第58話 合宿訓練と潜む影②
翌日、日課の鍛錬で汗を流した
「ますたー、いってらなっしゃい」
雌ゴトッフ達の
「ラーファ、お乳お疲れさま……行ってくる」
異世界ラズタンテは日本とは気候が違うので単純に比較することはできないが、
宿舎から南西門へ続く
「あら、
「ミアさん、おはようございます」
「
ミアはそう説明をすると、書類の中から一束にまとめられた
「ありがとうございます。もっと時間が掛かると思ってましたけど、意外に早かったですね」
「私も
竜種の素材はコレクションとして貴族やコレクターが収集する以外にも、武器や防具の素材に利用されたり、錬金術や薬師など
「それは良かった。あの地竜も必要としている人の元へ行けるなら本望だろうし……」
「それで、こちらが落札額と
「ミ、ミアさん……これゼロの数間違えてませんか?」
リストの一番上に記載されている地竜の魔石の落札価格が金貨五十万枚と表記されているのだった。
「間違ってないですよ? 元々竜種の魔石は高価ですし、あのサイズの地竜の魔石でオークションとなれば、これぐらいで落札されるのは妥当だと思います」
本来、竜の討伐は複数のパーティーが集まって共同で行う。当然、竜の討伐によって得られる素材の価格には参加した人数分の利益が上積みされ、その分高値になるのだ。
「あのサイズの地竜ですと最低でも三十人以上は討伐に参加しますから、地竜の魔石の取り分が一人金貨一万枚程度だと考えれば納得できるのではないでしょうか?」
出品者である
「でも、これで
ミアは
何はともあれ、スタオッド伯爵からの恩賞で所有地を
「あっ、
「やあ、シルユこんにちは」
シルユは食材の買い出しの帰りなのか、食材の入った大きな袋を両手で抱えていた。
「お手伝いか? シルユは偉いな」
「
シルユは
「正解。毎日似たような物になりがちだからな、何かないかなと探してたところ」
シルユは、ここは商機とばかりに売り込みを始めるのだった。
「そういうことなら、ウチにお任せくださいな」
シルユはそう言って自身の胸に手を当てると、
「ただいまー」
シルユが元気よく帰宅の挨拶をすると、女将さんでもあるカンジェが厨房から顔を出す。
「お帰り。おや、
「そうだ、お母さん。持ち帰りの注文受けてきたよ」
シルユはそう言うと厨房に駆け込み、
「
シルユは飲み物の入ったコップを土筆のいるテーブルに置くと、料理の手伝いをしに厨房の中へ消えていくのだった……
栄養の偏りがないようにと数種類の料理が用意されると、
「ありがとね。そう言えば……あんた、最近多発している失踪事件のことを知ってるかい?」
カンジェは
「いえ、初耳ですね……今カンジェさんから聞いて初めて知りました」
「そうなのかい……いやね、先日、家の向かいにある雑貨屋の娘さんが突然消えたって騒ぎになってね……」
カンジェは
話によれば、先日雑貨屋の娘が突然失踪して騒ぎになったのを切っ掛けに、連日のように人が失踪しているらしい。
失踪した人物に共通点もや繋がりもなく、調査に当たっている騎士団もお手上げ状態らしい。
「最近……ほら、こう言っちゃいけないのは分かってるんだけど……開拓村が魔物の群れに襲われて色んな人がこの街に流れてきてるだろ? 治安のことも心配だし、家にも娘が二人居るからね、皆心配してるのさ……」
カンジェは話したいことを一通り話終えると満足して厨房へと消えて行く。
カンジェの話だけでは必要な情報が全く足りず、現時点では全体像すら思い浮かべることはできないが、今後何かと繋がる可能性がないとは判断できなかったため、
その後、宿舎に戻った
「ツクっち、コルレットちゃん来たっすよー」
今日もしっかりと昼食の時間に宿舎にやってくるコルレットだが、
「コルレット、いらっしゃい。悪いが皆を呼んできてくれないか?」
これも日常となりつつある光景で、コルレットは
子供達と共同生活が始まってから
当初は年少組が好き嫌いをして栄養に偏りが出るのではと心配していたのだが、ミルル、エトラ、ホズミが予想以上に気を掛けてくれることもあり、
「そう言えばホッツ……この前冒険者の勉強したいって言ってたのは本気か?」
「うん、俺本気だよ」
ホッツは
「そうか……なら、冒険者の合宿訓練が今度あるから付いて来るか?」
合宿訓練は冒険者ギルドの行事なのでホッツが参加することはできないのだが、
「おっちゃん、それ本当か? 行く行く、俺絶対付いてく」
容赦なく
「えっ、何それ。俺も行きたい」
隣で話を聞いていたルウツが声を上げる。それは他の子供達も同じようで、声には出さないものの、一緒に付いて行きたいオーラ全開だ。
「そっか……じゃあ、挙手な。合宿訓練に同行したい人手を挙げて」
「……分かった。森へ遊びに行く約束してたし皆で行くとするか」
「……で、なんでコルレットも手を挙げているんだ?」
指定席で本を片手に食事をするポプリは知らぬ顔で挙手もしていないのだが、子供達に混ざって昼食をとるコルレットが一緒に手を挙げている。
「ツクっち、何言ってるんすか? コルレットちゃんも付いてくからに決まってるじゃないっすか……」
冗談ではなく本気で挙手していたことに驚いた
「まあ、何時も居るし場所が変わるだけか……」
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