未だ残る恋心の棘

風見 清春

第1話短編完結

今でも忘れた頃に夢に出る人がいる。

出会いは小学校の時で転入した学校にいた人だった。


その人との関係は一緒に遊び、通学するような友人だったと思う。

少なくとも自分にとってはそういう存在だった。


同じ学区にいたのでそのまま同じ中学に入学する。

そのころには友人というよりも恋心のほうが勝っていた。


気持ちの悪い話をすればその人が学校へ向かう途中通学路として自宅の前を通過するのだが前を通った瞬間が見なくともわかった。

通ったと思ってから家を出れば家を出るまでに要した時間分だけ先を歩いた場所にその人がいる。ほぼ毎朝一緒に通学していた。その人の気配感じ取れていた。

そのくらいにはその人の存在が大きくなっていた。


自分は奥手のヘタレで結局告白することなく関係は終わってしまった。

修学旅行の時に泊まったホテルで、もしかしたら告白をされたのかもしれない。

言われた内容の意味がわからず

「は?」

と、答えてしまった。

その受け答えでその人は冗談でした、と、その場を去ってしまった。

それ以来その人とは中学を卒業するまで疎遠になってしまった気がする。


高校は別の学校で自分は他県の寮のある学校へ入学しその人は都内の学校へ入学した。

寮から家に帰った時にはたまにデートに誘ったりしたが、結局付き合うことはなかった。


時は流れその人は何があったか知らないが高校を中退した。

その話を聞いたとき何故か人と死に別れた時のような心にぽっかりと自分の認識では割と大きな穴が開いた気分になった。自分には関係のない他人の出来事であるのに。


きっとそれがその人と付き合うという運命はなくなってしまった瞬間だったのかもしれない。以降その人の気配は一つも感じ取れなくなってしまっていた。


その時の恋心は棘になりて未だ自分の時計の針を邪魔し進まず、何を成せば良いのかわからない

夢に出るその人は当時のままで、夢では未だ学校に通う自分は成人し働くもきっと心は未熟なままで


その人と出会って20年、31歳になった自分は未だ独身だ。

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未だ残る恋心の棘 風見 清春 @kazami_kiyoharu

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