小噺 一人で目覚めた眠り姫
むかしむかし、ひとりのおひめさまがたんじょうしました。たんじょうびのおいわいに、たくさんのひとがまねかれて、そのなかにはしゅくふくのために十三人のまじょもよばれるはずでした。ですが、なぜか十三人目のまじょだけしょうたいされませんでした。
おこった十三人目のまじょは「この子は十五才にしぬ」のろいをかけました。十二人目のまじょのまほうで「しぬのろい」から、「百年間ねむりつづけたあとにめをさますのろい」になりました。
そして十五才の誕生日、おひめさまはとつぜんふかいねむりにつきます。そののろいはおひめさまだけではなく、おうさまやおうじょさまや、めしつかい、さらにはくにじゅうにすむすべてのいきものまでねむりについてしまったのです。
百年後、おひめさまはめをさましました。しかし、おひめさまいがいのみんなは百年のあいだにとしをとり、くちはてて、しんでいました。おひめさまただひとりがそのすがたのままでいきていたのです。
ひとりぼっちになったおひめさま。かのじょのそのあとをしるひとはだれもいません・・・。
「・・・。」
めずらしく起きているグラッセが読み聞かせていたのは一つの絵本でした。タイトルはなぜか黒いクレヨンで塗りつぶされています。
そして、それを聞いていた相手はハニーでした。彼女が持っていた本が気になるということで読んであげたら、中盤あたりで早くも寝息をたてて、今や気持ちよさそうに寝ています。
「・・・・・・。」
自分が起きているのに、自分の話で眠られてなんだかバカバカしくなったグラッセはハニーに折り重なって秒で寝てしまいました。
そこを訪れたテディー。今日はお茶会の予定はありませんでしたが、忘れ物をしたので取りに戻るとそこにはなんとも言えない状態で寝ている見慣れたふたりの姿がありました。
「お前らなぁ・・・。」
グラッセのそばに落ちている本を拾います。タイトル不明のおとぎばなし。テディーはそれを流し読み。だって彼はこのお話を知っていましたから。
「キスで目覚めることのなかった眠り姫、か。」
独り言を呟いて、元あった場所に置いてあげます。忘れ物のお酒の入った瓶をさげてテディーはお家に帰りました。
ひとりぼっちになったおひめさま。かのじょのそのあとをしるひとはだれもいません・・・。
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