレから会場まではそれほどの距離じゃないけど 走っても会場が遠い・・
うっ・・ さっき 刺されたところが痛い・・ あ!風船のように腫れあがってきたぞ・・。
足が重い・・。
司会者「それでは 告白タイムに移らせていただきます。今回の栄えある1位は50枚のチケットを獲得した詐欺男様です!パチパチパチ」
薄暗い会場にたどり着くと 司会者の合図とともに 詐欺男と言う男とトモちゃんにスポットライトが照らされていた。
ヒロヤ「あ!アイツ 50枚もチケットを集めていたのか?トモちゃん元社長ってどれだけすげぇ女なんだよ」
詐欺男「トモちゃんさん。雑誌であなたのことを知ってから私はあなたのファンでした。あなたの様になりたくて私は 色々な人たちと交流をし、そして事業で成功したのです。そのコミュニケーションスキルで50枚ものチケットを集めることが出来ました。あなたのおかげです。これからはあなたを幸せにしたい!付き合ってください」
詐欺男の告白と共に、空からバラの花が降ってきた。
いい香りの演出と音楽が流れた。なんて いい演出なんだぁ トモちゃん・・トモちゃん・・。
ピョンタ「ちょっとまて!!!!」
司会者「ほほぉ~ 」
俺は 詐欺男の前に割って入り、詐欺男のスポットライトを横取りした。
司会者「ピョンタ様、ピョンタ様はチケットを何枚お持ちでしょうか?50枚以下なら お下がりください。。。」
司会者は 俺の腕をグイグイと強い握力でつかんできた。
電気が流れてきたように動けない・・ なんだぁ この司会者。
トモちゃん「いいわ 放してあげて! 話だけでも聞いてあげようじゃないの」
司会者「それはできません。 ルールですから」
トモちゃん「そう。じゃぁ こうしましょう。詐欺男さん!チケットには女性たちの想いが込められているの!50枚の想いを ただの自分のスキルだと考えているあなたとはお付き合いできないわ。ごめんなさい」
詐欺男は 状況が理解できないようだ。キョトンとしている。
司会者「残念ですが 詐欺男さまは脱落です!それでは ピョンタ様。チケット確認させてください。」
トモちゃん「あなた チケットはどうしたのよ!私があげたじゃない」
ピョンタ「それが・・色々あって、ほんと 色々あって一枚も持っていないんだ。てぇへぇ」
トモちゃん「はぁ??」
トモちゃんはポカーンとした顔になった。そして 俺にはトモちゃんの前に立つ権利がそもそもない事になる。
するとA子がスポットライトに入って来て 俺からチケットを貰ったことを話し始めた。
ピョンタ「A子は泣いているのか・・」
A子にとって 親身になって話を聞いてくれたのはピョンタと占い師だけだったらしい。
その話が終わると パーティーで俺と話したことのある女性たちも「ピョンタは話しやすかったわ」と高評価をくれた。
※※「私のチケットを使って!」
※※「私 使わなかったチケットがあるから ピョンタにあげるわ!頑張って!」
とチケットを片手に掲げる女性が現れ始めた。
トモちゃん「どうやら 話をする権利を得たようね。みんながあなたにチケットを渡したがっているようだけど・・本当に 私でイイのかしらぁ?」
トモちゃんは 外国コメディーのように首を傾げた。
ピョンタ「もちろんだよ。今回のことを通して俺は気が付いたんだ。将来のためとか・・積立NISAを積み立てることで 今を生きることを逃げちゃいけないって!小さなキャンピングカーになっちゃったけど。君と旅がしたい・・。どうか 俺との頃の人生を生きてください」
頭が下がってきた。本当に気持ちを伝えたいときは 稲穂が頭を垂れるように頭を下げてしまうものなんだと知った。
トモちゃん「ねえ 今みたいな言葉さ。私たちが付き合い始めた頃にあなたが私に言ってくれてたのよ。」
頭を下げている俺の肩を掴んで起こし上げてきた。
トモちゃんの顔は 涙でウルウルしていた。
トモちゃん「やっと帰って来てくれたのね、おかえりなさい。あなた・・。」
会場は 抱き合う俺たちに歓声と拍手を贈った。
エピローグ・・
俺たちは 小さなキャンピングカーを買って日本一周旅行を始めた。
A子は素敵な男性に出会えたようで 男性はA子名義で積立NISAを始めたらしい。
トモちゃん「次の温泉を目指すわよ!!」
ピョンタ「運転よろしく!!」
アプリ「了解しました! 最適な電力で最適な運転を提供いたします。それから報告があります。Youtubeの広告収入が月30万円を超えました・・・」
老後の旅は まだまだ 続きそうだ。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
積立NISAのすれ違い離婚(遠い昔の思い出をたよりに、アプリと一緒に妻を取り戻す話)1 もるっさん @morusan
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