第46話 土筆と厄介なはぐれモノ⑫
魔力による爆発を至近距離で浴びた
フェアリープラントのタッツが保有する能力によって発現した柔らかい
しかし、
妖精達が心配そうに見守る中、
人どころか魔物の気配すら感じられない森の中でひっそりと第二の人生を終えようとしている
「ツクっち、さすがっす。ご褒美にコルレットちゃんの初めてをプレゼントするっすよ」
コルレットは自分の唇に右手の人差し指を当てながらそう語り掛けると、冷たくなった
コルレットの口から注がれる神力は、
冷たく硬直してしまった
「……名残惜しいっすけど、今日はここまでっすよ」
コルレットは人差し指に口付けをして
「……今回ばかりはコルレットちゃんもブチ切れっす」
コルレットは
「まさか、
気の遠くなるような長い年月を掛けて、その手中に地竜を納めることに成功した名も無き悪魔は、その苦労が貧弱な一人の人間によって打ち砕かれたことに乱心していた。
「キィィッ、ヤバい、ヤバいぞ。このままでは
名も無き悪魔は自身の隠密能力に自惚れているのだろう。
神力を解放したコルレットが悠然と背後に迫っていても、その存在に全く気付く事ができないのである。
「こうなったら、あのくたばった憎たらしい冒険者を操って目的を果たすしかないなっ」
名も無き悪魔は狂気に満ちた声でそう叫ぶと両手の指の先から黒い糸を伸ばし始める。
刹那、コルレットに後頭部を鷲掴みされ、初めて背後を取られていた事に気付くのだった。
「なっ、何だ貴様っ!?」
頭を動かすことが出来ずに眼球だけを精一杯横に寄せた名も無き悪魔は、コルレットの手から漏れ出す虹色の炎に後頭部をジリジリと焼かれながら悲鳴を上げる。
「……」
コルレットは名も無き悪魔が少しでも長く苦しむように、出力を調整しながら虹色の炎で焼いていく。
「ごぉらぁぁぁっ、止めろっていってんだろうがぁぁぁっ」
文字通り身を焦がされて悶え苦しむ名も無き悪魔は、何とかコルレットの手から逃れようとジタバタともがく。
「あー、もう、俺様はぁ怒ったぞっ。
名も無き悪魔はそう叫ぶと、両手の指の先から伸ばした黒い糸を振り上げて自身の背後にいるコルレットに襲い掛かる。
コルレットは鷲掴んでいた後頭部から手を離すと空間を渡って名も無き悪魔の前に移動するのだった。
「クックック……これは
名も無い悪魔は標的を
「このグフォス様の肥やしとなりなっ」
自らをグフォスと名乗った悪魔は周辺に大量の瘴気を撒き散らし、コルレット目掛けて瘴気の刃を降らす。
「ヒャッヒャーッ。ベフエフ様が家臣、
勝手に身の上をベラベラと垂れ流すグフォスと名乗った悪魔を冷酷な表情で見据えるコルレットは、降り掛かる瘴気の刃を気に留めることもなく左腕を伸ばしてグフォスの顔面を鷲掴みにする。
「雑魚の名など不要」
先ほどよりも強い虹色の炎に顔面を焼かれたグフォスは悲鳴を上げると、命乞いをしながら両手の指の先から伸ばした黒い糸を操ってコルレットの体を串刺しにする。
「ヒャッヒャッヒャッ。格好付けてるんじゃねーよっ」
確かな手応えに勝利を確信したグフォスは、更に瘴気を撒き散らすと容赦なくコルレットに瘴気の雨を降らすのだった。
「どうだーっ、瘴気に
大量の瘴気でコルレットを団子状に包み込んだグフォスは薄気味悪い笑みを浮かべると、包み込んだ瘴気を圧縮させて止めの一撃を加えようとする。
しかし、どれだけグフォスが圧力を加えようとしてもコルレットが
「はぁぁぁぁっ。何じゃこれはっ」
予想もしなかった展開にグフォスが恐怖の念を抱くと、コルレットから放たれた神気により周辺の瘴気が消滅する。
「救いがあると思うなよ」
コルレットはグフォスの顔を鷲掴みにしたまま冷酷な表情でそう呟くと、虹色の炎の出力を上げ、別次元に存在するグフォスの本体まで焼き尽くそうとする。
「
コルレットは冷酷な表情を変えぬまま、更に虹色の炎の出力を上げると、グフォスは具現化した姿を維持することができなくなり、断末魔の叫びと共にドロドロと
コルレットはグフォスをこの世界から消し去った後、土筆の元に向かうウルノと国王軍の気配に気付き、必要以上の干渉を避けるために空間を割いて別次元へと帰っていく。
ウルノ達は地竜が放ったドラゴンブレスで作られた道を全速力で進むと、最短距離にて土筆が戦った空き地まで辿り着くことができたのだった。
「これは……」
頭部を失って絶命している地竜を見た国王軍の騎士が思わず言葉を漏らす。
森の中の空き地であったその場所は土筆が仕掛けた罠の発動により荒れに荒れ、地竜のドラゴンブレスが通り過ぎた跡なのか、空き地から伸びる二本の道は地面が
「おいっ、人が倒れてるぞっ」
周囲を捜索していた国王軍の一人が大樹の根元にもたれ掛かっている
その声を聞いて真っ先に反応したウルノは倒れるように
「ウルノ殿。気持ちは分からぬでもないが、先ずは治療だろう」
今回派遣された国王軍の将官を務めるダリニッチは、
「あっ、いや、これは……」
微かに呻き声を上げる
「それにしても、あの地竜をこの冒険者が一人で討伐したのか……」
ダリニッチはほぼ無傷の状態で大樹の根元にもたれ掛かる
暫くすると、地竜の状態を調べるよう命令を受けていた騎士が駆け寄って来る。
「隊長っ、地竜の鑑定スキル結果がでました」
駆け寄った兵士はそう告げるとダリニッチに対して鑑定結果の報告を行う。
ダリニッチはその報告を聞き終わると、もう
その後、国王軍はダリニッチの指示により周辺の安全を確保すると、地竜を運ぶための荷台が運び込まれ、意識を失ったままの
ダリニッチは腐臭を好む魔物や死霊悪霊など、招かざる客を招き入れないように散乱していた肉片を一ヶ所に集めて浄化の炎で焼却すると、一部の兵士に後処理を任せ、
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