#16 ルービンの逆襲
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屈辱的な方法で「監修解任」を告げられ、キースへの仕返しを画策するルービン。植物学の権威は伊達ではなく、思わぬルートからキースの「不都合な真実」を見つける。
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ルービンは来客を研究室に迎え入れた。植物学の権威として知られる彼のもとには、たびたび自然保護・環境保護団体の人間が訪れる。ルービンが何かを発信すれば、その影響力はデモの比ではない。
「ルービン教授、折り入ってご相談があります。まずはこれをご覧ください」
自然保護団体のリーダーらしき男が差し出した書類を受け取ると、ルービンはざっと目を通した。新たなシェールガス掘削に関する内部資料らしい。
男が訴えた。
「ウエストバージニア、オハイオ、ニューヨーク、ペンシルベニアでは、シェールガスの開発が猛烈な勢いで進んでいます」
「マーセラス・シェール・フィールド、全米一の巨大なシェールガス層。そんなことはわかっているよ。請願に来るのも、あなたがたが最初ではない」
ルービンは眼鏡を外すと、あまり興味がなさそうに男のほうを見やった。NPOの連中ときたら、目こそ正義感とやらでギラギラしているが、どうしてもこうも判で押したように身なりに気を配らないんだ。私のもとを訪ねてくるなら、もうちょっと服装に気をつかえ。
「ですから、こうしてお願いに来ました。教授のお力をぜひお貸しください」
「マスコミに反対の声明でも出せばいいのかね」
「はい。水質汚染が豊かな緑に悪影響を及ぼすとか、ルービン教授らしい切り口でお願いできればと。もちろん、それ相応のお礼はさせていただきます」
もっとも肝心な問題がクリアになったことに、ルービンは安堵した。まあ、当然のことだ。手ぶらでこの私に請願しに来た愚か者はいない。
「安心したまえ。私自身、シェールガスの掘削には反対の立場だ。喜んで協力しよう」
男たちが帰ったあと、ルービンはあらためて内部資料とおぼしき書類にじっくりと目を通した。書面の最後には、出資者が列挙されている。そのとき、何か引っかかるものがあった。
〈フォード&ベイカー・インベストメント〉
ルービンはノートパソコンでこの会社を検索し、企業ホームページを開くと、「会社概要」のページをクリックした。すぐに詳細な情報が表示された。
やはりそうか……。
主要役員のなかに、〈キース・ベイカー〉の名があった。ルービンはあごに手をやってしばらく画面を見つめたあと、キースの名を検索した。ヒット数は膨大だったが、最初のページで目を引く情報があった。
〈ベイカー監督の次回作は、環境問題をテーマにしたSF大作〉
すぐにそのページに飛び、くわしい情報を読んだ。ルービンはにやりとした。携帯電話を手にすると、知り合いの新聞記者の番号を押した。
私はスマートな人間だと言っただろう、ベイカー監督。お礼はたっぷりさせてもらうぞ。
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