第49話 土筆と宿舎の仲間たち
東の森を起点として発生したスタンビートによる騒動も、ユダリルム辺境伯の主導によるエッヘンの街防衛戦の成功により終息に向かうこととなり、人々は悪魔が裏で暗躍していた事実を知ることもないまま、平穏な日常へと戻っていくのだった。
ボルダ村から帰還した
なお、地竜から得られた食材については冒険者ギルドが独占して買い取る事になったようである。
「取り決めは以上になります。土筆さん、お疲れさまでした」
東の森でスタンビートが発生し開拓村から沢山の避難民を受け入れたり、ユダリルム辺境伯からの要請を受け、メゾリカ支店の代表を務めるゾッホ以下練達の冒険者がエッヘンに遠征に出掛けたり、更には紛争地域であるボルダ村へ国王軍が到着するまでの防衛業務に派遣した
「そうでした。こちらの書類にも署名を頂けますか?」
ミアが差し出した書類には、
「はい、分かりました。そう言えば、宿舎の子供達もミアさんに”ありがとう”と伝えて欲しいと言ってました」
「いえ、そんな、仕事ですから……それに、子供達とっても可愛かったですよ」
目の下に薄っすらと隈をこしらえたミアは笑顔でそう返すのだった……
冒険者ギルドを後にした
「おっ、兄ちゃん久しぶりじゃないか」
「今一推しなのは、これっ」
主が得意げに見せた包みの中には、薄切りにされた魔獣の肉が何層にも重ねられたパストラミのような物を挟んだサンドイッチだった。
「この商品、開拓村で人気だったって避難して来た獣人が教えてくれたんだ」
開拓村と獣人、
その後、
「ツクっち、お帰りなさーいっす」
コルレットも子供達の扱いに慣れたようで、ネゾンに蹴られて肌を赤くしていたのが遠い昔のようである。
「コルレット、いらっしゃい。おやつ食べていくか?」
「マジっすか。やったー、
両手を上げながら年少組の子供達よりも大喜びするコルレットに、
「おかえり」
「ただいま。紅茶でいいか?」
ポプリは
「ツクっち、手洗って来たっすよー」
コルレットの前を歩く子供達は誰に言われるでもなく、いつも座っている席に付く。
「そう言えばメルは?」
「メル先輩っすか? コルレットちゃんが来た時には既に出掛けた後っすよ」
コルレットは、隣に座るラーファの頬っぺに付いたパストラミを指先で
「あっ、ラーファしってるー。おねえちゃん、おにくかりにいくっていってたよお」
実は、
何故かと言うと、
「
「誠に申し訳ないのですが、獣人族やエルフ族は竜を崇拝の対象としているので、そのお肉を夕食に出すのは遠慮して頂けませんか?」
ホズミによると、獣人族もエルフ族も崇拝の対象が地竜ではないものの、竜種の肉を食べるのにはかなりの抵抗があるらしい。
同じ種族でも信仰に差があるようだが、できるなら止めておいた方が良さそうである。
「そうなのか……それは知らなかった、ありがとなホズミ」
結局、預かってもらっていた地竜の肉は全て冒険者ギルドが買い取ることになり、メゾリカの街では地竜の肉の在庫が切れるまで、至る所で竜肉フェアーが行われるのだった……
「たっだいまー」
おやつの時間で宿舎に住む全員が集まっているので、声の主はメル以外有り得ない。
メルはいつもの通り、持ち運び用の葉っぱに包まれた肉をカウンターの上に置く。
「メル、おかえり。今日は何の肉?」
カウンターに置かれた肉を厨房の中の作業台に移動した
「ウッガーだよー。久々にウッガー食べたい気分だったの」
メルが遠征していたエッヘンの街付近にはウッガーが生息していないので、メルが最後にウッガーを食べたのは一週間以上前となるはずである。
「そうか。料理のリクエストはあるかい?」
「丸焼きー」
「うん。でも、ブロック肉に加工されてるから丸焼きは無理だな」
「ひゃあ、焼きやねー」
メルは
「了解。今日の夕食はウッガー焼きに決定だ」
陽が沈み、夕食を一緒に食べ終えたコルレットが帰り、メルも子供達も各々の部屋に戻って最後まで読書にふけていたポプリも自室に戻っていく。
一人になった
「主よ、何か用か?」
「ううん、特に何も」
モーリスは立ち上がり
「妻達が眠っている故、起こさぬように願いたい」
異世界ラズタンテの夜空は地球の夜空と変わらず無数に散らばる恒星達のキャンパスとなっている。
(もしかしたら、あの空の何処かに地球もあるのかな?)
ふと
「なあモーリス? 戻りたくなったら遠慮なく言ってくれよ」
ゴトッフは元々日が足の森の山小屋の近くの崖で生活をしていたのだが、宿舎を所有する者への義務内容の一つである外壁付近の除草を果たすためにテイムして来てもらったのである。
「主よ、我らは満足しているから問題ない」
モーリスは
「我らは崖で生まれ、崖で育ち、崖で子を産み、崖で子を育て、最後には崖から下りて土へと還る……ただそれだけのことだ」
「その話だと、崖が中心になってないか?」
「主よ、茶化すでない。大切なのは
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