第12話
「……」
「……」
放課後デートをしている皐と空の後を追う二人の生徒。同じ制服に身を包み、ファーストフード店の飲み物を飲みながら彼らの後を追っていた。それは彼らの友人であり、仲良くして来た二人であった。
片手にハンバーグを持っている君塚来人とバニラシェイクを飲む狩沢未来は、放課後デートの真っ最中の皐と空を眺めながら言葉を交わしていた。
「君塚先輩」
「何だ、狩沢後輩」
「未来たちは一体、何をしてるんですか?」
「そんなもん、友人の行く末を見守ってる以外何があると言うんだ」
「はぁ……そろそろ帰っても良いですか?未来は課題をやりたいんですけど」
「課題ならオレがなんとかしてやるから大丈夫だ」
「君塚先輩、お兄さんや空先輩よりも成績悪かったですよね?」
「ぎく……な、なんのことかな?」
来人の誤魔化すように逸らされた目を見る未来は、ジトッと蔑むような視線を来人へ向け続ける。その視線から逸らされながら、未来は溜息混じりに告げる。
「まぁ良いです。未来もどうなるか気になりますし」
「愛しいお兄さんがどうなるか、私、気になります。みたいな感じか?」
「君塚先輩……海に沈められるのと山に埋められるの、どっちが良いですか?」
「死にたくないって選択肢は……あぁ、無いですか?さいですか……」
項垂れた来人に対し、呆れる未来は言葉を続けた。
「ではさっきの二つから、嫌な方を選んで下さい」
「しかも嫌な方なんだ!?とことんオレに慈悲はないんですね!?オレにも少しは優しさを向けて欲しいよっ?」
「優しさを向けられる理由が今までありましたか?」
「……」
「無いですよね?」
「待ってくれ!オレに慈悲を、慈悲を下さい神様っ!!」
「受け入れて下さい。それで世界は救われます」
「オレって世界規模で悪影響を及ぼしてるの!?」
「あ、見失ってしまいます。追いましょう」
「えっ、無視っ!?」
来人の言葉を無視して、未来は彼らの後を追った。擦れ違う通行人から見れば、デートをしている女装男子よりも怪しいだろう。それを理解しつつも、未来は彼らの行く末を見届けようと後を追い続ける。
「あーあ、仲良さそうに腕なんか組んじゃって」
「……」
「大丈夫か?未来ちゃん。見るのが辛かったら止めても良いんだぜ?」
「大丈夫ですよ。未来はそんなに弱くないです」
そう言う未来だったが、微かに震えている事に来人は気が付いた。下唇を噛み、自分の腕を握る力が強くなっている。
未来が皐へ恋愛感情を抱いている事は知っている。だがしかし、帰ろうとしない様子を見て止めるのも気が引けるのだろう。来人はふざけながらいつも通りに振舞うのだった。
「追いましょう」
「オレ、ちょっと飽きて来ちまったなぁ」
「なら先輩は帰って良いですよ。未来だけでも見届けますから」
「こんな楽しそうなイベントがあるのに帰るとか馬鹿だろ。最後まで付き合うぜ」
「そうですか……」
来人の言葉を聞いた未来は冷たい態度でそう呟いた。しかし、微かに口角は上がっていた事を来人は知らない。気を遣おうのではなく、いつも通りにふざける事が安堵へ繋がっている事を。
そんなやり取りをしながら、来人と未来はデート中の彼らの後を追い続けるのだった。
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