第6話
午前の授業が終わり、全生徒が昼食を取ろうとする時間となった。
「さっくんー、一緒に食べよー!」
「……」
「ちょちょちょ、どうして無視するのかな!?いたいけな美少女に一人寂しくお昼取らせるなんてヒドいんじゃないかなぁ!?」
大きく手を振っていた空に対し、俺は無視して廊下に出ようとした。腕を引っ張られる様子を見ていたクラスメイトは、男女共にこちらの様子を眺めながら何かしらの反応を見せている。
女子はヒソヒソ話をしている者やニヤニヤとしている者も居る。対して男子は、空に引っ張られる様子を恨めしそうに憎悪を向けているようだ。何をそんなに恨めしそうに見ているのか、正直に言ってしまえば理解が出来ない。
だってそうだろう?今俺の腕を引っ張ってる奴は、姿形は女子に見えても、生物学的には男子なんだからな。
『天使の誘いを断るのか?俺だったら、即OKしてお持ち帰りするってーの!』
『男だろうが関係ねぇ!天使は天使だ!傍に居るだけで癒しだろうが!!』
『そこ代わりやがれ!クソ野郎が!!』
馬鹿しかいない。もう空が男子だろうが、見境なくなってやがるじゃねぇか。
「おい空、お前が来る事を願ってる奴らが居るぞ。誘ってやれよ」
「……えー」
「心底イヤそうな顔すんなよ。良いじゃねぇか、たまには。お前なら誘えばいくらでもOKする奴居るだろ?」
「そうかもしんないけど。……あたしはさっくんと食べたいなぁって、えへへ」
『がはっ!!』
『ごほっ!!』
『うげはっ!』
指先を合わせながら、ぽつぽつと呟き始めた空。その仕草と同時に繰り出した上目遣いは、男子ならば女子に向けられたらグッと来る仕草の一つを繰り出して来た。
男子であれば、女子にやられたら一発で堕ちるであろう手法の一つだ。上目遣いで甘える仕草もしつつ、尚且つ、恥じらうように赤く染められた表情は男子の心をくすぐるポイントとして取り上げる者も居るだろう。
ここに甘えるような声色で言われれば、女子に免疫のない男子に有効な技だ。
「アホ言ってんな。食いたきゃ勝手に来れば良いだろ、どうせ来人も来るんだ。二人も三人も変わらねぇよ」
「……えへへ、そうだね♪」
手の平で空の頭を軽く押した俺は、歩き始めようとしながらそう告げた。このまま空の相手をしていたら、昼休みが終わっちまうのは流石に最悪だ。そうならないよう為には、さっさと昼飯を買って来人と合流した方が良いだろう。
そんな俺の後ろをトコトコと着いて来る空の様子は、何も知らない誰かが見れば可愛らしい女子にしか見えないだろう。だが中身を俺は知っているのだから、クラスメイトのような反応はしない。
「何処で食べるの?さっくん」
「屋上だろ。あの二人なら、多分もう来てるだろうしな」
そんな事を言っていると、俺のポケットの携帯が揺れる。誰かからメッセージが来たらしい。そのメッセージの内容を見た俺は、後ろで小首を傾げる空に向かって携帯の画面を向けるのだった。
「購買に行く必要が無くなったぞ」
「え?何で?」
「見てみな、ほれ」
俺に届いたメッセージは、俺達の後輩である未来ちゃんからのメッセージだった。
『お二人のお弁当は用意してあります。さっさと来て下さい、お兄さん』
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