番外編「病院」
「次の患者さんどーぞー。」
少し具合が悪いハニーがおとずれた病院。近くの病院が空いていなかったので、今来た病院は初めてです。待合室で名前を呼ばれて、診療室。
「はーい・・・ん?」
診療しているとこが丸見えです。
「あぁ、なんかさあ仕切り壊れてね。大丈夫今日は見られてもいい患者ばかりだから。」
「みてもらいにきたものね。」
「は、はぁ。」
それならべつにいいのでしょう。ハニーはそんな話聞いていませんでしたが。
「今日はいつもの先生と違うんですね。」
患者の質問に少しめんどくさそうですが笑顔で答えてくれます。
「まあ色々ありましてな。私、テディーが担当いたします。」
「看護師のアリスです!!」
聞かれてもいないのに意気揚々とそばにいる看護師が名乗ります。さて、診療のはじまり。
「で、えー・・・三日前から腹痛が止まらない、と。」
「ええ。変なものを食べた記憶はないんです。キリキリする感じで。」
患者は深刻そう。
「自律神経失調症なのでは?」
「他の病院もみんなそういってまともに取り合ってくれないんです!はっきりした原因がなければすぐそう・・・。」
「はいはい。落ち着いて。」
泣きそうに訴える立ち上がる患者を座らせます。
「念のため、だ。どんな生活をしてる?聞かれたくなけりゃあこれだ。」
テディーが渡したのは、糸に繋がれた紙コップでした。
「これに向かって話せば大丈夫なんだよな?」
「ええ!」
確認をとって答えた看護師もろくなもんじゃありません。ハニーはかたわら困惑中。なにも知らない患者はコップの中で話しますが、だだ漏れです。聞かないふりをしました。
「ふんふん、ほうほう・・・なんだお前。働きすぎじゃねえか。心配すんな。たいしたことはねぇが、治療を求めてんならちゃんとしないとな。」
メモにさらさらと書いて、看護師に渡すと急いで何処かへ行きました。
「んじゃ、こっちに移動してください。」
案内されたのはベッドです。
「はーい、では四つん這いになってくださいねー。」
「えっ?なにをするんです?」
「医者が病院ですることつったら治療しかね・・・でしょうよ。」
患者さんと目があってしまいました。どうしていいのかはお互い様。今からなにされるんだろうと不安でいっぱいでみられても困ります。
「はは・・・。」
ハニーはとりあえず愛想笑いを浮かべました。しかし、様子がおかしいと思ったのはここからです。
「なんですか?これ。」
「んあ?気にしないでください。」
患者の手足に結束バンドやら繋がれてベッドにしっかりと固定されます。
「アリスー、準備できたぜ。」
「はいはーい!」
元気いっぱいの返事とともに看護師は、等身大ぐらいはある巨大な注射器を抱えてやってきました。目を疑うような光景にハニーもですが、なにより驚くのは当然患者の方。
「なななな、なんっ、なんですそれ!!」
「注射ですよー。楽になる薬を打つんです。」
「量が必要な場合は点滴すればいいでしょう!?」
よくわかりませんが、ごもっともな気がします。しかしテディーは舌打ちしたあと。
「こっちは忙しいんでね、さっさと終わらせたいんですよ。」
喧嘩を売るときのような怖い顔を近づけます。とても医者の取る態度とは思えません。反対にアリスの方はにっこにこ。患者は血の気が引いてしまい、体や奥歯までもが恐怖のあまり震えます。しまいには耐えきれず、泣き叫びました。
「かわいそう。いっそ楽にしてあげたほうがいいんじゃないでしょうか。」
「それ打ち込めば大人しくなる。」
ほら、もう大人しくなるとかいっちゃってるではありませんか。
「顔が真っ青で、心拍数もあがってます。」
「打ち込めばなんとかなる。」
「一体なにを打つつもりなの!?」
いてもたってもいられなくなったハニーが声を上げますがお構いなし。
「すぐに終わりますからねー。」
ズボンを下ろして、アリスは一切の躊躇いもなく太い注射針を指刺しました。おそらく今まで聞いた中で最大級の悲鳴にハニーまで泣きながら耳をおさえ、目を背けます。見る見るうちに中の液体が減っていき、空っぽになった頃には声も出ないといった様子でした。なんで治療室で拷問みたいなものを見せられなくてはいけないのか、とハニーは壁に寄り添って震えています。
「はい頑張りましたね!これで大丈夫ですよ!前の患者さんは喜んでたんですって?」
「頭が病気だからな。・・・さて、と。」
カルテに結果などを書き写していきます。
「胃痛を治したところでストレスをなんとかしない限り再発か、違う病気を引き起こす。って、聞いちゃいねえか。」
拘束具を外すと、力なく倒れます。いや、気を失っています。
「だからストレスを感じないようにしたんですね!先生!」
「そういう薬さ。ま、薬は薬でも「麻薬」だけどな。」
あぁ、その笑顔はまるで悪魔のよう。薬でも打ってはいけない薬をそのまま打ったのです。
「はい、じゃあ次の患者さん。」
「ヒイッ!!」
たいしたことはないのに、これぐらいのことであんな目に遭いたくない。下手すればもっとひどくなる!いろいろな危機を感じたハニーは椅子から飛び降りて逃げましたが。
「あれっ?あれれ!?」
なんと、ドアが空きません。外側から鍵がかけられています。逃げ場を失ったハニー、じりじりと迫るは医者という名の鬼畜と白衣の悪魔。追い詰められ、どうしようもありません。
「うわああああああ!!!」
一瞬で自分の部屋のベッドの中に移動していたので、事態を把握しました。つまり、これは。
「夢か・・・。」
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