第50話
和樹はリアラに言った通り、夜は一緒に寝ないようにした。すると徐々に寝不足も解消されて、体調もかなり良くなっていった。
しかしそれと同時にある問題が発生する。
「買い物か、俺も行こうか?」
「大丈夫です」
「そうか」
こんなふうに喋っていても明るさがなく、とにかく反応が冷たい。春休みの4日目辺りからずっとこうである。
それと同時に和樹も何か物足りなさを感じていた。寝不足は解消され、リアラと寝ていた時よりも体調が良くなったと言うのに、何故か物足りない。
和樹はリアラの反応とその物足りなさの原因がわからずに悩んでいた。
そして春休みの最終日、和樹は友樹と一緒にハンバーガーショップで昼御飯を食べていた。
今はハンバーガーも食べ終わり、二人はポテトを貪っている。
「なあ」
「何だ?」
「リアラが最近冷たいんだよ」
「ほう」
友樹はリラックスしていたとこから姿勢を正し、真剣に和樹の話を聞く。
「夜は一緒に寝てたんだ」
「惚気かよ」
「いや、それで寝不足になっちゃって」
「……何で」
友樹は大体話の内容が掴めた。既に大体のオチも予想がついていた。
「いやドキドキして寝れん」
「そりゃそうだ」
「だからしばらく一緒に寝ないことにしたんだ」
「それで?」
「寝不足は無くなったし、体調も良くなった」
「ならいいじゃん」
話のオチが予想できている友樹にとって、この惚気話を真剣に聞く気は既に無くなっていたので、適当に返事をする。
「リアラがそれから3日ぐらいは普通だったけど、そこから何か冷たいんだ」
(……もう結婚しろ)
「俺も何故か物足りなさを感じてるし」
(うん、一緒に寝とけ)
「どうすればいいんだ?」
「……頑張れ」
「えぇ……」
どうせ言わなくても気がつく事だと思い、友樹は和樹を適当にあしらった。
(どうせ明日になったらもとに戻ってる……絶対)
友樹は何故か確信していた。今までで和樹とリアラの仲の良さを近くで散々見て来たのだから。
―――――――――――――――
夜になり、和樹は課題のやり忘れが無いかチェックし、明日の持ち物も確認する。白崎先生ならおそらく忘れ物をしても大丈夫だろうが、社会に出てからは通用しない事が殆どなので、この時からしっかりしておこうという考えだ。
「……大丈夫だな」
風呂も入ったのであとは寝るだけ。だが、まだ寝る時間としては早いので、和樹はスマホで動画を見る事にした。
「……んー?」
やはりアニメを見ていても何か物足りない。まるで何かを失ったかのような喪失感を感じる。
「どうかされました?」
声のした方を見ると、そこには風呂上がりのリアラがいた。
(そう言えば最近一緒に座ったりもしてないな……)
ゲームをする時も休憩する時も、前までは和樹の足の間に座っていたリアラだが、この春休みは殆ど隣りにいただけ。
「リアラ、ちょっと来て」
「は、はい」
リアラは和樹が指定したところ、和樹の足の間にちょこんと座った。
和樹はリアラの頭をいつものように撫でてみる。
(……あー、これこれ、この手触り)
どうやら和樹は自分で思っていたよりもリアラに依存してしまっていたようだ。頭を撫でてみると物足りなさは感じなくなっていた。
(……単純だな)
「リアラ」
「なんですか?」
「また一緒に寝よう」
「……はい」
リアラは嬉しそうに微笑んだ。しばらくこの笑顔を見ていなかった和樹。
ベッドに入り、リアラが隣りにいる。だが、ドキドキよりも、安心の方が勝ってしまった。
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