第43話 魔族が選んだあの男がついに本格『始動』! この恨み! 全部、ヤツにぶつけてやる!

――クリーヴィ廃坑 隠れ家――


「どうですかな。調子は?」


「ああ、悪くねぇ……ククク」


 力がみなぎる!


 だれにも負ける気がしねぇ!


「それはよかった。たしか……あなたは助けてくれたらなんでもするといいましたね?」


「ああ、男に二言はねぇ。あんたは命の恩人だ。なんでもしてやる。なにが望みだ?」


「ふふ、最近私の手と足となる部下が欲しいと思っていましてね。それも優れた。そうあなたのような、ね」


「ククク……そこまでオレを買ってくれるたぁ、ありがてぇ! ああ! いいぜ! あんたには一生かけてもはらえねぇ借りがあるからな。で? 何をすればいい?」


 このアルカージィとかいう老人には感謝してもしきれねぇ。


 なんだってやってやる。


 オレの【烙印スティグマ】を消してくれるどころか、さらにそれ以上の【力】をくれたんだからな!


「よろしい。ではエリオットさん。あなたに看守ジェイラーとしての初仕事です」


「おう! なんでも言ってくれ!」


「ふふ、実はこの大陸を出ようとしている者がいるのです。この意味あなたはもうお分かりですね?」


「ああ、さんざん説明されたからな……確かにそいつはふてぇやつだ」


「でしょう? あなたにはその者たちを殺してほしいのです」


 ククク、初仕事にはちょうどいい。


 思う存分、この力を試せる!


「わかったぜ! お望み通り、なぶり殺してやる!」


「いい心意気です。では……情報によれば、その者たち列車で【カルサイトリコ】から【サードニクスヘヴン】へ向かったようです」


「【サードニクスヘヴン】行きの列車だな。わかった。今すぐ行ってやる」


 オレは背中に力をこめる!


 MEKI! BAKI!


 KURRRRRRRRRRR!


「どうだ! このつばさ! これならひとっとびだぜ!」


「すばらしい。うまく力を使いこなしているようでなによりです」


「ぅんいや、まだまだだ、悪いがそいつらには実験台になってもらう予定だ」


「そうですか、実験台……では、ついでといってはなんですが、あなたに一ついいものをあげましょう」


「いいものだと?」


 アルカージィの後ろからぞろぞろと何か出てきやがった。


「あなたに手ゴマです。あなただけの命令を忠実に実行し、決して裏切らない手ゴマを」


「ククク、そいつは何かと便利そうじゃねぇか?」


「でしょう? にしても、ふむふむ、たしかに色々とちょうどいいですね」


 なんだ?


 アルカージィのやつ。


 意味深なこと口にしやがって。


「あぁ? そいつはどういう意味だ?」


「いえ、あなたのことをいろいろ調べさせてもらいましてね。それで、その【サードニクスヘヴン】にむかった者というのが――」


 なんだって?


 ククク……。


 そいつはいい!


「ははははっ! そいつはほんとにちょうどいいじゃねぇか!? もとはといえばあいつが全部悪いんだ!」


 そうだ!


 この怒り!


 このうらみ!


 全部、ヤツにぶつけてやる!


「このオレを死に際にまで追いこんだ罪! 晴らしてやるぜ! 首洗ってまっていやがれ! フィル=ブリンナー!!」






――サードニクスヘヴン行き ソリッド・ソリューション・ライナー 二等客室――



 Chugga……Chugga……Chugga……Chugga――。


 Choo Choo Choo Choo……。



『空を飛ぶ人型モンスター、フライングヒューマノイド現る!』


 なんだこりゃ?


 新聞を広げた瞬間、変なゴシップ記事が飛びこんできた。


「最近多いなぁ~こういうの」


「え? どうしたのフィル? なになに……え、なにこれ?」


「わかんない」


 意味不明としか言いようがない。


「そういば最近、前の仲間の人、とりざたされなくなったるね」


「そーだね。うん」


「ホロロ……?」


「え? なに? キキ……いや、べつに気にしているわけじゃないんだけどね」


 まぁ、あれだけさわがれていたら。


 少しはどうなったかなぁ~ぐらいには思う。


「この前の話じゃ、にげたっていう話じゃねぇか? フィル?」


「うん、そうみたい」


「んじゃ、どっかでおっちんじまったんじゃねぇか?」


「やめなさいよ。またそういうの、フィルくんだってあまりいい気はしてないんじゃない?」


「そうかぁ? オレは別に気にする必要なぇと思うけどな! オレの弟をさんざんこき使いやがったんだぜ!」


「確かにそうだけど……」


「ああ~……二人とも気にしないで、もう関係ない話だから」


 ほんとにそうなんだ。


 生きていようといまいと。


 もう道がちがう。


 それこそ海の向こうを見ているのと同じ。


 どうすることも。


 何もすることもできない話。


「それもそうね」


「そりゃそうだ」


 そう、この話はこれでおしまい。


「そうだ! ねぇフィル! いっしょに展望車いってみたい!」


「あ、うん、いいね! そうだキキ――」


「ク~ンク~ン」


 ちょっと用があるから二人で行ってこいって?


 というか、なにその不敵な笑み。


「そっか、行こうか。ウィン、二人で」


「うん! 行こ!」


 もう、なんとなくわかったよね?


 二人っきりにしてあげたいというウィンのはからいだって。


 ちょうど自分も少し外の景色見たかったし。


 でもよかったよ。


 二等客室なんて上等なところ取れて。


 おまけにベッドもシャワーもついている!


 だって【サードニクスヘヴン】まで三泊四日かかるんだ。


 さすがに一等客室なんて手が届かなかったけどね。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次回! 「愛しいあの子からの告白! あなたに残してあげたい!アタシが生きていた『証』を!」

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