サプライズ大作戦

「ちょっ、ちょっと待ってください。乱歩さん。一旦落ち着いて考えましょう。えっと、あの、その、駄菓子?え?ん?えー、と、あー、ん?」

乱歩の言葉に動揺し、慌てふためく国木田。

「落ち着くのはあんただよ、国木田。で、乱歩さん。その駄菓子ってのは何だい?」

国木田を落ち着かせ、乱歩に尋ねる与謝野。

「何って、もちろん僕が食べる駄菓子だよ。外出ちゃだめって言うから春野っちに通信販売で頼んで貰ってたんだよ。パーティするんだろう?」

当然のように答える乱歩に言葉が出ない国木田。その他の社員はというと・・・

「流石ですわ、乱歩さん。強行突破ですわね!」

「わぁ、素敵です!じゃあ僕はおにぎり持ってきますね。」

「あはは、乱歩さんらしいですね。」

「仕方ないねぇ。ほら、国木田。もう諦めな。乱歩さんが乗り気になっちまったんだ。こうなった乱歩さんを止められないのは知っているだろう?」

とパーティに向け、わくわくしている様子。

与謝野の言葉に国木田も反論できず

「う・・・、分かりました。しかし、買いすぎには注意してくださいね!」

と言わざるを得ない。こうして入社パーティの幕は開けたのだった。


とは言っても、まだギルド戦真っ最中。

皆の無事が確認できてから準備にとりかかろうということになった。そうして各々おのおのが仕事に戻り、ギルド戦も終結を迎える頃・・・

「あっ、そういえば。敦さんと鏡花ちゃんにもパーティの件お伝えしておきますか?そろそろ社長がお二人を迎えに行くそうですが…」

そう切り出したのは春野だった。帰ってくる敦と鏡花を福沢、太宰で迎えるようだ。

「そうだねぇ、どうしようか。」

与謝野が一同を見回し、尋ね、

「それはサプライズにするかどうか、ということでしょうか?」

と、国木田が考え込んだ時。一同の視線が国木田に集まった。

「いいこと言うじゃないか、国木田。」

「わぁ、僕サプライズした事ないです!お二人を驚かせればいいんですよね?後ろからそっと近づいて驚かせますか?」

「うん、賢治くん。サプライズの意味判ってる?お化け屋敷とは違うからね?」

「サプライズなんて今からドキドキしてしまいますわ♡」

社員たちが盛り上がる中、乱歩が疑問が口にする。

「でも、準備してる間に2人が社に来たらサプライズにならないんじゃない?」

「確かに。二人にバレないようにしないとですね。」

乱歩の言葉に考えを巡らす谷崎。

「休みでも取らせるか?そうすれば社に来ることもなくバレんだろう。」

「でも絶対来ないとも言いきれないだろう?もし来たらどうするんだい?」

「お二人に言っておくのはどうですか?"社には来ないでください"って。」

「いや、賢治くん。それは流石にあからさますぎじゃ…?」

ああでもない、こうでもないと案を出し合っていると…

「いや、そうでもないんじゃないか?鏡花ちゃんの入社パーティするからってことで敦には伝えておいてもいいんじゃない?休みの間社に近づかないよう言っておけばいい。」

突然の乱歩の言葉に振り返る社員達。理屈で言えば乱歩の言うとおりだ。しかし、敦はギルド戦の最後まで最前線で戦い、ギルドの長を倒したのだ。その直後に敦に負担を掛けるのは気が引ける。

「ですが乱歩さん。敦は戦いの直後ですし・・・。」

「ん?それがどうしたの?」

国木田の言葉に本当に意味が分からないという顔で聞き返す乱歩。察した谷崎が

「確かに敦君は大役でしたしね。その直後にこんな頼み事をしていいものか・・。」

と困惑顔。しかし乱歩は当然のように答える。

「あぁ、そんなの鏡花ちゃんの入社パーティのためって言ったら協力するだろう。鏡花ちゃんを連れてきたのは敦なんだ。敦が一番祝いたいだろう?」

一同が一瞬目を見開き、そして笑った。全ての真実を見抜く名探偵が言うのだ。これほど嬉しいことはない。それにしても普段あっけらかんとしている乱歩がこんなに社員のことを見ているとは。そのことにも嬉しくなり、ギルド戦終結の安堵も相まって一同はしばしの間笑い合った。

「何?僕何か変なこと言った?ねぇ、なんで皆して笑ってるのさ。」

困惑する乱歩に与謝野が

「いいや、皆嬉しいのさ。乱歩さんがそう言ってくれて。」

と答えるが乱歩はいまいち理解できていない様子。そこへ一本の電話が入る。電話に出た国木田が二言三言話した後電話を切り、

「敦達がそろそろ帰ってくるみたいです。我々も向かいましょう。」

と一同に声を掛ける。

「はい、サプライズの件はひとまず二人の無事を確認してからですね。」

「盛大に迎えてあげましょうね!」

「敦さん無事だといいですね。」

それぞれが二人を迎えに行くなか、まだ納得しきれない顔の乱歩。そんな乱步に与謝野が声を掛ける。

「さ、乱歩さん。行くよ、探偵社の皆のところに。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る