ウサギ狩り
俺はウサギを捕まえる。
ウサギを捕まえる事は簡単だ。
俺の持っている【アイテムボックス拡張】スキル。
このスキルを使う事で手に触れずとも俺のアイテムボックスの中にウサギを取り込む事が出来る。
今も見つけたウサギを片っ端から取り込んでやった。
多分二〇匹は超えるぐらい捕まえた。
この【アイテムボックスキル拡張】スキルはかなりヤバい代物の様だ。
俺が「それ」と認識出来るものならかなりの距離が有っても取り込める。
しかも同時に複数の物が取り込める。
取り込むのは距離と重さで出来る出来ないが決まる様だ。
アイテムボックスに取り込むという事は、目の前に敵が居れば消し去る事が出来ると同意である。
ある意味相手の魔力や耐性でレジストされる可能性の有る即死呪文よりヤバいスキルだ。
ウサギなら二〇メートル迄の距離ならば確実に取り込める。
三〇メートルになると距離が有るせいかちゃんとウサギと視認出来ないせいか取り込み不発が出始めて、五〇メートルでは殆ど取り込めない。
五〇メートルも離れてウサギを見ても豆粒サイズで猫だか犬だかハムスターだかよく解らないからな。
多分距離が有り過ぎてウサギをウサギとハッキリ認識出来ないせいだ。
じゃあ、遠くに見える山々はハッキリ見えるから取り込めるのかな?と思って試してみたが、なぜか取り込む時に物凄い力が体全体に掛かる感じで押し潰されるような気がしたので慌てて取り込むのを止めた。
そのうちスキルレベルが上がれば取り込めるのかもしれないが、今の俺には無理だ。
試してみた感じだと直径二〇センチメートルのちょっと大きめな漬物石位なら楽に取り込めた。
直径一メートルぐらいだとかなり苦労するがギリギリ取り込めて、直径二メートルを超える大岩だとどうやっても取り込める気がしない程、体に重さが掛かる。
ベアウルフは五匹合わせると直径一メートルの岩並に重そうな気がするが、必死だったから一瞬で取り込めたんだろな。
俺に絡んできたおっさんたちの時は明らかにベアウルフ五匹より軽かったので楽勝だった。
そういやおっさん達をアイテムボックスに取り込んだままだったな。
俺のアイテムボックスに酒臭いおっさん臭が染みつく前に捨てねば。
アイテムボックスへの取り込みについては大体の性能が解った。
取り込みスキルの検証はこんな所で十分だろう。
次は獲ったウサギを絞めないといけない。
ちょっとかわいそうだが、俺が野宿したり夕飯抜く方が遥かにかわいそうなのでウサちゃんたちよ犠牲になってくれ。
試しに一匹アイテムボックスから出してみたが、出した瞬間に物凄い勢いで逃げていった。
脱兎という言葉も有るぐらいだから、最弱草食動物のウサギが逃げるのは当然と言えば当然。
ウサギが目の前から逃げ出す前に手持ちのナイフで迅速なる一撃で仕留めればいい。
俺はアイテムボックスからウサギを出すと同時にナイフで襲い掛かる!
「うおぉぉぉりゃ! 死にやがれ!」
俺が渾身の力を込めてナイフを振り下ろす!
だがウサギは俺のナイフを神回避!
そしてカウンターで俺の顔面を思いっきり蹴り飛ばして逃げてった!
「うぉぉぉ! いててて!」
異世界のウサギ、まじヤバい!
マジつぇええ!
こいつらはバケモノか!
俺の攻撃に即座にカウンターかまして逃げるとはテメーは格ゲーチャンピオンかよ!
俺は鼻血を垂らしながら頑張ったが五匹取り出して仕留めたのは一匹と散々な結果だった。
すげー効率悪いな、おい。
やっぱ火力が足りない商人では戦闘は辛いわな。
ちなみにウサギと言っても地球のウサギと違って頭に角が生えている猛獣なので倒してもそれ程罪悪感はない。
試しにナイフ代わりに火球を使ってみたがウサギの尻に直撃したはずなのに、ピューっと元気よく走り去っていった。
多分ノーダメージだ。
火球はLV1の頃から殆ど使って無いのもあって、威力が全然進歩して無いのも有るからな。
強いのはウサギの方じゃ無くて、俺の火球がショボい気がしないでもない。
なんとか上手くウサギを倒す方法を考えねば。
そう言えばネズミ捕りに捕まえたネズミを殺すにはネズミ捕りごと水の中に漬けて溺死させるって聞いた事が有るな。
ならば川の中に目がけてウサギを出したらうまい事溺れてくれないかな?と思ってやって来ました河原。
ウサギって泳げるのかよ。
意外だな。
これも駄目か。
さてとどうする?
俺は川の中に入り川底目がけて手を突き出しウサギを放つ。
凄まじい勢いで俺のアイテムボックスから飛び出たウサちゃんは川底に叩き付けられて気絶。
そして溺れた。
そこまでは良かった。
そこまでは完璧だった。
だがな、川の流れを計算に入れて無かった。
結構勢いの有る川の流れにウサちゃんは流されてあっという間に下流に流されていった。
今から追っても追いつけないだろう。
追いついたとしても気絶から復帰してまた顔を蹴られるヲチしか見えない。
「うむむむ!」
下流にダムみたいなのを作らないと回収不能だぞ?
そんなの作ってたら日が暮れるぞ!
どうすりゃいいんだ?
川底目がけて何度かウサギを放っていて気が付いた。
どうやらこのアイテムボックスからの取り出しは、手をかざした方向に俺が気合を入れた分だけ勢いが付いて飛んでいくらしい。
ならば!
俺は手を真上に向けて渾身の気合でウサギを放った!
──ずっぴゅーん!
ウサギは月を目指しての宇宙旅行だ!
ごめん、盛り過ぎた。
そこ迄は飛ばないと思う。
一分三〇秒後異世界初の成層圏飛行を果たしたウサちゃんのご帰還だ。
ウサギは物凄い勢いで地面に叩き付けられ皮だけになった。
あちゃー!
やり過ぎた。
もう少し威力を手加減してと。
おっ!
今度はうまくいった!
いい感じでお陀仏だ。
まじ俺様天才!
ナイフも魔法も使わずにウサギを倒したぞ!
俺は一〇匹を処理して冒険者ギルドに戻る。
「納品だ! 受け取れぃ!」
ギルド長の鼻先に処理済みウサギを突き付ける。
だがギルド長は見るからにダメそうだという表情をする。
「こりゃダメだね。売り物にならん」
「なんでだよ! ちゃんと仕留めてるだろ?」
「骨がバラバラで所々毛皮から骨が飛び出てるから毛皮としては使えない。食用としても体中の骨が砕けてるから処理に手間が掛かって使い物にならん。これは業者から確実に買い叩かれるという事で、一〇匹で二〇〇〇ゴルダだ」
「まじかよ! 一匹二〇〇ゴルダだと! その子供のお駄賃みたいな報酬はなんなんだよ!」
「子供の遣い程度の雑なウサギ狩りしか出来ないんだから仕方ないだろ!」
「なんだと! じゃあ、どうすればいいんだよ!」
「ちょうどカンナがウサギの納品を受けてるな。一匹借りてくるから見てみろ」
ギルド長が持って来たウサギは首なしのウサギだった。
「うひやっ!」
首なしウサギを見てあまりのグロさに思わず女の子みたいな声が出ちまったじゃ無いか。
「あはは、何ビビってるんだよ。首無しのウサギを見るのは初めてか。こんな感じで殺した後に首を落としてから逆さにして血抜きをしておくと毛皮も汚れないし肉も血の臭みが残らなくて高く買い取れるんだ」
「首を落として血抜きか」
やるしかねーな。
俺はウサギを狩りに再び草原へと戻る事にした。
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