第45話 土筆と厄介なはぐれモノ⑪
ボルダ村に隣接する東の森は魔素の濃度が濃い地域ではなく、平時であれば竜種が出現するような場所ではない。
その名が地上に知れ渡っているような魔のモノであれば、このような姑息な手段を用いらずに自ら手を下して目的を果たすはずなので、その点において希望の光はまだ完全に
現状から想定される最悪の事態に陥ったとしても、地竜の進行を遅らせることで得られる恩恵は計り知れないのである。
常用しているものよりも一層効きそうな苦みに顔をしかめながら、
先ほどの空き地から更に森の奥へと進んで行くと、次第に地竜の足音が地響きと共に大きくなっていく。
「やはり、悪魔によって操られているみたいだな」
地竜とは何かとメルに尋ねてみれば、返って来る答えは”でっかいトカゲ”であることは想像に難くない……が、
過去、地球に存在した恐竜がどれほどの知能を持ち合わせていたか
竜と聞いて思い浮かべるイメージは人それぞれであるが、
「どこまで出来るか分からないけど、やれるところまでやるしかないな」
やがて、局部的な地震でも起きているかのような地響きと共に、その巨体を揺らしながら
「先ずは、挨拶変わりに受け取ってくれ」
「随分な挨拶だな。もう一丁受け取ってくれよ」
昨日の黒炎を纏った狼と同様、地竜も
その点、
地竜は地面に埋まった右前足を引き抜こうとするが易々と引き抜くことができず、数回引き抜く動作を見せた後、耐え兼ねたのか、地面に埋まった右前足から強力な魔力を放出し、周囲の地面ごと粉々に粉砕して右前足を引き抜くのだった。
「これはまた豪快な……」
それは地竜が
地竜は周囲の空間に地属性の攻撃魔法を展開すると、
地竜の放った地属性の攻撃魔法は地妖精ドニの造った土の盾を粉砕して貫くと、勢いそのままに地面へ突き刺さるのだった。
「竜種半端ないな……」
地竜は破壊力は凄まじいものの攻撃方法はそれほど多くなく、先ほど放った地属性の攻撃魔法と尻尾による殴打、更には前足による踏み付けが中心で、動きが遅いため突進などは安易に避けることが可能である。
竜種にはドラゴンブレスと呼ばれる口から強力な魔力弾を吐くこともあるが、一対一の戦いであれば予備動作から先読みすることができるのだ。
地竜との話し合いが頓挫した今、
そのためには、地竜にとって
「少しくらい痛そうにしてくれると嬉しいのだが……」
しかし、地竜もストレスは溜まっているようで、攻撃のパターンを変えドラゴンブレスの予備動作を見せるのだった。
地竜の口から放たれた強力な魔力弾は、重力を無視して
「うわー、この星が丸く無かったら大変なことになってるな、これ……」
「……」
「勝機発見っ!」
地竜はドラゴンブレスを発動した後、一瞬ではあるが、魔のモノから自我を取り戻したのである。
それはこの地竜の意識が完全に魔のモノに掌握されていないことを意味し、大量の魔力を消費するドラゴンブレスを発動することによって、その反動で呪縛が緩むことを示しているのだった。
「そうと分かれば大放出だ」
ダメージは通っていないのだが、罠に邪魔されて身動きが取れなくなった地竜は二回目のドラゴンブレスを放つ予備動作に移る。
地竜の口から放たれた強力な魔力弾が
浄化魔法が込められた複数のシリンダーは地竜の外皮に矢尻が衝突した衝撃で割れると、中に閉じ込めれていた魔法が発動し、地竜を操っている呪縛の効果を弱める。
先ほどよりもはっきりと自我を取り戻した地竜は、目の前の人族に対して念話で呼び掛ける。
(勇敢なる人族の子よ……我に安らぎを)
地竜はそう呼び掛けると最後の自我を振り絞り、自身の口の中に魔力弾を発生させる。
地竜は自らの意思で口の中に発生させた魔力弾を破裂させ自爆しようとするが、一足先に地竜の自我を魔のモノが掌握してそれを阻止する。
そして、自我を奪われた地竜が三回目となるドラゴンブレスを
大地を揺るがす轟音と共に地竜の口の中でドラゴンブレスが暴発すると、地竜の頭は元より近くにいた
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