積立NISAのすれ違い離婚(遠い昔の思い出をたよりに、アプリと一緒に妻を取り戻す話)1
もるっさん
第1話 さあ 定年だ!仕事から解放されよう
とある証券会社のカウンター、俺は高給取りの美人のお姉さんと今後の将来について楽しくお話をしていた。
「先日 送ってくれたバレンタインデーのチョコレート美味しかったよ。可愛い手書きのメッセージもとっても良かった。コルクボードに飾ったんだよ」
「まあ ホント? 嬉しいです」
照れ笑いをすると 歯並びの良すぎる白い歯が奇麗にお辞儀をしている。
まるで彼女と歯の二人いるようで愛嬌がある。
そんなギャップがたまらない。
俺はこの子がお気に入りで 何度、証券会社に足を運んだだろう。
俺が死んだら 俺の財産をこの子に残してあげてもいいと 考えてしまうほどだ。
「はい これで手続きが終了しました。iDeCo(確定拠出年金)のほうは退職金として全額を解約すると言うことで間違いありませんか?半分だけ退職金受け取りにして半分を年金受け取りにすることも出来ますよ?」
「ええ 全額を解約でお願いします。」
「そうですか? 解約しちゃうなんて寂しいですぅ。 うるるる」
「大丈夫さぁ まだ 積立NISAの件もある。まだまだ お世話になるよ」
「ホント? 嬉しイぃ」
俺の名前はピョンタ。以前は結婚もしていたが今は独身の60歳だ。
60歳が老人だなんて考えられていたのは 20年ほど前までだろうか。
医学の進歩。インターネットによる 食に対する真実の拡散は素晴らしい時代をもたらした。
そして 政府も60歳になっても若々しい俺たちの存在を知って動いた。
定年が70歳まで引き上げられて年金も70歳まで掛け続けられるようになったんだ。
ネットニュースである政治家が「新しい形の少子高齢化対策だ!」って笑ってたな。
でも それは 約束違反ってものだ。
俺は60歳で引退したい! アーリーリタイヤ(ゆうゆうと早期退職)したいんだ。
俺の夢は キャンピングカーで日本一周の温泉・サウナ巡りをする事なんだ。
「そもそもだよ 俺が若かった頃は定年は60歳だったんだ。法律が改正されて70歳にするなんて ずるいっていうの。残りの人生を楽しみに使ってもいいじゃないか?死ぬまで働くなんて御免だね」
ただ 嬉しいことに今の時代 俺と同年代の方で同じように考える人は少なくないというのもある。
だって いくら若々しいといっても20代や30代とすべてが同じって訳じゃない。
見た目が若くても 骨密度のほうが低かったりするんだ。
だから 引退したい。
でも 二つ問題がある。
一人で引退するのは・・・その・・・金銭的にも・・無理なんだよな。
俺が狙っているキャンピングカーは ボディーの全面でソーラー発電が出来る最新式。
水から水素を作ることも出来るから 無人島に置き去りにされたって現代文明と同水準の生活が出来てしまう優れものなんだ。
20年前にあった あのガソリンは今は博物館の恐竜の横に飾られるようになった。
そして 最大の問題はこれだ!
引退を一人でするの? 一人で何するの?寂しすぎるだろぉぉぉぉ。
俺は 妻と別れてから積立NISAのほかにiDeCoも初めて、稼いだ金を証券会社にすべてぶち込んできた。
だからこそ。誰かと人生を分かち合いながら生きていきたい。
一人はさみしい・・。
もうイヤなんだ。こんな生活。
「あのぉ~ 大丈夫ですか?私 心配ですぅ。うるうる・・」
美人の証券会社のお姉さんが 俺の目の前で手を振っているようだ。
そうか 考え事が過ぎてしまったな。
それにしても この子はホントに可愛い。。思いやりがあって優しい子だ。。
「ああ すまないね。 そうだ。俺は60歳で引退しようと思っていてね。日本一周の旅に出ようと思っているんだ。」
「えぇぇぇぇ ピョンタさんに会えなくなっちゃうんですか?寂しすぎます。だって私の仕事の息抜きはピョンタさんだったんですよ(笑)」
「それでなんだけど・・・ 一緒に旅しないか?休暇の時だけでもいいんだ」
ついに言ってしまった。不釣り合いなのはわかっているんだ。
でも わかってほしい。。俺の人生に一筋の光を与えてはくれないだろうか????
「はぁ?(*´Д`) うっせーよ! もういいわ!辞めたわ!バカじゃねぇの??お前さ。iDeCo解約した時点で終了しちゃったってわからないの?
積立NISAじゃ うちは儲からねぇ~んだよ!
そうだ! 「牛・熊ファンド」やれよ!!
そして レバレッジ(証券会社からお金を借りて株を買うこと)を いっぱい使ってくれたら・・・
そうしたらぁ そしたらぁぁ~ ワンチャンスあるわよ ウフ(^_-)」
毎年贈ってくれた バレンタインデーのチョコレート・・
手書きのメッセージカード・・・。
わかっていたんだ。 本当はわかっていたんだ。でも これが現実だなんて・・。
この日 俺は現実に戻ることが出来た。
数日後・・・。
でも大丈夫!!
そんな俺にも一つの秘策がある。
パッパパーン!! マッチングアプリ 「出会いにfire」だ!
このアプリは 某検索サイトが俺たちが今まで生活で使用してきたインターネットのデータを元に素敵な異性を紹介してくれるというアプリだ。
でも このアプリの登録料100万円って・・高すぎだぜ。
「やめるか?・・いいや 俺はこのアプリに賭ける!
人生を買うための投資なんだこれは!」
俺は 積立NISAを解約した。積立NISAは必要な分だけ解約ができる。
「おお 俺が15年前に積み立てた全世界ファンドは 2倍近くに増えてたんだな。
15年前の俺。勇気を出して銀行から定期預金を下ろしてくれてありがとう。」
・・・・・
「ご登録ありがとうございます。私は最新マッチングアプリの名前はアプリと言います。
それでは早速世界のビックデーターからあなたにピッタリの女性を紹介させていただきます・・」
100万円もかかったのに アプリの登録は数分もかからなかった。
そして1,000件以上の女性がヒットしているぞ
1,000人もの相性のいい女性を紹介してもらえる俺ってすごいのかな?
何か照れちゃうな しかも 日本人ばっかりで 割と近郊の県の人たちばかりだった。
ああ・・一人だけパプアニューギニアにいるな。でも俺は飛行機は苦手なんだ。すまないな。
「それにしても俺と同じような思考の持ち主のはず。世の中って、意外と狭いのな」
最低限 俺と同じように引退を考えている60歳前後の女性のはずだ。
そんな人たちがこんなに近くにいたなんて驚きだった。
次にやることは マッチングの制度をさらに高めるためにアンケートに答えていくか 人気順・年齢順などの並べ替えをするかだけど。
「絞り込む前に 1,000人の中で一番人気のある女性の顔が見てみたい」
ポチ ポチ ポチ・・・。
アプリ「あなたも 好きね・・解析します」
・・・。
・・。
現在のお申込件数 99,999件
年齢 50歳
一緒に引退生活を送ってくださる男性を探しています。
趣味は 温泉とサウナ。映画・・・。
「1,000件はすごいと思っていたけど 「1,000 VS 99,999」って無理ゲーだわ。これは・・ ん?これは!!
これわぁぁぁぁ!!!」
顔を見て驚いた。
画面に映っていた女性は 元妻だった。
俺たちは10歳年の離れた夫婦だったんだ。
元妻は50歳になって目元は柔らかい感じになっちゃったけど でも 可愛い姿のままだった。
元妻も引退するのか。。意外だったな。
仕事が好きだったのにどうしたんだろう? だけど 懐かしいしいな。
「元気だったか?」と画面に向かって声をかけてしまった。
ピョンタ「よし! 俺も一票、投票してやるよ! ポチ!」
アプリ「解析します・・ 無駄な行為と判明しました」
ピョンタ「いいんだよ それでも」
元妻は100,000件の申し込みになった。幸せになれ。
俺はこの後、数人の女性に交際の申し込みをした。
「俺の夢はキャンピングカーで温泉巡りをしながら日本一周の旅をすることなんだ」
「あらあら ふふふ。」
俺の話はウケはよかったと思うけど なぜか相手にはしてもらえなかった。
そんな ある日のこと。
ピピ!ピピ!
「あれ 出会いにfireじゃないか?」
アプリ「奇特な方が あなたに交際を申し込みました。ヨカッタデスネ」
何で最後が片言? それにしても誰だろう?ワクワクするぜ
え! まさか・・・ つづく
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