第13話 ギルドへの報告
「あっ、来た来たー。女の子を待たせちゃ駄目なんだからねー」
メルは頭を掻きながらやって来る
「あれれー? ポプリちゃんは?」
「誘ったけど留守番してるってさ」
「そうなんだー。帰りにお土産買ってこないとねー」
「ああ…そうだな」
ポプリの事が少し気になった
「それではレッツゴーッ」
メルの元気な掛け声と共に、
宿舎を出た後、真っすぐ冒険者ギルドへ向かった二人は、ギルド一階の共用スペースで昼食を取ると、
「あら、
「ミアさん、こんにちは」
「その件でしたら、直接報告を受けるとの事ですので執務室までご案内致します。どうぞこちらへ……」
そう言うとミアはゾッホの執務室へと土筆を案内するのだった。
「おっ、来たか」
ゾッホは
「既に同行したミアから報告書は受け取ってるんだが、お前からも報告を受けるのが決まりなもんでな……」
ゾッホはミアから受け取った報告書を片手に話を切り出した。
「色々と大変だったようだが、一先ず報告を聞かせて欲しい」
ゾッホはミアが提出した報告書の内容と、
「……お疲れさん。概ねミアから受け取っていた報告書通りだな。ガガモンズ家の方にはギルド協会を通して抗議をしておくから、それで納得してもらいたい」
ゾッホは報告書をローテーブルに置いて指で数回突っつくと、
「いえいえ、終わった事ですし、気にしないで下さい」
確かにガガモンズ家の行いは許されるものではないのだが、結果的に放り出された獣人の親子が無事であったのと、依頼の方も卒なく終える事ができたので、今更気にしたところで意味がない。
「そうか、お前がそう言うならこの件についてはここまでだ」
ゾッホはそう言うと立ち上がり、執務机の方へ戻っていく。
何となくゾッホの後姿を見ていた
「……あっ、そうだ。昨日の事で一つ聞いてもいいですか?」
「ん? なんだ?」
「その話なら私が説明します」
ソファーの横で控えていたミアが一歩前に出ると、
ミアの話では、
暫く経っても
ギルド職員達が
結局、何が起きたのかは分からなかったのだが、ギルド職員の一人が周囲から精霊のものと思われる魔力の残滓を感知したと報告が上がっているので、報告書では溺れる直前に
「実際にお前が精霊魔法を発動したかどうかは分からんが、依頼上の事実としてはそういう事になってると言う話だ」
執務机に戻って作業を再開したゾッホが書類を見ながら補足説明をする。
「真実はどうあれ、
ミアもゾッホの後を追うように言葉を付け足すのだった。
すると、それぞれの情報は紆余曲折の末に、
「そう言う事か……」
現状では、どのような事象が折り重なって今回の結末に至ったのかは知る由もないが、濁流に飲み込まれた
そう考えれば、水精霊ディネが
「後からコルレットに聞いてみるか……」
「他に何か御座いますか?」
「それでは報酬をお渡ししますので、こちらへどうぞ」
ミアはゾッホに一礼すると、
はっきりと覚えている訳ではないが、
「待たせたな」
「あっ、
「ああ」
「そう、それは良かったねー」
メルの様子を見る限り、もう暫くこのまま休憩する必要がありそうだ。
「そろそろ行くか?」
「はーい」
「この後はどうするの?」
「買い出しの予定だけど、その前に一つ依頼を受けようと思う」
「おっ、張り出し依頼を受けるんだー」
メルは掲示板に貼り出されている依頼書を見る
冒険者ギルドでの依頼は、
常設依頼は採取した薬草類や狩猟した食材、討伐証明ができる部位などの買い取りがメインで、基本、持ち込まれた品物をギルドが買い取る際に契約が成立する仕組みとなっている。
それに対し、
「ああ、用事のついでに……ね」
「あら?
依頼書の受付業務を担当している冒険者ギルド職員のリエーザは、普段常設依頼を専門にこなしている
「リエーザさん、こんにちは。こちらの依頼をお願いします」
「はい、ありがとうございます……東の森の南側にある第三山小屋の定期点検ですね……それでは登録証のご提示をお願いします」
リエーザは
「ねえねえ? 暖かくなって来たしピクニックでも行くの?」
メルは依頼書の標題を見て興味津々のようだ。
「いや、違うけど……でも、まぁ……似たような感じになるかもな」
「いいね、いいねー」
尻尾を躍らせながら嬉しがるメルを見た
「お待たせしました」
リエーザは受付に戻ってくると、預かっていた二人の登録証を返却する。
「それでは、契約の前に改めて依頼内容の確認をさせて頂きます」
受付カウンターの椅子に腰掛けたリエーザは、
この第三山小屋は有事の際に避難場所として活用したり、狩猟者達の休憩や簡易的な宿泊場所として利用されているのだが、山小屋の所在が森の奥地である事も災いして、とにかく管理を行うには不便なのだ。
この世界では、ほぼ全ての山小屋に魔物除けの効果がある魔法結界が施されているのだが、その結界維持の為に必要となる魔法石は定期的に交換する必要があり、その他にも雨漏りの有無や設備の損傷など、定期的な管理の遂行は重要な役割を担っているのである。
「……期限は今日を含めて残り十五日、依頼内容は魔法石の交換と設備点検となります……説明は以上になりますが、お受けになられるのであればこちらににご署名をお願い致します」
「ありがとうございます。それでは、こちらの羊皮紙の内容に従って点検をお願いします」
「あっ、そうでした」
「どうしたの?」
突然の声に驚いたのか、振り向いたメルが獣耳を強張らせながらリエーザを見る。
「すいません、忘れてました……」
思わず大きな声を出してしまい、少しだけ頬を紅潮させたリエーザは軽く咳払いをすると、一呼吸置いて話を始める。
「ただいま冒険者ギルドでは干し肉の材料となる獣肉を集めております。依頼で森の方へ行かれるのであれば食材となる獣を狩って来て頂けると助かります」
「今の時期に干し肉が足りなくなるんですか?」
「……正確には干し肉だけではなく、食料が足りなくなる可能性があるようです」
「食料……その理由を聞いても?」
「はい、大丈夫です」
リエーザは土筆の質問に答えるように事情を話し始めるのだった。
「……そう言う事なら協力させてもらいます」
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