第2話
腐れ縁である空と来人を引き連れて、俺は学校へと辿り着いた。登校時間だけであって、他の生徒の姿もちらほら見えてくる。やがて校門を潜った所で、生徒の群れが視界を支配した。
何の変哲もない景色ではあるが、もう何度も見ている光景であって見飽きてしまっている。そんな景色を眺めつつ、俺は隣に居る空と来人へ視線を向ける。
「全く、何でライライはさっくんにお宝本を提供しようとするのかな?」
先程のやり取りを未だに気にしているのか、空は頬を膨らませて腕を組んでいた。不機嫌だという事は一目瞭然なのだが、そんな仕草であっても中身が男と分かっていれば可愛げも何もない。
だがしかし、俺や来人が分かっているのだが……周囲に居る生徒には知らない者も居るのだ。女子用の制服を着こなしている時点で、そう疑う者も少ないのだろう。
口論をする空と来人の様子を見て、尊いと思う者も居れば僻んでいる者も居るようだ。しかし、やはり男と分かっている俺にはそんな感覚にはならない。またやっているって事しか頭に浮かばない。
他人のフリをしようとして昇降口へ向かおうとした瞬間、俺の鞄が何者かに引っ張られる。空かと思って呆れながら振り向くと、そこには見知った顔が膨れっ面で見上げていた。
「お兄さん、またあの人と登校してる。やっぱりそっちの気があるの?」
「
「でも一緒に登校してるの毎日だよね?本当は付き合ってたりするの?」
「気色悪い事を言うな。
「……」
納得したのか、俺の鞄から手を離した少女。小柄な少女で小動物のような容姿が可愛らしく、一つ下の後輩の女子生徒――
幼馴染という長い付き合いではないのだが、中学からの後輩で俺達の輪に入った存在だ。普段は大人しい性格ではあるのだが、疑り深いというか細かいというか……やたらと空との関係を勘繰っている存在でもある。
何度も説明はしているはずなのだが、どうも納得はしていない様子が続いている。
「あ、ミクミクじゃん。おはよ~」
「……!」
手を上げて挨拶した空に対し、ビクッとした未来ちゃんは俺の後ろへと移動した。身を隠す様子が可愛らしいと思えるのだが、空の事を睨み付けているのだろう。
微かに引き攣った笑みを浮かべる空は、小首を傾げながら顔を覗き込ませる。その視線から隠れようとする所為で、距離の短い追いかけっこが行われ始めた。しかも、俺を中心にしながら。
「何で逃げるの!?」
「空先輩が、追って来るからです!近寄らないで下さい、通報しますよ?!」
「躊躇なく携帯を構えないでくれないかな!?本当に通報しようとしないで、何もしてないじゃん!!」
そんな口論をし始めながら、ぐるぐると俺の周囲を回っている。その様子に呆れながら、俺は溜息混じりに俺を間に挟んだ瞬間に二人の頭にチョップを入れた。
「あだっ」「うっ」
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