第49話
3年生が卒業し、和樹達も修了式の日になった。
おそらく少し年季の入った校長先生となると、その話は失礼だろうが回りくどくてやたらと長い。
しかし和樹の通う高校の校長先生はまだ若い。実際に和樹が話した時もとても話しやすくてフラットな校長先生だった。
「───では話は以上です」
期待通りに校長先生の話は1分程で終わった。
それでも、和樹は修了式が終わるまで綺麗な姿勢を保ちながらも睡眠を取っていたのだが。
「……まじで眠い」
和樹が怠そうに猫背になりながら、ぶつくさと言って教室に戻っていると、
「宮本、修了式寝ていたな?」
白崎先生にバレていたようで、和樹は睨まれている。綺麗な顔で睨まれると余計に怖いという事を和樹はこの出来事で学んだ。
「……すみません」
「まあ、他の教師は気づいてなかったみたいだ。やたら綺麗に寝ていたな」
「でしょ?」
そう言うと白崎先生は持っていたボールペンで和樹の頭を叩いた。軽いのでそこまで痛くないだろうと油断していた和樹は、結構な威力で叩かれた痛みから声を上げる。
「痛っ!? えっ、ペン痛い」
「アホか……何がでしょ? だ、寝たら駄目だろう」
「すみません」
「……早く寝ろ、睡眠は大事だぞ」
「はい」
とは言っても眠いものは眠い。結局LHRの時間も、和樹は眠たすぎてぼーっとしていた為、白崎先生が話していた事は右から左へと抜けていった。
「和樹……おい」
「……ん? どうした」
「終わったぞ」
気がつけばチャイムが鳴っていて、帰る時間になっていた。
和樹はしばらくぼーっとした後、何も考えずに学校を出て眠たいまま歩く。そして気がつくとマンションについていた。
玄関の扉を開けると、先に帰っていたリアラが出迎えてくれた。しかしぼーっとしていた和樹は「ただいま」とだけ言ってリビングに向かう。
どうやら昼食を作ってくれていたようで、それをゆっくりと食べた後、和樹はソファーで休憩していた。その後春休みの課題をやろうと思っていた和樹だが、眠気に耐えられずにソファーで寝てしまった。
―――――――――――――――
「目が覚めましたか?」
何か顔に柔らかい感触を感じて、ゆっくりと目を開ける。するとリアラの顔が目の前にあった。頭にはソファーとは違う柔らかい物がある。つまり膝枕をしてくれているという事だ。
「今何時だ?」
「もう6時半ですよ」
和樹は昼食を食べてから約6時間も寝てしまっていた。予定が狂ってしまったと和樹は少ししょんぼりとするが、どうやら夕食も作り終えているようで、いい匂いがリビングに漂っていた。
「ご飯食べるか」
「そうですね。今日は豚の角煮です」
リアラが作った豚の角煮は、口の中に入れると3秒で口の中から消える。それほどまでに柔らかい。柔らかいだけではなく、もちろん味も一級品。夕食はとても満足した和樹。
しかし和樹はまだ少しだが眠気が取れていなかった。風呂に浸かっている時も、危うく寝てしまうとこだった。
(やばい! このままじゃあ俺は風呂で死んでしまう!)
早急に対策を取るために、和樹はリアラに提案をした。
「リアラ」
「はい、なんでしょうか?」
「しばらく一緒に寝るのをやめよう」
「えっ……」
和樹が寝るのをやめると言っただけで、リアラはこの世の終わりのような顔になっていて、とても悲しそうに見えた。
(えっ……そんな落ち込む?)
「もしかして私のこと嫌いになりました?」
「いや違う! 決してリアラを嫌いになったわけじゃない」
こんな自分に尽くしてくれる可愛いメイドを嫌いになるわけがない。それ以外に和樹には理由があった。
「寝れないんだよ」
「……なるほど」
近頃和樹はやたらとリアラを意識してしまう為に、一緒に寝ていても寝れない事が多い。ただでさえ一緒にいる時でもドキドキしてしまうのに、密着されては寝るどころじゃない。
だから和樹はリアラと寝なければ睡眠不足も解消できると考えた。
「取り敢えず1週間だけだから……いいか?」
「……わかりました」
リアラはそれでも少し寂しそうな顔をしているが、寝れなければ日常生活に支障が出る。和樹は1週間だけリアラと別々に寝る事になった。
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