大損害

 ウサギを上手く狩る為に再びやって来ました大草原。


 やる事は簡単だ。


 さっきはウサギ自体をアイテムボックスから放り投げたから失敗した。


 アイテムボックスから放ったアイテムは俺の思った所に大体届く。


 ならば短剣をアイテムボックスに収納して気合を入れてアイテムボックスから放ってはどうか?


 俺は早速短剣をアイテムボックスに入れて放ってみた。


 短剣はまるで矢の様に一直線に飛び、俺の狙いを付けたウサギに突き刺さった。


 角付きウサちゃんは即死のお陀仏だ。


 うお!


 やるな俺!


 すげーよ俺!


 やれば出来る子だよ!


 駄目っ子動物じゃねー!


 ウサギを仕留め次々アイテムボックスにしまう。


 このまま順調に事が進むと思ったんだ。


 七匹目のウサギを相手にする迄はな。


 俺が放ったナイフがウサギの尻に刺さる。


 ウサギは「プグーッ!」と鳴き声を上げると草原の遥か彼方に逃げ去った。


 ナイフを尻に刺したまま!


 ちょっと! 待て! 待ちやがれ!


 俺の武器を持っていくな!


 うわん!


 俺の唯一の武器無くなったんだけど!


 マジかよ、最悪!


 武器が無けりゃ狩りは出来ない。


 俺は街に戻り武器屋で短剣を買いに来たんだけど、めっちゃ高かった。


 五〇〇〇ゴルダだぜ!


 五〇〇〇ゴルダ!


 前の短剣は勇者をしてる時に貰ったんだけど、短剣如きがこんなに高いなんて知らなかった。


 RPGで短剣と言うと木の棍棒やひのきの棒に次いで安い一〇ゴルダか一〇〇ゴルダで買える安武器の代表選手的な武器じゃ無かったのか?


 でもまあ、日本でも一〇〇円ショップで売ってる果物ナイフや包丁を除けば、ちゃんとしたサバイバルナイフはそれぐらいの値段するしな。


 RPGの短剣の値段設定がおかしいだけで五〇〇〇ゴルダは妥当な価格設定なのかもしれない。


 六匹狩って五〇〇〇ゴルダだから赤字にはなってない。


 なって無いんだ。


 ちくしょー!


 結構時間掛けて狩ったのにウサギ六匹で一〇〇〇ゴルダかよ!


 一匹当たり二〇〇ゴルダ位じゃないか。


 お空に打ち上げた時と変わんねーよ!


 やってらんねー!


 とは言いつつも短剣が無いとこれから先、俺の唯一の収入源のウサギ狩りが出来ないのでそこは割り切って買った。


 全然割り切れてないけどな!


 まあウサギ五匹狩ったら元が取れる……はず!


 五匹狩れなければ今夜は野宿だ。

 

 泣け無しの金で短剣を買って草原に戻ると今度は二匹目で持っていかれた。


 マジかよ!


 二匹で持ってかれるって!


 大赤字過ぎだろ!


 超高い釣り竿と超高いルアー持って釣りに行ったら、池の主の大なまずにルアーを持ってかれた上に竿までへし折られた釣り初心者の気分。


 最悪……。


 二匹じゃ二〇〇〇ゴルダだから短剣を買えないぞ。


 どうするよ?


 ひのきの棒でも買って続けるか?


 でもひのきの棒じゃウサギに当たったとしても全身打撲で複雑骨折。


 ウサギを空に向かって投げるのとたいして変わらん。


 どうするよ?


 そこらへんに落ちてる石でも投げてみるか。


 俺は小石をアイテムボックスに入れて再びウサギを狙う。


 今度は短剣と違い、攻撃力皆無の小石だ。


 確実に頭を狙わないと逃げられる。


 俺は気合を入れ、目を見開いてしっかりとウサギの頭を見定めて気合を入れて引絞り小石を放った!


「どうりゃーーーー!!!」

 

 ──ビュン!

 

 空気と小石が擦れて焦げる臭いを残し空気を切り裂く音を立て小石は一直線にウサギの頭を捉えた!


 スナイプ!


 ヘッドショット!


 着弾と同時にウサギの頭が消し飛んだ。


 いけたな!


 小石でもやれるじゃん!


 うははは、アイテムボックスさいこー!


 高い短剣なんて要らねーな!


 俺は小石を投げまくりウサギを狩りまくった。


 このアイテムボックスが後に魔王も倒す武器となるのを、その時の俺は知らなかった。

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